◆7・俺は飛べる!
ぱんつ替えました。
――肌触り最高である!
「後はどうしようかな~。あんまり色々交換してもなぁ……」
まぁ、すぐに使わないモノや、隠しておきたいモノは〈アイテムボックス(∞)〉に入れておけばいいんだけど。さっき交換したコップも入れたままです。
そういえば〈アイテムボックス〉は時間停止式なのだろうか? 容量は、スキル名に「(∞)」が付いてるから、無限なんだろうけど。
どうやって確かめようかと視線を彷徨わせたところで、ふと壁のキャンドルスタンドに目が行った。蝋の残りは小さいけど、火を点けて〈アイテムボックス〉に入れておけば、時間経過してるか停止してるか判るだろう。
早速試そうと、木のベッドの上に立ち(靴は元々履いてなかったよ?)壁に掛かって……いや、これ、飛び出た石に載ってるだけだわと下から見上げる形で確認しながら、蝋燭の載ったお皿に手を伸ばし……
――手を伸ばし……。
――手を伸ばし……。
――…………。
――……っく! 届かんっ!
無理だった~! リリたん、思った以上にちっさい! いや、こんなもん? つい数時間前まで梅村花だったから感覚がズレるなぁ。
え~? 魔法で取れないかな? いや、そこまでしてこの蝋燭取らんでもいいか。それこそ蝋燭くらいなら〈交換ショップ〉にありそうだし……いや、わざわざ交換してまで蝋燭で試さなくても……やっぱ、魔法で取れないなかな?
この世界の魔法は、ご都合良くも《イメージが大事》タイプの魔法だ。使おうと思って具体的なイメージをした時に、使える魔法なら『出来る』と感じる。
さっきから魔法を使う時に魔法名を口にしているけれど、本当は無詠唱でも使えると思う。ただ、なんとなく〈トリガーワード〉を言った方が自分が使いやすそうってだけである。
やはり、憧れというか、この家から出て行く気マンマンの私としては〈転移〉が使いたかったんだけど、これは『出来る』気が全くしなかった。
ならば次点で〈飛行〉か〈浮遊〉だろうかと考えたところで、『あ、出来そう』と思った。
『え? でも「浮遊」のトリガーワード、〈浮遊〉にする?』なんて、そんなのどうでもいいだろう! という疑問が湧いて出てきたんだけど、どうしようかな?
多分〈フライ〉か〈フロート〉でも良さそうなんだけど、何故かさっきから頭の中でハー●イオニーが何か言ってます。
当初の目的である「蝋燭を取る」なら、それもいいかなと思ったけど、今は「自分が飛べそう」なんだよね。
――……あっ!
――よしっ! コレにしよう!
「〈俺は飛べる〉!」
リリたんに何言わせてんの? という苦情は受け付けません。
――それよりもっ!
いやぁ~、飛べちゃいました! 正確にはちょっと浮いてるだけだけど。
〈トリガーワード〉を言った瞬間に思わず、両手を掲げ広げてポーズを取ってしまったけど《ふわぁ……》って浮いただけです。
うん、でも自由に動けそう。ふわふわしながら〈俺は飛べる〉魔法の具合を確かめる。多分、一度浮いてしまえば『降りよう』とするまで、落ちずにいられる感じだ。
そのまま、ふわふわと蝋燭のある所までゆっくり飛んでいく。
――獲ったどぉ~!
蝋燭を手にして、もう一度ベッドの上に降りる。
さて、これに火を点けて〈アイテムボックス〉に仕舞うだけだ。火魔法は出来れば室内では使いたくなかったけど、ピッと出して、ピッと仕舞えばいい。
〈アイテムボックス(∞)〉を発動して、すぐに仕舞える準備をし、指先にちっちゃい炎が灯る感じをイメージして「〈チ●ッカマン〉!」とつぶやいた。
え? また変なワード使ってるって? そんな苦情も受け付けません。
だってこのイメージなら『思ったよりデッカイ火が出ちゃった!』とかにならない気がしたんです。多分〈ミニ・ファイア〉でも〈ファイアーボール〉でもイケた気がしないでもなくないけど、安全第一です。
蝋燭に火を点けて、受け皿ごと〈収納〉した。
うん、これでしばらく経ってから取り出せば〈アイテムボックス〉の時間経過がどうなってるか判るよね。