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◆67・リリたんは人である。



 妖精とスライムたちに囲まれて、食事をするハウゼンさんの顔が引きつっている。



 グラタン美味しいよ? 鹿肉もうまうまだぞ?

 


 最初はハウゼンさんの部屋に食事を持って行こうとしたんだけど、ピクシー族に引っ張られて出てきたハウゼンさんも、みんながいる場所で食事をすることになったのだ。



 ハウゼンさんは、ピクシー族にかなり振り回されてる感じだ。割と嫌がらせみたいなことをされてるのに怒らないから、余計に集られてるんだと思うな。



「これは……うまいな」

「それは良かったです」

「? まさか君が作った……のか?」

「はい。ケット・シーたちもお肉焼くくらいはしてくれますけど、味付けに関してはちょっと……」



 一度、猫妖精たちが料理を作ってくれたことがあって、切ったお肉に乾燥させた何かの草をまぶして焼いたものを出してくれたんだけど、香草焼きかと思って食べたらすっごい甘くて、肉の味が全く分からなかったのだ。



 私が出すお肉を普通に「うまい、うまい」と食べるのに、なぜあんなに甘いお肉になっちゃうのか意味が分からない。もしかして、アレは猫妖精的には『おやつ』だったのだろうか? 出された分は無心でもぐもぐしたけど、目は死んでたと思う……。



「君は……、本当に人間なのか?」

「……どういう意味です?」

「気になることは、いろいろあるが……、この料理もそうだし、こんな森の中で妖精を従えて暮らしているのもおかしい。何より、五歳というのがどうしても信じられない。やはり、君も妖精か何かなのではないのか?」

「間違いなく人間ですし、妖精は従えてないです」


 

 まぁ、ちょっと人より、寿命は延びてしまっているかもしれないけども……。



「しかし……」

「ハウゼンさんが詮索するなら、私も詮索しますけど」

「…………。答えられることなら……」



 おろ? 軟化した?



「じゃあ、襲われた理由に心当たりは?」

「…………消えた孤児を探していたのだ」

「ん? 人を探すだけでは襲われないですよね。消えた理由にも心当たりがあるということですか?」

「本当に君は……。詳しく判っているわけではないが、とある枢機卿が無断で秘密裏に孤児を集めているという話があるんだ。それが事実か確かめたかったのもあるし、事実なら、集められた孤児の安否が気になる」



 枢機卿ときたか………。事実かどうかはともかく、黒髪少年もその枢機卿に集められた孤児の一人だったんじゃないかとか考えちゃうよね。んで、強制隷属させて何かに……そう、たとえばハウゼンさんが襲われたりしたように、そういう後ろ暗いことをさせてたんじゃないだろうかとか……さ。



「その『枢機卿』というのは、何かの宗教とか教会とか、そういうのに属してる感じの人のことでいいんですかね? んで、ハウゼンさんも同じところの聖騎士団に所属してるって感じですか?」

「ああ、私たちは世界の使徒である金竜様を敬愛し、金竜様の教えに則った生き方を是とする『アルトゥ教』を信奉している。我が国の国教でもあり、国民のほとんどがアルトゥ教の信者だ」



 あ、なんかヤベェ臭いがプンプンするでござる。別に宗教自体に偏見はないけど、個人的にはあんまり関わりたくないな……。



「お竜様って『世界の使徒』なんですか?」

「ああ、竜族は世界の使徒とされているが、人に仇なす黒竜などは、邪神の使いだとも言われている。まぁ、そういう伝承が残っているだけで、金竜様以外の竜がこの世界に存在しているかどうかはわからないことだ」



 白い人ならいますけどね。多分、他のお竜様も存在してると思うけど。



 それにしても、金竜様の加護持ちが、別の竜を『邪神の使い』とか言っちゃって大丈夫なんだろうか……と考えていると、周りの猫妖精たちが一斉に、しっぽをバシンバシンし始めた。



 ああ、うん、やっぱアウトだったかな。しっぽで怒りアピールはしつつも、何も言わないなら、私もこの辺りに関しては、黙っておこう。

 それより、ここにいる猫妖精たちの、ハウゼンさんに対する好感度がぐんぐん下がってる気がするけど、これも黙っておいた方がいいな……。



「ハウゼンさんは、金竜様に会ったことがあるんですか?」

「まさか! 金竜様にお目通りできるのは、教皇様に選ばれた特別な者だけだと聞いている。叙勲でもされれば、その機会が巡ってくるかもしれないが……」



 あれ? そうなの? 金竜様に会えるかどうか、教皇様が決めるの? 金竜様が選ぶんじゃないんだ……。加護持ちなのに、会えないなんてことあんのかね?



 まぁ、この人、自分が加護持ちだって自覚ないみたいだけど。ちょいちょい、ピクシー族に『加護持ち』って呼ばれてるのに、聞いたりしなかったんだろうか?



「ところで、早く帰りたい理由は、孤児の安否が気になるからですか?」

「ああ、私が所属している第五部隊では、持ち回りで孤児院の見回りもしているのだが、回っている孤児院の全てで何人かの行方がわからなくなっているんだ。書類上では里親が見つかったとされているのだが、詳しく調べれば、引き取ったとされる里親自体、存在していなかったんだ」

「詳しく調べようと思ったのは何でですか?」

「ある孤児院では、外からの訪問者が極端に少ないんだ。里親になるなら、引き取る子を探すために院に顔を出してもおかしくないはずなのに、そういう人物が来た記録が一切ないにもかかわらず、その院から消えた子が十数人もいれば、調べもするさ」

「なるほど。それで、孤児を集めているという噂がある枢機卿を調べようとしたら、襲われて……、自分が国から消えちゃったと……」

「そう……なるな……」



 わぁ……、いたたまれない……。



「まぁ、帰るにしてもすぐには無理でしょうけど、知り合いに連絡したりとかできないんですか?」

「国にいれば鳩でも飛ばせたんだが……」

「そういう魔法とかないんですか?」

「伝達魔法はまだ使えないんだ……。実は、ごく最近になって魔力量が増えたんだが、それまではほとんど魔力がなかったから、魔法の勉強もしていなくてな。まだ簡単な魔法しか使えないんだ」

「……そうなんですね」



 ………魔法って勉強が必要なやつだっけ? なんか自分の思ってる魔法と、ハウゼンさんの思ってる魔法が別物に思えてきたんだけど……。そんなことを考えていると、知った声が聞こえてきた。



「あら、なにこれ……色々増え過ぎじゃない?」

「なっ……、何だこれはっ!」

「ちょっと、声が大きいってば。耳がキンキンするじゃない」

「なっ⁉ 私の声は良く聞こえると、金竜様にもお褒めいただいているのだぞ!」

「聞こえ過ぎなのよ。距離感を考えなさいよ。真横で使う声量じゃないのよ」



 ん? クロに加えて、知らない人がいる……。銀髪金目のちょっとマッチョな兄さんだ。



「にゃ、雷丸が来たのか」

「みゃ、相変わらず、暑苦しいな」

「あの人、知り合い? 人間?」

「アレはフェンリル族で、金竜様の守番だにゃ」

「フェンリル……」



 今はハウゼンさんが近くにいるので〈鑑定〉しなかったけど、またファンタジーな人……狼(?)が来てしまったらしい。

 


 でも多分、この二人がハウゼンさんのお迎えかな。思ったより早いお迎えだ。



前回のお話に関して、コメント欄にて「鮭は白身魚だよ」と教えて下さった方達、

ありがとうございます。


普通に間違えてましたw

……が、花ンヌ的にも間違えて覚えてる方が花ンヌっぽいと思うので

間違いはそのままに、ちょっとだけ追記しておく事にします。

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