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◆53・冒険者ギルド!


「まずはギルド証を作ってしまいましょう」



 ソウさんがそう言って、私を抱っこしたまま高い建物の上から人通りのない路地に飛び降りた。



 ――飛び降りるんかいっ!



 せめて飛び降りる前に一言欲しかった。ビックリし過ぎて、声も出なかったわ。心臓に悪い。クロとナツメさんも音もなく飛び降りてきた。人の姿してても、やっぱり猫なんだなぁ……。違うわ、妖精だった。もう『妖精要素』はひとかけらも感じてないけどね。



 ソウさんに抱っこされたまま、大通りっぽい道に出る。



 うわ~! 思った以上に栄えてる感じだ。大通りの両側に屋台が立ち並び、食材や雑貨品、布や装飾品など、様々な物が並んでいる。通りを歩いてる人は、普通の買い物客っぽい人たちと、冒険者っぽい人たちが混在している感じだ。



 出来るだけキョロキョロしていることを悟られないように、眼球だけでキョロキョロしてみる。え? もう堂々とキョロれって? でも、抱っこされてる状態で首を動かしたら、多分ソウさんの顔に髪の毛ふぁっさふぁっさしてしまうよ? まぁ、ふぁさってもソウさんは怒らないと思うけどさ。



 私はふぁさらない女である――。



 一人でおバカな思考を巡らせている間に、どうやら目的地に着いたようである。



「貴方たちも来ますか?」

「にゃ、入ってすぐの所で待つ」

「じゃあ、私もそこで待ってるわ」



 私はソウさんに連れられて、ギルドのカウンター前に並ぶことになった。



 てゆうか……、案の定、美女と美青年は目立ちまくりである……。



 人のいる通りに出てから、ず~っと見られてるよね。3人共見事に視線をスルーしてるけど、そのうち声かけられたりするんじゃないだろうか……なんて考えていると、早速クロの前に2人の冒険者らしき男性が立ち並んだ……。



「なぁなぁ、アンタ見かけない顔だけど何処から来たんだ? 冒険者なら俺等と組まないか?」

「ああ、そっちの連れはイラナイから。お姉さんだけおいでよ」



 ――んまぁ~……、なんてテンプレ!



 私はソウさんに抱っこされたまま、後ろのやり取りをギラギラ見つめて事の成り行きを見守る。だが、二人は無反応だ。ナツメさんは『まるで無関係顔』だし、クロは明後日の方向を見ながら髪いじりを始めている。



「お、おい! 聞こえなかったのか?」

「お前! どこ見てんだよ!」



 いやいや、ここまで聞こえる声だったのに、その距離で聞こえなかったハズはないでしょうよ。しかもナツメさんに「どこ見てんだよ」って、イラナイ扱いした相手がどこ見てようとどうでもいいでしょうに……。



「お、おい! 聞こえてんだろ! ちょっと美人だからってお高くとまってんじゃねぇぞ!」



 え~? 逆ギレかな……。セリフがいちいちテンプレっぽいけど、役者さんとかではないよね? 素なの? 素でテンプレなの?



 クロは無言のまま手でシッシと払い除けるような素振りをしたので、素テンさんがとうとう実力行使に出ようとしたのか、クロに向かって手を伸ばし、掴みかかろうとし……て……、後ろから現れた筋肉モリモリマンに掴まれていた。頭を……。



 ――あいや~! 鷲掴みっすな! 人の頭を鷲掴めるってどんだけデッカイ手なのか……。素テンさん、何かちょっと浮いてない?



「な、何しやがる!」

「あ、おい! マズいって!」

「は? おい、テメェ! 放しやが……げぇ! リック・マッチョーリ!」



 ――え!?



 ――リック・マッチョーリ!?



―――――――――――――――――――


 ◆リック・マッチョーリ(26)◆

   

  【MP】590/600

 【スキル】剛腕・鋼の胃


―――――――――――――――――――



 聞き覚えのある名前に反応して思わず〈鑑定〉してしまったけど、この人絶対に『ニック・マッチョーリ』さんのお兄さんでしょ~! スキルまで激似とか、双子でもおかしくないくらいだよ!



 てか、〈剛腕〉スキル持ちに頭鷲掴まれて大丈夫? 割とすぐに放してもらえたみたいだけど、結局クロ達に絡んでいた2人は、兄マッチョーリさんに首根っこを掴まれて、そのまま外へとご退場なされました。



 さらば……。誰も見てないけど、2人に小さく手を振っておいた――。



「リリアンヌ」



 ソウさんに声を掛けられ、受付の順番が来たことに気付く。一度降りた方が良いのでは?



「ソウさん、登録する時に名前変えたいんだけど、変えても大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ。何にします?」

「じゃあ『リリィ』で。ソウさんもここではそう呼んでね」

「分かりました」

「それと、一度降ろして」



 ソウさんに降ろしてもらい、カウンターの前に行くと、でこから上しか出なかった。ちょっと背伸びをしてやっと目が出る程度である。



「ようこそ、冒険者ギルドへ! 本日のご用件を、私! ジェシカがお伺いします!」



 あ~、受付のお姉さん、ソウさんに夢中だね。すっごい笑顔だ。完全にソウさんしか見てないし、サラッと名前アピールしたね。中々に積極的だ。



「私とこの子の冒険者登録をお願いします」

「はい! お任せください! あの……、娘さんではないですよね?」

「ええ、違いますけど」

「そうですよね!」



 ジェシカお姉さん、それ、実の親子にやっちゃたらアウトだと思うよ……。



「では、こちらに必要事項をご記入下さい!」

「リリィの分は私が書きますよ」



 そう言ってソウさんが私の分も書いてくれた登録用紙を、プルプル背伸びしながら見てみた。



――――――――――――――

  名前:リリィ

  年齢:5

  特技:

 スキル:

――――――――――――――

  名前:ソウ

  年齢:20

  特技:魔法

 スキル:

――――――――――――――



 ――ソウさん、一体いくつサバを読んだのか……。多分、ホントはすんごいお爺ちゃんだよね?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] リリアンヌからのリリィ 隠す気ない幼稚園児童である。
[一言] 最初はクッソつまんなかったけどトンズラしてから結構面白くなったから今後も読みます
[良い点] 面白い [気になる点] 「て、言うか」がすべて「てゆうか」になっているのが気になる
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