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◆43・忘れてはイケない大事な事


 私は、ナツメさんに貰った魔獣を〈アイテムボックス〉に有難くナイナイし、黒い猪『ブラックボア』をスキルで《解体》した。



 クロが食べたいみたいだし、黒猪の肉をステーキにして、みんなで食べようと思う。お昼も近いし、丁度いいだろう。まずは、塩胡椒でシンプルに調理してみよう。後は……シチューとか角煮とか? 見た目的に豚っぽい扱いしてるけど、猪肉なんて一回だけお鍋で食べた事があるだけで、どう調理していいか分からん。



「ねぇ、とりあえずブラックボアをステーキにしてみるけど、他に食べたい食べ方とかある?」



 自分だけではあんまりメニューが思い浮かばなかったので、クロ達に聞いてみる事にした。



「ステーキって焼いてあるヤツよね? 他の食べ方って? 生じゃなくて?」

「生……?」

「ええ、私達は特に食べる必要はないけど、たまに魔獣も食べるわ。大抵はそのまま食べるけど、火で焼いて食べる子もいるわね」



 ――え? 生でボリボリ魔獣食べてんの?



「え? クロってケット・シーだよね?」

「そうよ? 今更、何?」

「妖精って……」

「ああ……、そういえばシンタロウも『妖精が魔獣食べるのか?』って、驚いてたわね。『花の蜜しか食べないんじゃないのか?』とかも言ってたけど、花の蜜なんて食べないわよ」

「そう……なんだ……」



 どうやらこの世界の妖精は、私の知っている妖精とは別物のようである。いや、猫妖精だから? 妖精らしい妖精もいるのかな?



「ちょっと! それは貴女たちの話でしょう。私は魔獣を生で食べたりなんてしませんよ」

「これが、おにゃじケット・シー族だにゃんて恥ずかしいにゃ」

「はぁ!? 灰猫だって、しょっちゅうその辺のモノ、生で食べてるでしょう!」

「それは……」

「それはセキだけだ! 我が大陸のケット・シー族はお前たちのように野蛮ではにゃいのだ!」

「誰が野蛮ですって!?」

「あ、ちょっと! 何ですぐケンカするの! やめて!」


 

 どうやら、魔獣の生食は妖精界の常識ではないようだけど、クロとナツメさんの相性悪すぎでしょ。喋る度にケンカになってるじゃん。この二人、一緒にいちゃダメなんじゃ……。混ぜるなキケンだよ。



 どうしたものかと考えていると、ふいにクロとナツメさんが、風に巻かれた道端のビニール袋のように吹っ飛んで行った……。



 ――え?

 

 

 吹っ飛んでいった二人から、二人が元いた場所に視線をやれば、『無』の顔をしたソウさんが、右猫手を下ろし、座り直すところだった。

  


 ――ああ……、どうやらソウさんの猫パンチが炸裂したようである。



「そういえば、リリアンヌ、先の言葉からするに、私達にもボア肉を焼いてくれるつもりですか?」

「え? ああ……、うん。食べるよね?」

「頂けるなら、遠慮なく。手間ではないですか?」

「うん、とりあえず切って焼くだけのつもりだし」

「そうですか。無理のない範囲でいいですからね」

「うん……」



 ――クロとナツメさんの事、無かった事になってる~!



「じゃあ、ちょっと、お肉の準備してきますね」

 


 そう言って私は、そそくさとホームに戻る事にした。二人共、ソウさんは怒らせちゃダメな相手だって解ってたでしょうに……。仏の顔とソウさんの注意は三度までらしい。赤丸注意である。怖や、怖や……。



 ホームに戻った私は〈アイテムボックス〉から黒猪肉を取り出し、切り分けて塩胡椒した物と、ハーブソルトを振った物を用意し、ソースは、酒、みりん、醤油におろしにんにくとおろししょうがを混ぜた物を作った。



 後は、お肉を焼くだけだ。外で焼いてBBQみたいにしようかな……。野菜も用意しとこ。玉ねぎと、ジャガイモ、しめじも残ってたな……。かぼちゃだけ交換しようかな。ナスとトウモロコシも捨てがたいかも。うん、3つとも交換しちゃおう。焼き肉のタレと、網ももう1枚交換しとこ。



 手持ちの野菜と、新たに交換した野菜を切ったり、下茹でしたりの下準備をして、外に出る。



 ホームのある結界の外に、新たに机代わりの台と火おこし出来る場所を少し大きめに作った。炭を入れて、火を点けたら、お肉を載せていく。端っこに野菜をちょこっと載せ、台の上にお皿を用意しておく。



「みゃ! 肉!」

「おにく?」

「おいしい?」

「たべたい! たべたい!」

「こら、貴方達、リリアンヌの邪魔をしてはいけませんよ」

「「「は~い」」」

「オイラは大人しく待つにゃん」

「僕も!」

 

 

 調理を始めた私の周りをセキさんを筆頭に猫妖精たちがウロつき始め、ソウさんがチョロチョロする子を窘めてくれていた。てか、セキさんよ、肉の匂いで起きるとか……。

 


「リリアンヌ! 私も……食べていい……のよね?」

「吾輩も……」



 クロとナツメさんが少し離れた所から、ソウさんをチラチラ気にしながら聞いてくる。



「うん、焼けるまで待ってて」

「わかったわ!」

「にゃ!」



 どうやら、やっと休戦したらしい。でも多分、少し時間が経ったら、またやりそうな2人である。



 ――2人共、ソウさんの前でケンカは御法度だよ。忘れないで……。


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