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◆39・ナツメさんといっしょ。


 木を採り終わった後、「もう少し森を見て回ろう」と言うナツメさんと森の探索を続けた。ついでに、ナツメさんに言われるがままに〈ゴロニャンエリア〉の増設もした。ナツメさん曰く、ケット・シーの通り道なのだとか。



 ウロウロしている途中に『お鹿様』にも遭遇した。でも、どうやら前に会ったお鹿様ではなかったようだ。



「この辺りは森鹿のにゃわ張りだからにゃ」



 ――との事。



 あの何だか神秘チックなお鹿様って何頭もいるんだ……とちょっと驚いた。見るからにウルトラレアって感じだったんだけど。だって『霊獣』じゃなかったっけ? そんな感じの事をナツメさんに言ったら……



「確かに、この辺りには数頭いるが、そもそも森鹿はケット・シーの管理する森にしか生息してにゃいのだ。この大陸で言うにゃらこの森にしかいにゃいにゃ。だから数頭と言っても、ほとんど血縁の一族だにゃ」

「なるほど……」



 つまり『森鹿』こと『フォレスト・ホーンディア』は、この森に数頭しかいないレア霊獣である事に変わりはないようである。



 そんな話もしながら森の探索を続け、途中で木の実や薬草を取ったり、ナツメさんが『家具におススメ』とか言う木を採ったりした。でも家具なんて作れそうにないんだけど……と戸惑っていると、



「にゃ! 吾輩が作るから問題にゃい」



 ――とか言われた。



「え? ナツメさんが作るの?」

「にゃ! 吾輩たちの領域には、人間の暮らしを見て作った物が沢山ある。家具だって普通にあるし、それらは自分たちで作った物だ。欲しい家具があるにゃら、遠慮にゃく言うといい」

「え……じゃあ、まずはドアの作り方を教えてほしいかな。自分でもやりたいから、一緒に作ってくれると嬉しいんだけど」

「にゃら、一緒に作ろう」

「ありがとう!」

「にゃ! 家具以外に欲しい物はにゃいのか?」

「……えっと、毛皮? まだ早いかもしれないけど、冬が来る前に防寒対策したいなって」

「うむ! にゃら、獲りに行くにゃ!」



 そうして、毛皮も獲りに行く事になった。お鹿様がいる辺りには魔獣はいないそうで、私は再びナツメさんの背に乗って……しがみついて移動した。後から思えば、普通に〈浮遊魔法〉で飛んで、ナツメさんに付いていけば良かったのでは? まぁ、いいか。



「毛皮の美しさは白狼の物がおススメにゃんだが、この辺りにはあんまりいにゃいのだ。量が欲しいにゃら、やはり熊型魔獣の物だにゃ。猪型でもいいが、毛並みが少々ゴワつくからにゃ。リリアンヌは赤と黒と茶、どの色がいいのだ?」



 え? 熊獲るの? しかもそんな『ガムとグミとキャンディ、どれがいい?』みたいな感覚で聞かないでほしいんだけど……。



「……何色でもいいです」

「そうか? リリアンヌにゃら赤がいいと思うが、服にするのか?」

「いえ、とりあえずベッドの足元に敷こうかなって。余ったら椅子とかにも使おうかと」

「ふむ。とりあえず1頭ずつ獲るか。吾輩は食べた事はにゃいが、黒毛の熊は美味だと聞いた事がある。毛皮ついでに肉も獲ればいい。ああ、でも赤毛の熊はとても食べれたものじゃにゃいとも聞いたから、それは毛皮だけ取ればいいだろう。あ! リリアンヌ、ちょっとここで降りて、結界を張って待っておれ!」



 そう言って、ナツメさんは私が背中から降りた瞬間、一人で颯爽と姿を消した……。



「……えぇ~」



 ちょっぴり呆然としながら、とりあえず結界を張った。〈絶対防御〉も掛かっているので問題はない。私はとりあえず辺りの植物を鑑定し、使えそうな物を採集しておく。その途中で見つけた『イイ感じの棒』も、ついつい拾ってしまった。だって、まだ何の加工もしていないのに、見るからに『魔法使いの杖』なのだ。



「うむ、次から魔法を使う時は、これをそれっぽく振ろう」



 誰も見てないし、猫妖精たちには別に見られてもいい。今は何となく、トリガーワードと共に手を突き出したり、指先を向けてみたりしてるけど、魔法の発動に必要な訳でない。全部『気分』である。厨二? いや、実際に魔法出ちゃうからね! ふふふ、郷に入っては郷に従え(※違う)だ。



 私が一人でむふむふしていると、ナツメさんが帰ってきたので、結界を消した。



「リリアンヌ! 獲ってきたぞ! 黒猪も獲れたのだ! 人間の街では、黒猪は『とても美味で高級』らしい」



 何だかとっても嬉しそうにはしゃいでいるナツメさんは何も持っていないけど……



 ――!!!!!



「もしかして、ナツメさん、亜空間魔法使ってる?」

「ん? ああ……獲った物は吾輩の亜空間のにゃかだにゃ!」



 ……やっぱりか。〈転移〉してたんだから、それくらい出来ても不思議ではないのである。ケット・シーは思ったよりチートな存在なのかもしれない。見た目と言動が『ほぼ猫』なので、あんまり凄そうに見えないだけで……。まぁ、可愛さは最初からチート級かな。



 狩り(私はしてない)と採集を済ませて、私は再び、ナツメさんの背に乗り……しがみつき、家路につく事にした。



 あ、〈浮遊魔法〉……。まぁいいか――。


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