表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/139

◆38・見えるのは黒い毛だけ。


 昨晩、ゴロゴロしている内に寝落ちてグッスリ眠った私は、起きて朝食を済ませた後、お出かけスタイルモードで、木を採りに行くべく外に出た。



 今日も変わらずホーム周りには、妖精成分を感じた事のない猫妖精たちがニャンニャンしている。ソウさんと、セキさんはいないみたいだけど、ナツメさんはホーム前のゴロニャンエリアでヘソ天で寝ていた……。



 可愛いけど、なんだかなぁ……妖精ではないよね。あれで、人型になるとイケメンとか詐欺である。



 ヘソ天猫妖精たちを横目に、結界から出た所で声を掛けられた。



「にゃ! リリアンヌ、出かけるのか?」

「はい、木が欲しくて、採りに行こうかなって」

「にゃんの木が欲しいのだ?」

「何って言うか……ドアに出来る木材が欲しくて。木、採ってもいいですか?」

「にゃ、好きに採るといい。ドアにするにゃら、堅めの木がいいにゃ」

「堅め……」

「にゃ! 吾輩も行く。良さそうにゃのを見繕ってやろう」

「え! ホント!?」

「うむ。吾輩の背に乗るがいい!」

「え……」

「さぁ! 乗るがいい!」

「……あ、はい」



 突然の提案に驚いていると、またしても顔面ドアップの圧を掛けられたので、さっさと折れる事にした。『モフモフに乗る』とか、ちょっと心が浮き立つものがあるのである。


 

 気分は勿論、もの〇け姫なのだが、見た目は『巨猫に乗る幼女』。しかも、普通によじ登ろうとして届かなかったので、〈浮遊魔法〉でどうにかナツメさんの背に乗ったものの、掴まるところが無いので、背中にしがみつくスタイルだ。迫力は皆無である。むしろ、ただの珍光景である。



「行くにゃ!」



 思った以上の情けなスタイルを嘆く間も無く、ナツメさんが走り出した。想像よりは遥かに乗り心地は良いんだけど、返事する前に走り出すのは止めて欲しい……。ただ、それを注意しようにも、ナツメさんの背にしがみつく事に必死な今は、喋るとか無理である。



 モフモフの背に乗り、景色を堪能? いや、無理……。景色とか、ナツメさんの黒毛しか見えてないから。鞍も手綱も無く、動物(?)の背に乗るとか、普通に無理。あんなの、アニメや漫画の中でしか出来ない空想の産物である事が発覚した。太ももに力を入れて? いや、そもそも跨げる程の足の長さなんか無い。



 ナツメさんに乗る前の『モフモフの背に乗るイメージ』はあくまでもイメージ……、夢は夢のままである。



 ただただ、ナツメさんの黒毛に埋もれて、しがみついたまま過ごす事、暫く……。ナツメさんの動きが止まったようなので、ちょっとだけ顔を上げて周りを確認してみる。まぁ、見たところでどこか全く分からないんだけど。



「リリアンヌ! この木が良さそうだ」



 ナツメさんがそう言うので、一度ナツメさんから降りて、ナツメさんが見ている木に近付いてみた。



―――――――――――――――――――――――


 ◆ホワイトナット

 硬質で、衝撃に強い木材が取れる。

 10~12月にホワイトナッツの実を落とす。

 実は食用可。香ばしくて美味しい。 


―――――――――――――――――――――――



 おお! 硬質で衝撃に強いとな! ドアに打って付けだね。でもナッツの採れる木だけど、切っていいのかな……。



「ナツメさん、これ、木の実が採れる木だけど、切っていいの?」

「にゃ! 数本切ったところで問題にゃい。この木は、この森には沢山あるしにゃ」

「そっか。じゃあ、遠慮なく」



 ん~、どうしよ……切った瞬間、木が倒れる前に〈アイテムボックス〉に仕舞えばいいかな。てか、エアカッターとかでズバッとイケるかな? とりあえず、やってみよう。



 私は木だけがスパッと切れるイメージで〈エアカッター〉を使い、直後に〈アイテムボックス〉に《収納》した。




「出来た!」

「おお~! リリアンヌは亜空間持ちにゃのか?」

「え? ああ……亜空間というか、そういうスキルがあるんだけど」

「にゃるほど。魔法ではにゃくスキルか」

「ん? 魔法でも同じような事が出来るって事?」

「リリアンヌ程の魔力があれば出来るにゃ。袋にそういう魔法を付与した物を持っている人間もいるにゃ」

「そうなんだ。マジックバッグってヤツかな」

「リリアンヌなら作る方も出来そうだにゃ」

「作る方……。でもスキルあるし、わざわざ作る必要はないかも」

「でもリリアンヌのスキルは、誰かに見られたら亜空間魔法が使えると思われるにゃ。そういう魔法を使える人間は目を付けられやすいから危険だにゃ」

「なるほど……」



 ナツメさんや猫妖精達の前ではともかく、人前でスキルを使う予定はないけど、その内、ひとつぐらいは作っておいた方がいいかな。


 

「今度、やってみる。どんなバッグでも大丈夫かな?」

「にゃかに物を入れられるにゃら、袋でも箱でもにゃんでも大丈夫だにゃ」

「そうなんだ……」



 ウサ毛皮でポシェット作ろうと思ってたし、それで試してみようかな――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
スプーンおばさん幼児
[一言] 街に出れる年齢になったら、マジックバッグ作って売れば儲かるかも? 同じ場所で大量に売ると眼を付けられそうだけど。
[気になる点] 幼児向けの本では簡潔に表現するので まるで既存の有名作品のお話の〇〇のようなといった表現は避ける。 例えばアンパンマンやドラえもんやジブリの○×やら最新の読者が知らないかもしれない昭和…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ