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◆37・妖精とは……。


 外から聞こえる「ニャーニャー」声に気を取られながらも、唐揚げは揚げた。竜田揚げはまだ揚げてないけど、一度火を止めて外の様子を見に行く事した。



 玄関……ドアはなくても玄関! に向かい、中から外の様子を覗き見ようとして、見えなかった……。日が暮れて真っ暗になっていたので、大きめの〈ライト〉を外に飛ばして、見えた光景に思わず仰け反った。



「ぎぇ!」



 ホーム周りの結界を、猫妖精たちが取り囲み、結界に爪を立ててガリガリガリガリしているのである。まぁ、実際にガリガリ音がしている訳ではないが、絵ヅラはちょっとしたホラーである。



「何!?」



 猫妖精たちの奇行に慄きながら、何が起こっているのか探ろうとしたところで、寅さんとロックくんが話し掛けてきた。



「リリアンヌ~! いい匂いがするにゃん!」

「たまらんにゃ~!」



 …………は?


 

「すっごく美味しそうな匂いだにゃん!」

「欲しいにゃ~! 食べたいにゃ~!」

「んにゃ~!」

「たべたい! たべたい!」

「いいにおい!」

「みゃみゃ~!」


 …………。



 まさかとは思うけど、唐揚げの匂いに釣られて騒いでたって事? え? 妖精がビスケットとクッキーと牛乳が好きって言ったの誰よ……。ナツメさんか。え? アレって、妖精の好物じゃなくて、ナツメさんの好物? いや、でも妖精は別に食べなくてもいいんだよね? 普通に食欲旺盛なのでは?



 妖精成分どこ行った! これじゃあ完全に『猫』だぞ。



「リリアンヌ~!」

「リリアンヌ~!」

「にゃ~!」

「みゃ~ん!」

「にゃにゃ~!」



 なんか、猫が何か言ってる……。



「妖精って、お肉食べるの?」

「食べようと思えば、何でも食べれるにゃん!」

「ビスケットとクッキーも好きだけど、他のも食べれるにゃ~!」



 ――ビスケットとクッキーも食べるんだね。てゆうか、雑食妖精とか……何か嫌なんですけど。セキさんが魚食べてたのは例外かと思ってたのに……。



「リリアンヌ~! いい匂いの何にゃん?」

「味付けして、油で揚げたコカトリスのお肉だけど、味付けした物食べれるの?」

「僕らは猫じゃなくて妖精だから、何でも食べれるにゃ!」



 ――黙れ! 雑食妖精! 肉の匂いに釣られるなんて完全に猫でしょうが!


 

「にゃ~!」

「リリアンヌ~!」

「りりあんぬ~!」

「うみゃ~!」

「にゃにゃ~!」



 ――はぁ……。



「切り分けて来るから、ちょっと待ってて……」

「んにゃ~!」

「待ってるにゃん!」

「にゃ~!」



 ――くそぅ……。何だかんだ言っても、見た目が可愛いんだよ! くそぅ……。せっせと作った唐揚げが……。ううぅ……可愛過ぎて抗えない……しくしく。



 私は、キッチンに戻って猫たち用のお皿を5枚交換し、出来た唐揚げを猫たちの食べやすいサイズにカットしてお皿に盛り〈アイテムボックス〉に入れた。



 外に行き、結界前の〈ゴロニャンエリア〉で間隔を開けて5つのお皿を置くと、お皿回りに猫集りが出来た。



「うま……はぐ、うまにゃ……はぐ、リリアンヌ……はぐ、うま……にゃん」

「にゃ~、はぐ……うま、はぐ……リリ、はぐ……アンヌ、はぐ、はぐ、にゃ~」

「にゃ……はぐ……うま、はぐ……にゃん、はぐ」

「んぐ、はぐ……んにゃ、はぐ……にゃぐ……」

「もう、黙って食べなよ……」



 ガッつく猫たちはもはや、妖精成分の欠片も見当たらない。ちょっぴり無の境地に立ちながら、猫たちがはぐはぐしている姿を眺めていると……



「にゃ! にゃにをしている!」

「何事ですか? これは……」

「みゃ! 何か食べてる!」



 ナツメさんとソウさんとセキさんが帰ってきた。



「あれ? 早かったですね」

「にゃ! 思ったより、早く済んだのだ!」

「……まぁ、最後はちょっと押し付けてきたというか……ごにょごにょ……」

「リリアンヌ! チビたちが何か食べてるみゃ!」

「え、あぁ……はい、食べてますね」

「我のは!?」

「……持ってくるんで待っててください」



 うん、まぁ、セキさんなら他の子たちが食べてたら、そりゃ反応するよね~と遠い目をしながら、私は自分用に少し残しておいた唐揚げを取りに行った……。せめて1個ずつは自分に置いておこう……。




「セキ、貴方、また集って……」

「みゃ、だって……」

「吾輩もちょっと食べてみたいにゃ」

「ナツメ……」

「だって美味しそうにゃ……」


 

 私はホームに戻って、唐揚げをお皿に乗せて戻った。小さい子たちには切り分けたけど、セキさんたちはまだ人間姿だし、食べやすいように2つずつ串に刺して持っていった。



「どうぞ。1人1串ですよ」



 そう言って、唐揚げ串をセキさん、ソウさん、ナツメさんに渡していく。



「私にまで……いいのですか?」

「どうぞ」

「みゃ! いただくみゃ!」

「リリアンヌ! ありがとうにゃ!」

 

 

 3人が唐揚げにかぶり付くのを見てたら、私もお腹空いてきた。


 

「みゃ! うみゃい!」

「ホント……美味しいですね。」

「にゃ? 1個ずつ味が違うにゃ!」



 お気に召したようで何よりだ。気付けばチビ猫たちも食べ終えて、満足そうに顔を洗ったりしている。まんま猫である。……戻って私もご飯食べよ。


 

「ごちそうさまにゃ!」

「ごちそうさまでした」

「うみゃかったぞ!」

「はい、それは良かったです。私も戻って、ご飯食べますね」

「ああ! またにゃ!」

「また!」

「みゃたな!」

「また~!」



 私はナツメさんたちやチビ猫たちからお皿を回収して、手をフリフリしながらホームへと戻った――。



 作り置き用の唐揚げは各味1個ずつしか残らなかったが、私にはまだ竜田揚げがある! キッチンに戻り、まだ揚げてなかった竜田揚げをせっせと揚げて、スープを温め直し、ショップで白むすびを交換し、料理を全て盛り付けて、食卓に着いた。



「やっと食べれる~! いただきます!」



 まずは、コカトリスの唐揚げである!



「うまっ!」



 え~! めちゃうま! なんかお肉の味が濃厚で旨味と肉汁がギュッて感じだ。これなら、コカトリスのお肉、もうちょっと置いておけば良かったかな……。まぁ、今度また見つけたら、お肉は取っておこう。



 うまうまとご飯を堪能し、満足気分で食べ終えた。量は少なめにしたつもりだったけど、お腹パンパンである。胃が小さいぞ、リリたん……。残った料理は勿論、〈アイテムボックス〉にナイナイしておく。



 片付けしたら、もうゴロゴロしちゃおう――。


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― 新着の感想 ―
換気扇無いと、窓だけじゃ、室内が油臭になりそう。
[気になる点] 匂いとはある意味物質なので結界を通るのは不自然に思えました。 世の中には様々なニオイのもとが存在しますが、ヤバイものもあるわけで、それが通ってしまうことにもなりかねません。
[一言] 結界って匂い通すのか。 料理の度にねだられないために、匂い通さない仕様にしないと
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