◆33・奴、再び。
ナツメさんたちを見送った私は、そのまま採集に向かう事にする。
ソウさんに紹介してもらった茶トラくんとシャムくんに、近くで採集したい事を話し、家に飾れるような植物もあれば欲しいので、採ってもいいだろうかと聞いてみる。
「生態系を壊す程採ったりしないだろう? 問題ないにゃん」
「毒のある物とかは採ってくるなよにゃ~」
――との事。
なので私は近くを散策する事にした。〈鑑定〉もあるし、毒植物は採らないで済むだろう。そうして私は、散策しながら目に付いた植物を〈鑑定〉していった。
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◆ナオシ草◆
葉の部分が傷薬の素材となる。苦い。
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◆カイユシ草◆
葉の部分が治癒薬の素材となる。微甘。
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◆モエ草◆
乾燥させてモヤ草と混ぜると着火剤となる。
食べると内臓が爛れる。
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◆モヤ草◆
乾燥させてモエ草と混ぜると着火剤となる。
食べると内臓が爛れる。
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◆クサ草◆
3日間水に漬けておくと激臭を放つ。
獣除けとしても使える。
食べると全身から異臭を放つ。
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最後のやつ、獣どころか獣以外も逃げるでしょうよ。んでもって絶対、自分の鼻にもダメージ喰らうでしょうが! それより……
「名前が雑……」
人の事言えないけど……何か、もうちょっとこう、何か……何か無かったのか……。
――それより、雑と言えば私の〈鑑定〉も大概だ。前から思ってたけど、鑑定内容が雑と言うか『鑑定ってこういう事だっけ?』と、首を傾げたくなるというか……『なんか思ってたんと違う』感とか『コレジャナイ』臭が漂う感じだ。
コレは鑑定レベルが足りない系で、鑑定すればする程精度があがる系ならいいんだけど、コレがデフォルト且つ最終形態の可能性も充分にあり得るのである。まぁ、どんな内容であれ、情報を得られる事自体は有難いんだけど。
スキルについて思考しながら、いくつか採集していく。後で〈アイテムボックス〉で《換金》してみよう。
何かの素材になりそうなモノは少し多めに、でも全部は採り尽くさないようにする。それ以外にも、ホームに飾れそうな物は、土魔法でスコップっぽいモノと器を作り、根ごと移し替えてみた。
草だけでなく、木の実も食用可能なモノはいくつか採集した。『ブラックナッツ』というクルミっぽいものや『ルージュベリー』という赤い果実っぽいものだ。木の実とかは割と普通の名前なのに、草系だけ何か酷い。
でも、多分この違和感を覚えるのは『私が日本語を知っているから』なのかもしれない。この世界……少なくとも私が知っている言語では、「治る」事を「ナオル」とは発音しないし、「燃える」事を「モエル」とも発音しないので、この世界の人たちは、この草達の名前を聞いても『ああ、植物の名前ね』という事以外、特に何も思う事はないだろう。
この世界は地球と何か関係あるんだろうかと、ぼんやり考えてもみたけど、深くは考えないようにする。だって、きっと考えても解る事じゃなさそうだしね――。
今いる所である程度の採集を済ませ、そろそろ移動しようかと思ったところで、ガサガサと木が動いたのを感じた。
そちらに視線をやりつつ〈浮遊魔法〉を発動し、すぐに逃げられるようにする。少し高い位置から音のする方を見ていると、角が生えたウサギが2羽飛び出てきた。
――お前かっ!
一見、可愛いウサギに見せかけておいて、口と額に凶器を仕込んでいる肉食異世界ウサギである。
大体、可愛く見えるのはフォルムだけで顔をしっかり見れば、確実に『ウサギってこんなんじゃない顔』なので、狩るかどうか迷ったのは一瞬だ。奴等は間違いなく『魔獣』なので、遠慮なく狩る事にする。
「〈アイスロック〉〈アースブレット〉!」
今回はランスでドーンはやめたのだ。アレはちょっと、見た目がアレなので。まずは〈氷魔法〉で2羽の足元を凍らせ、逃げないように固定してから、〈土魔法〉で作った弾丸を脳天にチュンとしてみた。最初は〈雷魔法〉でビリビリさせて気絶させようかと思ったけど、毛皮が焦げたりしたら嫌だなと、氷にしてみた。
クッタリして動き出さない事を確認してから、念の為にそこらで拾った木の棒でツンツンしてから、〈アイテムボックス〉にナイナイした。コレも後で《換金》しよう。
毛皮は取っておこうかな……。2羽分あれば、食卓にしてる椅子の座布団とか作れるかも。いや、片面は普通の布でもいいか。お肉はどうしようかな。ウサ肉のまま使ってもいいけど、換金して別肉に交換してもいいのだ。まあ、換金金額見てから決めよう。
もう少しだけ散策して、日が暮れる前には帰ろう。
そうして私は、ふんふんとしばらく採集に勤しんだのである――。