◆31・またですか?
――はっ!
いつの間にかスヤスヤどころかグーグーと5時間くらい寝ていた……。
え……寝過ぎじゃね?
……いや、身体はまだ幼児だから別におかしくない? まぁ、いいか。ベッドの寝心地が良過ぎたせいである。最高過ぎる。なんて罪深いヤツだ……。最高だ!
あ~、お昼過ぎてる……どうしよう、お昼ご飯食べようかな。なんてまったりした生活だろうか……。これが『スローライフ』か? ……多分、違うな。それっぽいけど、多分微妙に違う気がする。
私はもぞもぞと動き出し、まずは〈ウォーターボール〉で顔を洗う。
「ご飯、どうしようかな~」
せっかくキッチン作ったし、中で料理しようかな。ウサ肉まだ残ってるし使おうかな。あ! シチューにしようかな! 多めに作って残った分は〈アイテムボックス〉に入れておこう。
作るものを決めたら、足りない材料を〈交換ショップ〉で交換する。ジャガイモとブロッコリーにしようかな? カボチャとか、白菜とか、カブとかでもいいんだけど、とりあえず王道から行こうかな。あ~、シャケとほうれん草……きのこに、エビや貝もいいなぁ……。途中でアレコレ妄想を飛ばしながらも野菜と牛乳を交換する。
キッチンの調理台の前に立ち、材料を並べる。人参・ジャガイモ・玉ねぎ・ブロッコリー・ウサ肉・バター・塩・胡椒・コンソメの素・小麦粉・食パン1枚。
まずは野菜の準備だ。鍋に水を入れ、火にかけておき、沸騰するまでの間に、野菜を切り分け始める。まずはブロッコリーを切り分けて洗っておき、お湯が沸いたら、塩ゆでする用意をしておく。
人参、ジャガイモ、玉ねぎの皮を剥いて、一口大に切っていく。途中でお湯が沸いたので、少し火を落として、塩を入れ、ブロッコリーを茹でる。ブロッコリーを茹でている間に、また野菜のカットを再開。
野菜をえっちらおっちら切っている間に、ブロッコリーが茹で上がったので、シンク代わりの台の上でザルに上げ、お湯を切ったら調理台の上に置いておく。また野菜のカットを再開し、全部出来たら、ウサ肉を一口大に切っていく。
材料が全部切れたら鍋にバターを入れて溶けたら、ウサ肉と玉ねぎを入れて塩胡椒を振り、炒める。玉ねぎが半透明位になって来たら、人参とジャガイモも入れて更に炒める。玉ねぎが透けてくたっとしてきたら、一度火を止めて、小麦粉をまぶすように入れながら混ぜ混ぜ。満遍なく混ぜたら、牛乳と水を足してまた混ぜ混ぜ。小麦粉が溶け馴染んだら、コンソメの素を入れて、火を点け直し、適度に混ぜ混ぜを続ける。
「いひひひひひひ」
鍋をひたすら混ぜていると魔女気分になるよね。特に今は幼児サイズだから、普通の鍋も大きく見える事だし。
シチューにとろみがついてきたら、弱火にしてしばらく煮込む。後は、時々混ぜて煮え具合を確認していればOKだ。しばらく煮込んで、味見をしながら味を調えていく。最後に茹でたブロッコリーを投入して、ひと煮立ちしたら完成だ!
シチューを煮ている間に、食パンにバターを塗り、食べやすい大きさにカットしておいた物を、最後のひと煮立ちをさせている間に、フライパンで軽く焼く。トースター欲しい……。流石に〈交換ショップ〉に電化製品系はないのだ。コンセントないもんね。
焼けたトーストをお皿に移し、完成したシチューも器によそう。食事をダイニングエリアの机に運び、コップとカトラリーを出して、椅子に座る。
「いただきます!」
あ~、美味しい。染みるわぁ~。感想が幼児らしくないけど、許して。温かいご飯、大事。リリたん、お窶れ気味だからね……ちゃんと食べないとね。
シチューをしみじみ堪能し『ごちそうさま』をしたら、後片付けをする。残ったシチューは鍋ごと〈アイテムボックス〉に入れたけど……。どうしよ、鍋もうひとつ交換しとく? ランチョンマットかトレーも欲しい。今はいいか……。
少し食休みをしたら採集にでも行ってみようかな。お昼過ぎだけど日暮れまではまだあるし、ホームの周りを見てみるのもいいかもしれない。
〈アイテムボックス〉からポンチョを取り出して着た。どう見ても探索するには軽装備過ぎるけど、ないよりはマシだろう。〈防御魔法〉は常に掛けてるから問題ない。……ハズ。
ナツメさんたちがまだ外にいたら採集の相談とかしてみよう。
――足取り軽く外に出た私は、三度固まった。
――…………え?
―――イケメンがおるんですが?
―――え? …………。
―――またこのパターンですか?