◆30・これは巧妙な罠である。
誰でもわかる前回のあらすじ!
―――――『リリたん、お風呂(?)を作る!』
若干、不安の残るお風呂場完成の後はホーム内に戻り、ダイニング部分と寝室部分に分けるために、壁を作る。出入り口には勿論ドアはない! その内、のれんかカーテンでも付けようと思う。
ベッドや机などの位置も作った壁に合わせて作り直す。家から持ってきた魔導コンロも出してみる。
――うん、高いな。
聳え立つコンロを見上げながら、コンロの前に身長に合わせた段とスペースを作り、コンロの隣に調理台、流し台もどきを作っていく。水は流れないので、流し台のような穴が空いてるだけだ。調理台の下はちょっとした棚になっている。調理器具とか今はアイテムボックスの中にあるけど、一応、フライパンとか鍋とか置けるようにしてみた。
調理台の上にも調味料を置いたり出来る棚を作り、食材を置ける棚も作ってみた。今のところ、食材は〈アイテムボックス〉から出さないけど、一時的に置く事もあるだろうし。
うんうん! なんかちょっと家っぽくなってきたね。
その内、装飾品なんかも増やしていきたいな。まずはカーテンやクッションの布製品だろうか。〈交換ショップ〉で交換してもいいけど、自分で作ってみるのもいい。ぽわぁ……っと妄想を飛ばしながら、ハッとする。
カーテンの前に窓だよ! 今は上の方に穴空いてるだけだからね。カーテン以前の問題である。ガラスがないからなぁ。流石に〈土魔法〉でガラスを作るとかは出来ない。多分、単純に材料かそれに代わるような物が揃っていないからだと思う。なら、材料があれば……と思っても、無理無理! それなら、いっそ結界張った方が……そうだ! 結界張ろう!
多分、私のイメージ次第である程度は変化させられる。猫妖精たちが上に乗ったりしてたのは、私が『領域内に私以外は誰も入れない固い箱』みたいなイメージで張ったからだ。『結界に触れたら弾かれる』とかイメージして張れば、多分そうなっていただろう。その要領でガラス代わりの結界を窓部分に張ればいいだけだ。
そうと決まれば早速試してみる。キッチンスペースの少し上に20×30センチくらいの穴を空けて、ガラスっぽい結界をイメージしながら〈結界〉を張ってみる。
「おお! 出来た!」
イイ感じにガラスっぽく見える! まぁ、開閉は出来ないけど。換気したければ、この結界を消せばいいだけだ。ちょっと手間はかかるけど問題ない。
その後、いくつか同じような窓を作る事にした。今はカーテンがないので見えても問題ない所だけにしようと思ったんだけど、ふと思いついて磨りガラスをイメージしながらやってみると、見事にそれらしくなった。
「おお~! この要領でステンドグラスっぽく出来ないかな……」
試してみた結果、一度に複雑な模様にしたり、色を変えたりは出来なかったけど、土魔法で枠を作り、枠の中にひとつずつ色を変えた結界を張る事でそれっぽくする事は出来た。手間がかかるので、とりあえずは簡単でシンプルなデザインにした。
これでとてつもなく質素な家に少しの彩りが添えられ、少しばかり気持ちが高揚する。
「うむうむ、高野豆腐にも人参やインゲンや卵があった方がいいもんね」
少しずつ形を整えだしたものの、基本的には少し黄色がかった土壁のみで出来ている家なのだ。下手をすれば牢獄一歩手前な見た目だ。せっかくあの牢獄っぽい部屋から抜け出てきたんだから「求む! 文化的な生活!」だよ。まぁ、思いっきり森の中だけどさ。
そうだ! 家の中に鉢植えでも置いてみようかな。外に出れば森っ森してるけど、中は無っ機無機だもんね。別に筋肉の話はしていない。彩りの話である。
森でイイ感じの植物を採集出来ないかな? あ、ナツメさん達に聞いてみるのがいいかもしれない。森を傷付けないなら好きにしていいって言ってたけど、観賞とか装飾目的で採集するなら、一言断りを入れておきたいし、おススメとか聞けるかもしれないしね。
鉢植えの件は後にするとして、まずは家の中の快適度向上が先である。お次はやっぱり寝床かな。
やっぱり布団が欲しいのだ。寝袋まだ2回しか使ってないけど……。でもやっぱり布団が欲しいのだ。切実に。なので交換しちゃおうと思います!
〈交換ショップ〉の「◆寝具」のページを開き、真剣に吟味する。選ぶのは勿論、地球産の中からだ。布団が欲しいとは言ったけど、やっぱりマットレスにしようかな。最初は子供用も考えていたけど、大人用で困る事はない。大きいのにするのだ! いっその事ダブルとかにしちゃおうかな! ふかふかマットの上でゴロンゴロン……いい!
中々の出費になるが、ダブルサイズのマットレスとボックスシーツ、掛布団と枕に各カバー、マットレスの下に敷くすのこを交換。
今は只の石の台みたいな上に寝袋出して寝床にしてたけど、湿気対策に台にも細かい溝を入れてみる事にした。この上に更にすのこを置いて、その上にマットレスを出し、シーツを掛けていく。最初はんしょんしょ手間取っていたが、途中から〈浮遊魔法〉を使ったので思ったよりは楽にシーツを掛けられた。魔法様様である。掛布団と枕にもカバーを掛けて、配置する。
「むふふふふふふ」
完璧に完成した寝床にダイヴする!
「むはははははは!」
最高だ! ゴロンゴロンしてやる!
「ふふふふふふふ!」
私は、ゴロゴロしながら笑いが止まらなかった。しばらくゴロゴロゴロゴロしている内に、いつの間にか眠りに落ちていた。
まさかの睡眠トラップであ…る……すやぁ……――