◆28・新たな作戦と計画
《秘儀・猫妖精達を分散させよう作戦》は失敗に終わったが、これで終わりではない! 新たな作戦【Operation FO】を決行する。
私はナツメさん達がゴロゴロしているエリアの少しズレた所で、ホームを囲っている結界の高さと同じ位の頭上に〈ゴロニャンエリア〉を展開し、セキさんの方へと向かった。
「あの! 頭の上をウロウロされると気になるので、出来ればあっちに移動してください」
――普通にお願いした。
セキさん達は「ミャ!」と言って、快く移動してくれた。うむ! 《普通にお願い作戦》は成功である! 私はホーム前に来たついでに、んべんべ毛繕いをしているソウさんに話しかけた。
「さっき聞きそびれたんですけど、結局『加護』って何なんですか? 妖精が見えるようになるだけですか?」
「いえ……。妖精が見えるようになるのは、言わば副産物的なものであって本質ではないですね。加護がある事で、魔法の扱いが上手くなったり、身体が丈夫になったりもしますが、一番はやはり、竜族と直接言葉を交わせるようになる事ではないですかね。人は竜との繋がりを持てるだけでそれを奇跡のように感じたり、はたまた脅威に感じたりしますからね」
「あぁ、なるほど……」
そりゃ『加護持ち巡って戦』とかが起こる訳だ……。怖や、怖や……。
「リリアンヌは、加護はにゃいけど、吾輩たちと一緒にいれば白竜様とお喋りできるぞ!」
「…………」
――お喋りしねぇわ!
「いえ、ご遠慮いたしたく……。そもそも、何をお喋りしろと?」
私、竜界の流行りとか知らないよ? 『まぁ、鱗が輝いていますわ! どこでお手入れを?』とか言えばいいの?
「にゃんでもいいにゃ。白竜様は博識だから、聞けば色々教えてくれるぞ」
「……ナツメさん達も結構色々知ってますよね?」
「にゃ、吾輩達はこれでもにゃがく生きてるから色々知ってるにゃ。でも白竜様の方がもっと色々知ってるぞ」
「はぁ……」
――だとしても、白竜様に聞きたい事なんてないな……。
「それより、リリアンヌ! その堅苦しい言葉遣いもやめるにゃ」
「え……」
「そうですね、子供が変な気を遣うもんじゃありませんよ」
「……わかり、わか……わかった」
「んにゃんにゃ」
中身は子供ではないし、デッカイ猫に子ども扱いされるのは何だか不思議な気分だけど、ちょっとモゾモゾしながらも、嫌な気分ではなかった。
私はナツメさんたちとの会話を切り上げ、ホームに戻って当初の予定を進める事にする。
そう! 《お風呂を作ろう計画》である!
昨晩、寝る前に『起きたら考えよう!』と思ってたのに、起きて外に出たら猫がいたんだもんよ……。正確には妖精だけど。
とにかくお風呂である! おトイレは、都度、外に出て〈土魔法〉で個室を作り〈土魔法〉と〈水魔法〉と〈クリーン〉を駆使してどうにかしている。この『都度、外に出て個室を作る』手間も省こうと思う。
新たにお風呂・おトイレ専用の〈高野豆腐部屋〉を作り、ホームと短い通路で繋げるのだ。え? ホーム内に作らないのって? 一応、魔法で処理とかしてるけど、湿気とか臭いとか気になるし、ちょっと離しておくのだ。
大体、建築技術とか何もない超ド素人が、土魔法で囲ってるだけの建物なのだ。ちょっと素敵な洞穴と大差ない……いや、流石にそれよりはマシだと思いたい。
最初に作った3×5メートルのホームは思ったより広いけど、今は机と椅子とベッドしかないからだろう。後で、キッチンスペースも作って、ダイニングと寝室に分ける予定なので、大きさはこのままでいいかな。
後でダイニングにする予定の一部に出入り口を作り、1.5メートルくらいの通路を作り、突き当たりを左右に分かれさせる。左におトイレ、右にお風呂スペースを作る。新たに作った部分が結界からはみ出てしまったので、サイズを合わせて〈結界〉を張り直す。張り直す時に『雨も遮る』事をイメージしてみた。
この場所の降雨状況とか分からないけど、窓代わりの穴が空いた土魔法で作った家なのだ。ガチガチのコンクリートみたいな壁になってるけど、万が一にも、雨漏りしない……とは言い切れないので、念には念をである。
よしよし! と、私はまだ何もない『お風呂スペース』に戻り、壁の上の方にいくつか窓代わりの穴を空け、浴槽と洗い場、脱衣所スペースとに区切っていく。
まずはお風呂場から。あ、あれ? 排水どうしようか。魔法で出した水は、消そうと思えば消せるんだけど、洗う時に流す水が、足元に溜まるのはいただけない。お風呂場の床を少し高くして、流した水が一時的に下に流れて溜まるようにしておこうか。うんうん、魔法様様である。
後は、浴槽部分と洗い場の椅子、棚を作る。どれもリリたんに合わせて幼児サイズである。脱衣所の床もお風呂場に合わせて少し高くした。脱衣所の方にも棚を作ったら、基礎はこれで完成だ!
……多分――。