◆23・来ちゃった!
誰でもわかる前回のあらすじ!
―――――『リリたん、外に出たら空飛ぶ猫に遭遇!』
起きてご飯でも作ろうかと外に出たら、何故か不自然に影が出来ていたので、ふと見上げたら……猫が飛んでいた。
いや、正確には飛んでいる訳ではない。私の張った〈結界〉の上にゴロニャンしているのである。……大量に。
そう、1匹じゃない。『大量に!』だ。
――どどどどどどどど……どういう事!?
猫は好きだ。「猫派? 犬派? それとも鳥派?」と聞かれたら、間違いなく「猫派!」と答えるくらいには好きだ。ほとんどの猫の背中やら頭やらが下から見えるということは、ほとんどの猫が『へソ天』状態で寝ているという事だろう。それは可愛い。だけど、この状況では「きゃ~! 猫たん!」とか言えない。普通に怖い。
特に、大量にいる猫達の中にとびきりデカい猫がいる。ほとんどの猫は家猫サイズなのに、その中で3匹だけ猛獣サイズだ。見た目は完全に猫なのに、図体は虎である。ぶっちゃけ、今の私より絶対に大きい。
そんな猫達が結界越しとは言え私の頭上にいるのである。普通に怖い。
「ひぃ~、助けて、お鹿様~!」
思わぬ事態に、思わず蚊の鳴くような声で、昨日出会ったお鹿様に助けを求めてしまう。当然、お鹿様は傍にはいないし、いたところで『助けてくれるか?』と言えば、『ん~? どうだろう?』だろう。
私はゆっくり後ずさりながらホームの入り口まで下がり、そこから〈鑑定〉をしてみた。
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◆ケット・シー◆
森の管理者である猫型妖精。基本的に温厚。
攻撃すると容赦無く反撃する。
自分や仲間を害する者には苛烈。
猫型に変化し、人の営みを観察するのが趣味。
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――あばぁぁぁぁぁ……!
珍しく説明文が多いなと思ったけど、それより中身が爆弾過ぎる。
――来ちゃった!
――管理者様だったよ! お猫様!
――お猫妖精様だったよ!
え? これはお鹿様同様、《ご挨拶》案件ですか? それにしたって、ちょっと数多すぎません? 大きいお猫様が3匹に小さいお猫様が30匹位いるんですが? あれ? 妖精って「匹」でいいの? というか管理者様を「匹呼び」していいのかな? 1妖精、2妖精……って言った方がいい? なんて一人問答していたら……
「にゃ? 人の子?」
……という、声が降ってきた。
「え?」と、声のした方に視線を向けると、デッカいお猫様『その1』と目が合った。デッカイお猫様『その1』は、白と黒のもっふぁもふぁな長毛種タイプのお猫様だ。そのお猫様のグリーンゴールドとでも言うべきか、なんとも美しいおめめがガッツリ私を見ているのである。体勢は『ヘソ天』のままだが。
――え? 今、声聞こえたよね? 幻聴? え? まさか……このお猫様しゃべれる系? そんな『異世界あるある』ホントにある? なんて考えていると……
「そこにゃ人の子。この結界を張ったのはお前か?」
と、更に言葉が降ってきた。
――あああ、これ絶対お猫様がお喋り遊ばされてる!
内心アワアワしながら、なんとなく背筋を伸ばし、
「はっ! 結界を張ったのは私でありますっ!」
と、ビシッと敬礼ポーズを決めながら答えた。
「ふむふむ、森鹿が『不思議な人間が泉に来ている』と言っていたから見に来たものの、人の姿は見えず、だが、そこにゃ箱のにゃかにいるかと、出てくるまで待つことにしたのだが……、この結界から心地好い魔力が漂っていてにゃ。思わず寝転んでしまったら、はにゃれがたくにゃってしまったのだ」
「さ、左様でございますか」
森鹿って、もしかして昨日のお鹿様のことかな? なんて思いながらも、お猫様の言葉に耳を傾ける。
「うむ。しかし『人間』とは聞いていたが、まさか『子供』とは思わにゃかった。して、人の子、にゃにゆえ、こんにゃ森のにゃかまで来たのだ?」
「はっ! 生まれた家を飛び出し、住める場所を探しているところであります」
「ふむ……。ここに住むのか?」
「えっ、と……ここに住んでいいなら住みたいですが、ここにこのような家を建ててはいけないなら、移動します」
「ん? 別にそれはかまわにゃい。故意に森を傷つけたり、吾輩達のにゃかまや森鹿に危害を加えにゃいにゃら、好きにするといい。ある程度にゃら、木を切ってもかまわにゃいし、魔獣や普通の獣にゃら狩ってもいい。ただ……」
「ただ……?」
お猫様は何かを言い淀みながらも、何故かおめめがギラギラし出した。ちょっと怖い。体勢は『ヘソ天』のままだが。
「この結界を沢山張って欲しいにゃ。このようにゃ箱型でにゃくても、吾輩達が寝転べるように沢山欲しい。もちろんすぐじゃにゃくていい。どうかにゃ?」
「あ、はい。では、それでお願いしたく……」
「うむうむ、交渉成立だにゃ!」
――えぇ~!? ここに住んでいいらしいのはイイんだけど、結界いっぱい欲しいって何~? 私の結界、マイナスイオンでも出てる? それともホットカーペット替わり? と、口には出せなかったが、心の中では大量の疑問符が飛び交っていた。
なんにせよ、住む場所は決まったようです。