◆22・にゃ゛っ!
お鹿様との邂逅余韻にしばし浸りながら、今日のこの後の時間の為に色々と準備したいと思います。
それにしても、ホントにビックリした~。途中、本気で泣きそうだったし。気になることもイッパイ出来ちゃったけど……。『森の管理者』ってどなた様なのか。お鹿様が友好的な感じのまま去っていったのは、私がここでホームを作った事自体は問題ないってことなんだろうか? だとしたら、しばらくここにいたいんですが。というかもう、ずっとここにいたい……。
――とりあえず、ご飯の準備をしたいと思います! まずは〈アイテムボックス〉を開き、家から持ってきた物を確認していく。まずは、塩! 残念ながら、胡椒はなかった。
「玉ねぎに人参、キャベツ、豆、これは……赤カブ? ん? テーブルビートとか言うヤツかな?」
テーブルビートは調理したことないけど、どうしようかな。とりあえず、豆以外は一個ずつ出しておく。
次に〈交換ショップ〉で必要なモノを交換する。まずは、調味料から「胡椒・ハーブソルト・油・酒・みりん・醤油・砂糖・コンソメの素」調理用品から「鍋・フライパン・包丁・まな板・菜箸・おたま・串・バット・ボウル・ザル・網・炭」食器から「木製カトラリーセット・木製スープボウル」を交換。
材料が揃ったら、ホーム前の外スペースに〈土魔法〉で調理台と火をおこす場所を作る。薪とかないんで、作った火おこし台に炭を入れて、〈火魔法〉で火を点けたら、網を載せる。え? 今日は魔導コンロは使いません。
まずは、交換した小さめのフライパンを網に乗せ、酒・みりん・醤油・砂糖を入れて、フツフツしたら火からおろし、調理台の上に置いて、粗熱を取る。粗熱が取れたらボウルに入れて冷ましておく。作ったタレを冷ましている間に、材料の下ごしらえをする。
まずは、ウサ肉を〈アイテムボックス〉から取り出し、食べる分だけ切り分け、後はまた〈アイテムボックス〉にナイナイしておく。取り出したウサ肉の3分の1は、少し小さめの一口大に切り、残りは少し大きめの一口大に切る。大きめの一口肉は6切れだ。2切れはハーブソルトを揉み込み、残りの4切れには、塩胡椒をしてバットに取り分けておく。
まな板と包丁を〈クリーン〉したら、お次は野菜の準備だ。玉ねぎ、人参、キャベツ、テーブルビートを食べる分だけ切り分け、残りはアイテムボックスにナイナイ。玉ねぎ、人参、テーブルビートの皮を剥いたら、それらとキャベツを〈ウォーターボール〉で洗う。
野菜を切り始める前に、塩胡椒したウサ肉の内の2切れを、冷ましたタレの中に投入しておく。お肉をタレに漬けてる間に野菜のカットを再開。全部、1センチ角のさいの目切りにしていく。
全部切れたら、お鍋(これも小さめサイズ)を火おこし台の網の上に載せて、油を少しひいたら、小さめの一口大ウサ肉と玉ねぎを塩胡椒して炒めていく。軽く火が通ったら、お鍋に人参、キャベツ、テーブルビートを足してから水を入れ、コンソメの素も入れておく。後は、そのまま煮るだけである。
スープを煮ている間に、お肉の準備に移行。ハーブソルトを揉み込んだお肉2切れと、塩胡椒して馴染ませたお肉2切れ、タレに漬けたお肉2切れを、それぞれ串に刺して、これも火おこし台の網に乗せて焼いていく。
スープを煮て、お肉を焼いてる間に、使った器具を〈ウォーターボール〉と〈クリーン〉で綺麗にしたら、アイテムボックスにナイナイし、お皿とスープボウル、スプーンにコップを出しておく。お肉を時々ひっくり返し、スープの煮え具合を確認する。お肉が焼ける匂いで、空腹を刺激されながら完成を待ち……
「で~~きた~~~!」
焼けたお肉をお皿に取り分け、スープをよそう。
「ふは~! いただきます!」
もう、見るからに美味しそうなお肉をまずは一口。
「うまぁ~!」
パサつきもなくジューシーで、鶏ももにちょっと似てる感じだ。ウマウマとお肉をかじり、スープも食べる。スープも美味しい。野菜の甘みが出て、串焼き肉と食べるのに丁度良い、優しいお味である。今まで、おにぎりとパンしか食べてなかったからねぇ……。ご飯らしいご飯に、つい無言で黙々と食べてしまったよ。
「ごちそうさまでした!」
ご飯に大満足し、後片付けをしたら、今日はもう寝たいと思います!
替えの下着をショップで交換し、自分を〈クリーン〉して履き替え、〈アイテムボックス〉に入れておいたジャージに着替えた。お風呂に入りたいけど、それは明日考えようと思う。歯磨きをしたら、ウサ型寝袋を出して、おやすみなさい――。
――翌朝、目を覚まし、ホーム前のスペースに出た私は再び固まった。
―――…………え?
―――……空飛ぶ猫がおるんですが?
―――え? …………。