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◆21・食べちゃダメ。


 フラフラ飛びながら、それなりの広さが取れる所を探す。まぁ、リリたん身体ちっさいから、寝るだけなら2メートルあれば余裕なんだけど。



 しばらく飛ぶと、森の中層辺りに木のない所があるのが見えた。



「あ~、どうしようかな……」



 広さはありそうだけど、中層なのがなぁ……。あんまり奥の方には行きたくないんだけど、気分的には『もうあそこでいいんじゃない?』と、内なる花ンヌが言っている。


 

 うん、まぁ、いいかぁ。あんまり過信はしたくないけど、多分〈結界〉は大丈夫だ。うん、あそこにしちゃおう……と、森の中層に向かって飛んだ。



 木のない所まで行くと、そこには泉があって『あ~、だから木がなかったのか』と納得である。



 でも、泉周りには余裕もあるので、場所は確保出来そうだ。それに景色も良いのだ! 朝ご飯を食べた場所とは大違いである。なんだか『これぞファンタジー!』な景色で、テンションが回復した。



 泉から少し距離を取って、辺りに何もいないか確認して〈結界〉を張る。今回は少し大きめに5メートル四方の結界だ。というか結界を張った時に、領域内に居たであろう虫っぽいモノが押し出されるように弾き飛ばされたのが見えた。



「なんて素晴らしい……」



 思った以上に高性能な結界である。これなら窓を作っても大丈夫そうだ。5メートル四方の前2メートルを空けて3×5メートルの床と壁を作り、窓を作る。天井は最後だ。今回は失敗しないぞ!


 

 作った壁の2面にレンガ1個分くらいの穴を、少し高い位置に3つずつ空ける。うん、窓というか、単に壁に穴が空いてるだけとも言う。



 結界から2メートルの幅を空けた方の壁には、私が通れるくらいの出入り口を空けて〈ライト〉を出してから天井部分を作った。『New 高野豆腐型ホーム』の完成である!

 


「で~きた~!」

 


 やっぱりこのマイ・エリアが出来るとテンション上がるね。『キャンプ・ハイ』再びである。後は、中に机と椅子とベッドを作る。え?全部ただの四角い台ですが何か?

 

 

 後は、ホーム……え? 誰が何と言おうとホームですよ? ホームの前に作ったスペースにも椅子と机を作るつもりだ。実は、そこで()()『ウサ肉』を調理する予定なのである!



「ふふふ~♪」とご機嫌で外に出て、私は固まった。





 ――…………え?




 ――……シシガミ様がおるんですが?




 ――え? …………。




 いや、怖い人面顔ではないし、なんならぶっちゃっけ、こちらの『お鹿様』の方が神々しい感じではあるんですが……。『発光してる?』って感じの白っぽい薄緑色の毛並みに、金色の葉っぱが付いた木みたいな角が生えているのである。



 そんな『お鹿様』が、結界のすぐ外側からこちらを見ているのである!




 ――どどどどどどど……どうすれば…。




 あれ? そういえば、私〈認識阻害〉掛けてるけど、見えてる? それとも結界やらホームが見えてるだけ? あれ? 『お鹿様』には〈認識阻害〉とか無意味的な?



 軽くパニックになりながら、ハッとして〈鑑定〉してみた。



―――――――――――――――――――――――――――――――


 ◆フォレスト・ホーンディア◆

 森の管理者の庇護下にある鹿型霊獣。温厚でのんびりした気質。

 森の魔素濃度を一定に保つ役割を持つ。食べちゃダメ。


―――――――――――――――――――――――――――――――




 ――食べるかぁぁぁぁぁっ!




 いや、ツッコミどころは他にも満載である。え、え、え? ナンデスカ? 『霊獣』って。え? 『霊獣』って『白虎』とか『朱雀』とか、そんな感じのアレなのでは? え? ていうか『森の管理者の庇護下』ってどういこと? それって『森の管理者』がいるってことでは? 『森の管理者』ってどちら様?


 

〈鑑定〉したら更にパニックになってしまったが、このままでいる訳にもいかない。お鹿様は変わらずこちらを見ているので、これはもう《ご挨拶》するべきなのでは?



 私は〈認識阻害魔法〉を消してから、距離を置いて回り込むようにしながら〈結界〉を出て、ゆっくりとお鹿様の方に向かい、ちょっと距離を開けた所で《土下座》し、ご挨拶の言葉を述べた。



「不束者ですが、どうぞよろしくお願い致します」




 ――違ぁぁぁぁぁ~う!

 



 きっとコレじゃない! 間違えた! 違う! 『お鹿様』がここに来たのは、私がここに〈結界〉を張ったから? ホームも作っちゃったし、ダメだったのか? 何て言う? てか言葉通じてる? でもさっきの挨拶は取り消せないぞ!



 もうパニックが止まらない! と、土下座体勢のまま固まっていると、下げた視線の先に、お鹿様の足が見えた。




 ――ひぃぃぃぃぃ! お鹿様が近寄ってこられたぁぁぁぁぁ。




 マジ泣きしそうである。すると、そんな精神が瀕死状態の私の頭の上に、なんか乗った……。え? 何? ナンデスカ? 『踏みつけの刑』とかですか? え? 転生1日目にして、人生終了デスカ?


 

 ――あれ? でも、お鹿様の足は全部見えたままである。



 え? 足じゃないなら、乗ってるのはもう『顔』しか考えられませんが? え? 今、どんな状況? と、更に混乱の極みに達していると、頭の上に乗った『ナニカ』が左右にスリスリされる感触の後、頬が『ペロン』とされた……。




「ふぇ?」



 ――あれ? 怒ってらっしゃらない?

 


 私はゆっくり顔を上げ、お鹿様を見ながら「あの……ここにお家作っちゃっいましたけど、このままで大丈夫ですか?」と聞くと、もう一度『ホッペロン』された。



 言葉が通じているかは謎だけど、友好的な感じは間違いないのでは? 恐る恐る「撫でてもいいですか?」と聞いて、ちょっとだけ手を上げると、お鹿様の方から手に顔を近づけて、スリスリしてくれたのである。



 ――ふぉぉぉぉぉ~!



 内心ではとっても興奮しているが、それを漏らさないように必死に理性をかき集め、お鹿様のスベスベなビロードのような毛並みをしばし堪能させて頂き、しばらくすると、お鹿様はもう一度『ホッペロン』をして、去って行かれました。



 『なんだかすごい経験をしちゃったなぁ』と、夢見心地な気分で結界内に戻り、外に椅子を作って座ったら、しばしその場で『ぼへぇ~』っとしてしまったのである。


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