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ありがとうチート!~トンズラ幼女はマイペースに異世界を堪能することにしました~  作者: 伊藤琳


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◆162・虚空の先


「あの……、これは一体……」

「…………初めからだ」

「え? そんなはず……」

「私が来た時にはこうだったのだ。だから、初めからだ」



 ゾルジ邸にやってきたレギドール騎士と話す、ロイド様を見遣る。

 何がどうしてこうなったのか、一部始終を見ていなければ理解できないであろうゾルジ邸の有様に、やってきたレギドール騎士たちが困惑した様子を見せていた。

 一部始終を見ていても理解しがたい光景に、自分がやらかした訳でもないのに、何となくの気まずさを感じる。



「《ふむ……、自由に動けるのはいいが、食事ができないのはな……》」

「森に帰ったら、僕が持っていってあげるにゃ~」

「《ロックは優しいな》」

「オイラも一緒に行くにゃんよ!」

「《楽しみだ》」



 ――うむ、やった本人は、我関せず……と。



 というか、ロックくん?

 その持っていくご飯は、きっと私が作るのよね?

 …………うん、ロックくんとトラさんにも手伝ってもらうとしよう。

 お手伝いを頼めば、結構、嬉しそうにしているので、問題なかろう。



 結局、ロイド様とレギドール騎士団の話し合いは、ゾルジ邸の人たちの調査と捕縛をレギドール騎士団に任せるという話で終わった。

 すでにゾルジ邸の人たちを、金ポニワ隊が捕縛していることだしね。

 ただ、ロンダン帝国やカレッタ王国、そしてシフ王国が捜していた特異スキル保持者であるデイジーが見つかったことは、レギドール騎士団にも報告された。



 とは言っても、デイジーはすでにこの世にはいない。

 デイジーの身体がウルヒナという令嬢に使われていたことが原因ではあるのだけれど、デイジーの身体は、まぁ……、どうやら、ゾルジ邸と共に消滅してしまったらしいので、デイジーの死亡を証明するのが難しい。

 証言者がアルバス様とレイ、そしてナツメさん……という人外組だけということもあって、ロイド様はレギドール騎士団の人たちに、『デイジーが見つかった』ということだけを報告したらしい。



 ゾルジ邸で起こった出来事の詳細は、ロイド様が直接、大公子様に話すつもりのようだからね。

 まぁ、内容的に、安易に話せないということもあるだろう。

 金竜様の啓示や、使者やら何やらで、すでに大騒ぎの様相を見せ始めているレギドール神皇国。

 そこに、今度は『白竜様』が登場し、ゾルジ家当主とウルヒナ嬢が制裁を下され、邸の一部が完全に消えてしまったと広まれば、更なるパニックが起きそうである。

 いずれはその事実もレギドールの人たちに伝えられるかもしれないけれど、軽々に広めてしまっていい内容ではない。

 まずは、大公家の判断を仰ぐべき……ということかな。



 その後、その場をレギドール騎士団にお任せし、私たちは皇都へと戻ることにした――。



 数時間前に大公子様たちとの話し合いを終えたばかりだというのに、またしてもすぐに話し合いをしなければならない事態に……。

 まぁ、今回も、主に話すのはロイド様とレイだけど。



「結局、今回は私、特に何もしてないね」

「何言ってるの。そもそも、リリアンヌがいなきゃ、アイツらは今も悪事を働き続けていたはずだよ」

「そう……かな……?」

「そうだよ」



 金ポニワ隊が放流された時点で、あの人たちもいずれは捕まっていたとは思うけれど……。

 まぁ、少しは早く止められた、ってことでいいのかな?



「そうだね。リリィがいなきゃ、きっと俺たちもまだ、強制隷属させられたままだったと思う。だから、『今回』とか関係ないよ」

「そっか……」



 そうだね。

 結果はともかく、デイジーは見つかったし、強制隷属された人たちの解放もできた。

 デルゴリラも捕縛したし、私がレギドールでやらねばと思っていたことは、全部終わったのだ。

 そう、終わった。

 もうすぐ、旅が終わる――。



 ◆ ◆ ◆



 ゾルジ邸から皇都へと戻ってきた私たちは、宿でロイド様と共に各所へと飛文書を飛ばすことにした。

 ほとんどはロイド様にお任せしたけれど、私はアルべルト兄さんとじぃじに手紙を飛ばす。

 一通りの連絡を終えて一息付いていると、アルバス様と猫妖精たちが、『町に行こう! 町に行こう!』と言いだした。

 まぁ、アルバス様は、そのためにポニワ化したと言っても過言ではなさそうだからね……。



 という訳で、私とレイ、ナツメさん、ロックくん、トラさん、雪丸さんとルー兄とで、ポニワ化したアルバス様ことポニバス様を連れて、町へとやってきた――。



「《うむ、自分の足で見て回るのは違うな》」



 猫妖精たちは買い食いを前提にしているからか、今回も人型に変身していた。

 そんなナツメさんの肩の上に、ちょこんと乗っているポニバス様を見遣る。



 ――貴方、ナツメさんの上に乗ってますがな!



「あ、お肉売ってるにゃんよ!」

「にゃっ! 行くぞ!」



 猫妖精たちは早速、買い食いに走るようだ。

 肉か~。今は、お肉気分じゃないしなぁ~。



「リリィはどうする?」

「ん~……」



 どうしようかな~と思いながら、辺りを見回す。

 どこからともなく、チーズの匂いがしているので、それを辿ることにした。

 見つけたのは、ポテトグラタンのようなものが並ぶ屋台だった。

 屋台と言っても、お店の軒先で調理をし、それをその場で売っていて、できたて熱々って感じのものである。

 これは……、タルティフレットかな?



「美味しそう……」

「おや、お嬢ちゃん、いらっしゃい! 美味しいよ!」

「リリィ、これにする?」

「する」

「お嬢ちゃん、器は持ってるかい?」

「器……?」



 ――ああ、もしかして、自前の器に入れてもらう方式?



「器、あります」

「あいよ! 何杯にする?」



 いそいそと、バッグを漁るフリをして、アイテムボックスから器を取り出す。

 どうやら、取り分け用のお玉、何杯分かで値段が変わるらしい。

 ある種の量り売りだね。



「ルー兄と雪丸さんもいる?」

「いる」

「ええ」

「(レイは?)」

「(ちょっとだけ……)」

「(じゃあ、半分こね)」



 ルー兄と雪丸さん、レイの分も取り分けてもらっていると、肉串を買いに行っていた猫妖精たちが戻ってきた。



「にゃ! それ、旨そうだにゃ」

「でしょ~!」

「僕もほしいにゃ~」

「ロック、他にも食べるなら、オイラと半分こするにゃんか?」

「するにゃ~!」



 結局、みんなも同じものを買い、近くの広場で軽く腰掛けて、買ったものを食べる。



「美味しい! 熱い! 美味しい!」

「熱っ……」

「美味しいですね」

「初めて食べた……」

「僕、先にお肉!」

「こっちは少し冷ましてから食べるにゃんよ」

「にゃっ、吾輩はどっちから……」

「ナツメさん、これ熱いよ?」

「にゃっ……」



 トラさんはちゃんとふぅふぅするし、ナツメさんのようにガッついたりしないけれど、ナツメさんとロックくんは、注意したって火傷することもあるからね……。



「《やはり、この身体でも食事ができればな……》」



 そう言いながら、ナツメさんが持っている肉串をジーッと見つめるポ二バス様。



 ――見てるよね? お肉を見てるんだよね? 深淵を見ている訳ではないよね?



 そういえば、せっかくアルバス様のために来たのに、食べられないアルバス様の前で食べるとか、酷過ぎる仕打ちをしてしまった……。

 次は、食べ物以外を見て回ろ……。

 


 ――《ゾッ》



 ――は?



 奇怪な吸飲音がしたかと思えば、ナツメさんが持っていたお肉が、まるでブラックホールに吸い込まれたかのように、一瞬にしてポニバス様の口の中へと消えていった――。



「にゃっ!? 吾輩の肉!」

「《ああ、済まぬ。少し試してみただけなのだが、できてしまってな》」



 ――できてしまってな?



 それって、その身体で肉串を食べたってこと?



「仕方にゃい、買い(にゃお)すとしよう。白竜様、ちゃんと食べられたのか?」

「《うむ、口だけそちらの身体に繋げた。口だけなら、魔素漏れを気にする必要もない》」

「何て、器用な……」



 ていうか、吸い込まれていったんだけど、飲み込んでるの?

 ちゃんと噛んでます?



「白竜様、良かったにゃんね~!」

「一緒に食べられるにゃ~!」

「《うむ》」

「白竜様、これも食べるにゃんか?」

「《うむ、くれるのか?》」

「にゃっ、足りなければまた買えばいい」



 そうしてその後は、ポニワボディ(ぼでぇ)なのに食事ができるようになってしまった白竜様の気の赴くままに、屋台巡りをすることになった。



 ゾゾゾゾとポニバス様の口らしき虚空へと食べ物が吸い込まれていく様は、若干(?)ホラーであったと、心の日記帳に記録しておくとしよう。



 良い子は見ちゃいけません――!



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― 新着の感想 ―
タピオカ吸う感じと同じ感覚かな? あの感じで肉が口の奥にそのまま……喉にダイレクトアタックしてヤバそう(笑)
吸い込み方はカービィってよりはグラブルのルリアみたいな感じだね 見えない人からしたら良く食う子達がになるんだろうなぁ
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