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◆141・行け!


 誰でもわかる前回のあらすじ!

 ――『リリたん、助けを求められる!』



 妖精の宿邸に飛び込んできた小雪ちゃんの話を聞けば、アルベルト兄さんがいた場所に敵が来て、ポニワが魔法を使ったけれど、小雪ちゃん以外は風の中から出られない……と。



 ――う、うん? 



 アルベルト兄さんがいるのは、聖騎士団の駐屯地なのでは? それに、ポニワが魔法を使った? 風の中?



 いろいろと気になるけれど、アルベルト兄さんは、ひとまずは無事なようである。風の中から出られないというのは、ちょっとよく分からないけれど、行けば分かるかな?



 それにしても、私が魔法で出した植物……(鑑定によると魔植生物)が、魔法を使うなんてことがあるんだろうか……と思ったのだけど、使ったんだそうだ。しかも、二回も。



 マジか〜……と思いながら、小雪ちゃんが首に下げているポニワを見た。



「縮んでる?」

「にゃう?」



 そう、小雪ちゃんにあげたポニワは、もう少し大きかったような気がする。それに……。



「葉っぱも減ってる?」

「にゃう⁉︎ ホントにゃの〜! わたちのポーちゃん……」



 ――ポーちゃんって呼んでたんだ……。



「土に植えて、またリリアンヌに魔力を補充してもらえば、元の状態に戻ると思うよ?」

「にゃう? 戻る……にゃの?」



 ――え? そうなの?



「リリアンヌの魔力の塊みたいなものだからね。魔法も、自身に宿ったリリアンヌの魔力を消費して使ったんだと思うよ」



 そういえば、ポニワって私の分身体みたいなものって言ってたっけ……。

 葉っぱが万能薬の材料になるらしいし、治癒魔法を使ったから、葉っぱが減ったんだろうか?

 


 私は、本当に何を生み出してしまったのだろうかと改めて思いながらも、小雪ちゃんたちの役に立ったのなら何よりである。小雪ちゃんのポニワには、あとで魔力補充してあげるとしよう。



 ポニワのアレコレはさておき、アルベルト兄さんたちがいるという現場へ向かうことにする。私とレイ、そして小雪ちゃんを乗せたナツメさんが夜の街を疾走する。クロも一緒だ。

 


 そうして、小雪ちゃんの案内で辿り着いたそこには、文字通り『風の壁』が聳え立っていた。



「う……わぁ……」



 どう見ても、触れたらミンチになりかねないような風の壁だ。なんかヒュンヒュン言ってるし、殺意が高過ぎではなかろうか。というか、ここは、やはり聖騎士団の駐屯地なのでは?



 目の前で見れば結構な異常事態なのだけど、騒ぎになっている様子はない。

 この世界の人たちは、基本的にとっても早寝早起き。魔法があっても、夜でも明るい世界ではないので、周りが暗すぎて見えないか、すでに寝ているのかもしれない。何より、まさか聖騎士団の駐屯地でこんなことが起こっているとは、誰も思わないだろうし……。



 ――何にせよ、この風の壁をどうにかしないとね。



 とは言え、この風の壁をいきなり消して大丈夫だろうか? いきなり風の壁が消えた時、敵がどんな行動をするか分からない。そも、敵がどれくらいいるかも、目的も分からないし……。



 一度、風の壁の中に入って、偵察とかした方がいいかな?

 …………絶対防御魔法をかけているから、このまま通り抜けても大丈夫だろうか? 通れる?



 辺りを見回し、近くに落ちていた木の枝を拾う。

 木の枝に絶対防御魔法をかけ、それを風の壁に近付けてみる。



 ――《ズボッ》



「(おぉ……)」



 近付けた木の枝が、膜に包まれているかのようにして、風の壁にズボッと入っていく。どうやら、絶対防御魔法をかけていれば通り抜けられそうだと思った時、突然、目の前の風の壁が消失した。



 ――え!?



 風の壁が消えた瞬間、みんなが私の方を見たけれど、私は何もしていない……はず。……よね? 木の枝を差し込んだことが原因でなければ……。

 みんなに『チガウ、チガウ』とジェスチャーをしていると、少し離れた所から声が聞こえた。



「隊長、生きている奴らは全員……ですか?」

「そうだ。できる限り、生け捕りにしてこいという命令だ。意識はちゃんと刈ってあるな?」

「はい、あの魔法師から渡された魔道具を使いましたから」



 声がした方に視線をやれば、フード付きマントに口布を巻いた、見るからに怪しい人影が見えた。



 ――生け捕りに、魔法師から渡された魔道具?



「(……敵、かな?)」

「(どう見ても、そう見えるね)」



 フードを被った二人の少し離れた所には荷馬車らしきものがあり、フード姿の二人と同じ格好をした人たちが、意識のない人たちを荷馬車の中へと運び込んでいた。もしかして、意識がない人たちは、第五部隊の聖騎士さんたち?



 ――目的は拉致? 聖騎士を?



 これだけでは、まだ状況が良く分からない。

 アルベルト兄さんはどうしたのだろうか?



「(どうしよう? とりあえず、見えている敵を倒す?)」

「(そうだね、ヤ……斃そうか)」



 ――今、『や』って言った?



 ちょっぴり物騒なニュアンスを感じた気がしたしたので、レイたちが何かをする前に、私がどうにかするとしよう。



 敵だけを眠らせる魔法をイメージしながら、地面に手を付き、植物魔法を発動する。すると、植物の蔦が静かに地面を這って伸び、敵の背後で花を咲かせ、睡眠効果のある花粉を撒き散らした。



 ――《ドサドサッ》



「(できた!)」

「(相変わらず、器用だねぇ)」



 なぜか、私が想像もしていなかったパンドラゴラとやらを生みだしてしまった植物魔法を使うのは、ちょっぴり不安が過りもしたけれど、どうやら上手くいったようである。まぁ、今のところ、予想外だったのは、あのポニワだけだ。あれだけがイレギュラーだった……ということにしておこう。うんうん。



 その後、即座に荷馬車の方にも植物の蔦を伸ばし、眠らせた二人と同じフード姿の人たちも、同じ方法で次々と眠らせた。



 う~む、素晴らしきかな、静かなる遠距離攻撃。

 今までは、加減したつもりでも広範囲に高威力の魔法をブッパしてしまうことが多かったけれど、相手を速やかに眠らせる魔法は、とても平和的ではなかろうか。



 ――まぁ、起きたあとに平和かどうかは知らないけど……。

 


 眠らせた敵を、植物魔法でぐるぐるに拘束しておく。

 第五部隊の聖騎士さんと思われる人たちは……、とりあえずこのままにして、先にアルベルト兄さんを探そう。アルベルト兄さんに、いろいろ確認した方が良さそうだもんね。



「小雪ちゃん、アルベルト兄さんやアオくんがどこにいるか分かる?」

「にゃう、あっちにゃの!」



 走り出した小雪ちゃんの後を、浮遊魔法で飛びながら付いていく。

 先ほどの場所から少し離れた場所に、茂みに覆われた小さな納屋のような建物が見えた。小雪ちゃんが止まったのは、そんな建物の前である。



 茂みが凄くて、相当近付くか、元々この建物がここにあることを把握していなければ、この場所には気付けなさそうだ。この暗さでは、建物の存在を知っていても見つけるのは難しそうである。



「ここにゃの!」



 なるほど、ここですか。しかし、入り口が分からん……。

 建物の殆どが植物に覆われていて、隙間からチラチラと板壁が見える程度である。どこから入るのかと、建物の前をウロウロしながら上下左右に視線を巡らせる。



 すると、小雪ちゃんが迷いなく、板壁を覆う茂みの中へと突っ込み、そのまま影の中へと消えて行った。なので、『なるほど!』と、小雪ちゃんに続けとばかりに茂みの中の影へと突っ込んだ。



 ――《ベチッ》



「ばふっ……」

「「リリアンヌ!?」」

「普通に壁だった……」

「ちょっと、何してるのよ……」

「にゃぶぶっ……」



 ちょっと、ナツメさん? 笑うなら、笑ってよね。

 堪えられると、余計に恥ずかしいわ。



「小雪が通れるくらいの穴はあるみたいだけどね」



 そうなのだ。よくよく近付いてみれば、小雪ちゃんが通れるくらいの穴しかないことが分かるのだけど、影の塊は子供一人が通り抜けられそうな大きさに見えたので、イケるかなと思ったのだ。……全然、イケなかったけど。



「………………。ふんっぬ!」

「リリアンヌ!?」



 通れる穴がないなら、広げればいい。

 これが『道を切り拓く』というこt……。



「ふぐぬぬっ……。ちょっと頑張れば、外せ……ぐっ……、外せっ……、ぬぐぅ!」

「普通に入口探そう?」

「さっき見たけど、ふぬっ……全然分かんなかった……し……、ぐぎぎっ……」

「なら、せめて魔法使おう!? どう見ても、物理で外せそうにないよ?」



 小雪ちゃんが通り抜けた穴に手を掛け、右足を板壁に付けて踏ん張りながら唸っていれば、レイにもっともなツッコm……指摘を受け、はたと正気に戻る。



「ちょっとベリッと外すくらいなら、手でできるかなって……」



 全然、できなかったけど。



「仕方にゃい、吾輩が(にゃん)とかしてやろう!」



 珍しくキリッとした顔付きでナツメさんがそう言ったので、ここはお任せするとしよう。頷く私を見たナツメさんは、目の前の板壁にスッと手の平を翳した。

 すると……。



 ――《ガコッ》



 ナツメさんの足下から、何かが動く音がした――。



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