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◆119・妖精は気まぐれなのです。


 誰でもわかる前回のあらすじ!

 ―――――『リリたん、「狂気の妖精」と呼ばれる!』



 狂気の妖精とか、あたしゃ、ランパスか何かか? あれ? ランパスは人を狂気に陥れるんだっけ? ……どっちでもいいか。問題はそこじゃないのだ。



 とりあえず、ベルツナーの孫と聞いて、『狂気』の部分だけを切り取るのはやめていただきたい。これでは、『ベルツナー(イコール)狂気』みたいではないか……。



 じぃじが『ベルツナーの狂気』と呼ばれていることはロイド様に聞いていたけれど、私としては『流星のベルツナー』推しなのである。「残像だっ!」とか言いながら魔獣の合間を駆け抜けるじぃじは、さながら、流星の如きだったのだから。



 そも、私は出奔娘である。だから、自分でベルツナーを名乗るつもりもないのだけど、じぃじの孫であることは確かなので、ベルツナー家の孫扱いされるのはちょっと複雑な気持ちだ。



 ――よし! 聞かなかったことにしよう。



「初めまして。リリアンヌです」

「ああ、初めまして。君は妖精なのかい?」

「……人間です」


 

 何で聞いた? なぜ、妖精かどうかの確認をするのだ。

 君ら、家族でソックリだよ。間違いなく、血の繋がりを感じるよ。

 大体、じぃじは『妖精』として認識されていないよね? なのに、孫がいきなり妖精に突然変異する訳ないでしょうが。



「あれ? 妖精じゃないのか。てっきり、私にも見える妖精も存在したのかと……。違うなら、どうして……」



 この場には妖精が見えない人もたくさんいる。私と私たち一行に妖精が見えることは伏せられているけれど、この場に妖精がいること自体は伏せられていない。

 だって、猫妖精たちが、食べ物を所望しているからね……。だからって、こんなデッカイ人型妖精がいるかも……とはならないと思うのだけど?



 ちなみに、私がここにいるのは、赤き竜の護衛対象だから、ということになっている。元々、赤き竜は、魔獣騒動に巻き込まれて、成り行きで合流したのだ。

 なので、ベルツナー伯爵の依頼で、孫の護衛任務を請け負っている最中に魔獣事件が起こり、ロンダン軍に合流したものの、護衛任務は続行中……というシナリオなのである。他のみんなは『ロイド様の客人』で通しているらしい。

 


 それはさておき、ルシアスくんの父上殿は、暫く黙って息子のルシアスくんを見遣ったあと、なぜかニンマリとしながら、うんうんと頷きだした。



「……………………」



 ――よし! 見なかったことにしよう。

 


 どうせ、この城に来るのも今回限りだし。挨拶もしたことだし……と、私はそそくさと雪丸さんの元へと走った。



 雪丸さんは、リリたんパーティ以外の人には、人間だと認識されている。

 しかしながら、雪丸さんに近付き、話かける人はほぼいないのだ。

 なので、避難先としては最適である。



 あれかなぁ……、滲み出る覇気的な? それとも、溢れ出る冷気?

 今は別に怒ってもいないので、冷気は出ていないけれど、近寄りがたい雰囲気はあるよね。私や人外組には結構甘いし、優しいけどね。

 

 

 案の定、私と雪丸さんに近付いてくる人は、殆どいなかった。

 まぁ、ルシアスくんだけは、普通に雪丸さんにも話しかけていたし、「いっしょにおやつ食べよ~!」って追いかけて来たから、一緒におやつを食べて、お庭探検とかもしたけどね。



 視界の端でニコニコ笑顔を向けてくるルシアスくんの父上殿と、その隣に合流した女の人が真顔でこっちを見ていたのが怖過ぎたけれど、どっちも見なかったことにした。触らぬ神に祟りなしである。怖や、怖や……。



 その後、この場に妖精がいるという話を聞きつけて、『三賢人』とやらがやって来た。

 今回、ここに妖精がいるのは、とある事情で魔力が増えたロイド様に妖精が見えるようになり、そのロイド様に、妖精が付いてきた……ということになっている。



 まぁ、妖精は妖精でも、今まで妖精として認知されていたピクシー族とは似ても似つかない猫妖精だ。

 城に来る前までは、ピクシー族もアルベルト兄さんに集っていたんだけど、城が近くなった時点でナツメさんに指示され、身を隠したのである。



 そんな訳で、見知った妖精とは全く別タイプの妖精の姿に、三賢人と呼ばれる男性二人と女性一人は、困惑を隠しきれない様子だ。



 ちなみに、私たち一行に加えて、どうやらミルマン兄さんも、妖精が見えていることは伏せるようである。なので、三賢人たちが、ロイド様にしきりに話しかけ、「本当に妖精なのか?」と問うている。



 猫妖精たちはそれを横目に、無言で料理を頬張り続けていた。

 どうやら、三賢人たちと話す気はないらしい。

 ロイド様やミルマン兄さんの前では普通に話していたのに、何か理由でもあるのだろうか?



 ガーデンパーティーがお開きになったあと、用意された部屋で、その理由を聞いてみたところ、「(にゃん)とにゃく、(はにゃ)すのが面倒だったのだ」……らしい。


 

 ――なるほど、大いに同感である。



 猫妖精たちとお喋りしながら、ダラダラごろりんちょと寛ぎタイムを堪能していると、ロイド様が諸々の報告やら何やらにやって来た。

 


 まずは、あのケイトって人のことだ。

 どうやら、ケイトさんとやらは、元を辿れば、先の魔獣事件で捕まった元皇族で、モロニー家に婿入りした皇弟、ドナル・モロニーなる人物による縁故採用だったらしい。そういう人物は他にもいるみたいだけど、魔獣事件が収束し、モロニーさんとやらが捕縛されたのは、つい先日の話だ。人事の見直しは、これから早急にされるようである。

 


 ロンダンでは、帝位継承権を持つ人の名に『ド』が入るらしく、先の魔獣事件にて捕縛されるまでのモロニーさんとやらは、『ドナル・ド・モロニー』という名前だったらしい。下される処罰内容等はまだ決定していないようだけど、既に名前から『ド』が剥奪されている時点で、いろいろお察しできよう。



 モロニーさんとやらが、どんな人で、何を思って外患誘致やら何やらをやらかしたのかは知らないのだけれど、モロニー家を支持する派閥もあるようだ。

 そして、ケイトさんとやらも、もちろん、そのモロニー派に属しているらしい。



 どうも、現皇帝の方針に反発することが多い派閥のようなのだけど、魔獣事件が起こるまでは、決定的な反発、反逆があった訳でもないので、モロニー派の人たちも、普通に王宮に勤めているようだ。

 それも現時点での話で、モロニー派の今後は、お先真っ暗であろう。



 んで、問題のケイトさん。彼女は、ドナル・モロニーの乳母の娘のようで、密かにルシアスくんの周りをモロニー派で固めようとしていたらしいのだ。それを成す前に、今回の件でお縄になったので、計画は頓挫したのだけど。



 それも問題のひとつだけど、やはり『ロイド様の客人』に対する無礼……以前に、ロイド様に対する無礼も問題だったのだ。

 まぁ、ちょっとおかしいな……とは感じたよね。

 皇族であるロイド様に、上から目線な感じというか……、『ルシアス様は、ロイド様より立場が上なのですよ!』って感じだったのが、気にはなっていたのだ。



 だけど、ルシアスくんとロイド様の立場がはっきり分からなかったから、そんなものなのかとも思っていたんだけど、やっぱりアウトだったんだね。



 まぁ、そうか。

 よくよく考えれば、ルシアスくんとロイド様の立場云々とかより、侍女が皇族に許可もなく、客人の前で話すどころか、意見を始めるって、大分アウトだな……。うん、そうだな。



 その上で、ロイド様の客人に対する失態、プラス、カレッタ王国代表への失態。

 ミルマン兄さんたちは、特に何も言わなかったけれど、ロンダン側がアウト判定を出したのだ。これも、まぁ、そりゃそうか……って感じだよね。



 そんなこんなで、思った以上のやらかしをやらかしていたらしいケイトさんは、私たちとミルマン兄さんたちに賠償金を払ったあと、お首が胴からサヨナラしてしまうらしい。



 そうかぁ。まぁ、仕方ないよね……としか言えないかな。

『ちょっと睨まれた……』どころではなかったね。



 それにしても……、貴族なのに、あんなにあからさまに激高したり、場を読まずにいろいろ言葉を発してしまうような人を、モロニー派の工作員として送り込んじゃったなんて、人選ミスだな……と思ったけれど、それ以前に、モロニー自身が捕まっていたわ。

 


 かなりダメダメな派閥だったらしい。

 これなら、遅かれ早かれ、モロニー派は瓦解していただろう。



 元々、モロニー派が、何やらこそこそとしていることに気が付いていたロイド様は、どうやって排除しようかと、機を窺っていたらしい。そして、今回の件で一掃できそうだと、ロイド様の声が弾んでいた。よかったね。


 

 ケイトさんとモロニー派の顛末についての話が終わったあとは、ようやっと、料理のできる場所へと案内してもらえることになった。



 貴族のことより、ご飯である――。

 はよ、いこさ!


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― 新着の感想 ―
>『リリたん、「狂気の妖精」と呼ばれる!』 >私としては『流星のベルツナー』推しなのである ならば『流星の妖精リリアンヌ』、略して『流精のリリアンヌ』かな?
うーん、外患誘致発覚前の皇弟の縁故採用だとは言え、なにゆえに侍女の基本のキもなっていないケイトが皇族の侍女になれたのかがわからない、侍女って皇族付きじゃなくても採用されて即現場なんて甘いものじゃなくて…
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