◆11・絶対アカンやつ
〈鑑定〉スキルの突然のご乱心により、鑑定結果への信頼度がちょっぴり下がってしまったけれど、身を守る術は手に入れた! ……多分。
きっと……うん、多分、大丈夫……うん、きっと……。
それより〈結界〉と〈絶対防御〉の魔法を使ったので、どのくらいMPを消費したのか確認しておこうと『リリアンヌ』を〈鑑定〉する。
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リリアンヌ・ベルツナーの魔法により発生した絶対防御膜。
物理攻撃・魔法攻撃・精神攻撃・スキル攻撃を防ぐ。
とってもすごい。
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――…………。
――ああ、うん、そうね。『リリアンヌ』に〈絶対防御〉かけてるからね。中身じゃなくて、膜の方を鑑定しちゃったんだね。うん……。
私は〈絶対防御〉の魔法を解除し、ついでに〈結界〉も消して、もう一度『リリアンヌ』を〈鑑定〉し直した。
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◆リリアンヌ・ベルツナー(5)◆
【MP】360,628/360,750
【スキル】鑑定・アイテムボックス(∞)・言語理解・MAP・交換ショップ
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あれ? そんなに減ってない? いや120くらいは減ってるけど、総量に比すると微々たるモノだ。
やっぱりリリたんの魔力量がおかs……多いのか、それとも発動した魔法がこの世界では大したものではない分類なのか、はたまた何かしらの『転生特典』なのか、よく解らないけど魔力の心配はしなくて良さそうである。
こうなって来ると、家出計画の残る問題は『住居問題』だけかな?
『リリアンヌ(5)』が街中で家を借りようとするのは無謀が過ぎるので、これは最初からナシである。
そもそも5歳の幼女が、一人で街中をウロつけば目立つことこの上ない。特にリリアンヌは貴族生まれのご令嬢育ちだ。うん、ここ数か月は令嬢扱いされてなかったけども。それでも貴族の生活習慣しか知らないので、一般人に紛れるのは難しそうなのだ。
それに何より、リリアンヌは『かわいい』のだ……多分。え? 何で「多分」なのって? それはリリアンヌが自分の顔をハッキリ覚えていないからだ。
ベルツナー家に鏡はあるよ、もちろん。でもリリアンヌの部屋にはなかったし、デイジーが来てしばらくするまでは侍女にお世話されてたから、自分で鏡見て支度するなんてこともなかったもん。
侍女が付かなくなってからは自分でやらされてたけど、それで鏡が用意されるなんてことはなかったから、リリアンヌが自分の姿を鏡で見たのはずいぶん前で、自分の容姿をぼんやりとしか覚えていない。
あ! だったら今、鏡を交換して……いや、魔法で確認しよう!
「〈ウォーターミラー〉!」
――うん、つまりは「水鏡」である。「鏡」そのものを出すのは無理そうだった。それよりも早速、確認だ!
「どれどれ?」
――「あれまぁ……」
お窶れ気味だ……。まぁ、窶れてるのは仕方ない。〈ハイ・ヒール〉と〈クリーン〉をしたからか、顔色は悪くないし、小汚い訳でもない。髪はちょっとパサついててボサボサだけどずっとお手入れ出来てなかったんだからこれも仕方ない。
髪は白っぽい金髪、所謂、プラチナブロンドで、瞳はアメシストのような紫色だ。髪は父譲りで、瞳は母譲りらしい。
ちなみに、父は白金髪に碧眼。母と兄は赤髪に紫眼である。え? デイジー? あの子は緑髪に黄眼。「蜜色」とか「飴色」とかにも表現出来ない、ホントに「黄色」としか言えない黄色目である。
――それにしても、リリたんや……。
これはアカン。
アカンで~! 可愛すぎる!
これで街中を一人でウロつくとか絶対アカンやつや。今はちょっと窶れて髪がボサボサでも、ケアすれば『圧倒的美幼女』になる事、請け合い! 町でも村でも絶対に目立つ。え~? どうしよう? 髪切って変装したって誤魔化せるレベルじゃない。
なんか、こう……変化魔法的な……は無理っぽい? あ、阻害系は? 認識阻害系! お、これならイケそう? まぁ、今は使わないけど、感覚的にこれは『出来る』魔法だ。
え~、でもずっと阻害系魔法使ったまま生活は出来ないよね。街を歩くだけとかなら問題はなさそうだけど、会話したり、接したりしたら多分、違和感を感じられたりするだろうし、そもそも容姿は誤魔化せても年齢を誤魔化せる訳じゃないし、何より身長はひとかけらも誤魔化せないのだ。
――これはもう「山籠もり」するしかないのでは?