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第38話 林太郎の誕生日プレゼント

 8月2日……8月7日まで残り5日。七菜(ななな)家の娘たちがファミレスのテーブル席に陣取り話し合いをしていた。議題は8月7日に16歳となる兄の誕生日プレゼントの内容だ。

 ドリンクバーから各自好きなドリンクを飲みながら会議は続く。


「ボクとしては兄くんはプロテインを飲みたがっていたからプロテイン1年分とかはどうかな?」

「プロテイン1年分? 微妙よねそれ……林太郎ねぇ。肉でも食わせてみる、とか?」

「ふーん。私たち妹の手料理ね。なかなかいい線行くんじゃないの凛香(りんか)お姉たん」

「私としては兄さんのプレゼントとしてはプロボクサーの試合のブルーレイっていうのはどうかな? プロの動きを見るにはイメージトレーニングに使えそうですし」

雪姉(ゆきねぇ)、でもアニキってブルーレイやDVDプレーヤー持ってたかなぁ? オレの記憶じゃ確か持ってなかったと思うぜ?」

「それが課題よね。林太郎がプレーヤー持ってないとしたらあまり有難がれないと思う。リビングには共用のブルーレイプレーヤーがあるけど、大抵江梨香(えりか)お母さんがレンタルした映画を見てるからねぇ……」


 話し合いは難航した。


「さっき栄一郎(えいいちろう)お父さんに電話で聞いてみたんですけど、兄さんはプレーヤーの類は持っていないそうです。

 ちょうどジムに出かけていて留守の兄さんの部屋を調べてくれたそうですけどやっぱり無かったって」

「そう。ってなると……ブルーレイはちょっと厳しいね。やっぱり手料理かな」

「凛香姉さん、手料理とプロテインの2段構えというのはアリかな?」

「うーん、霧亜(きりあ)ってば珍しく執着するわねぇ。とりあえず「プロテイン」「手料理」この2つに絞っていい?」

「オレはそれで構わないぜ」

「ボクもだね」

「私もそれでいいよ。凛香お姉たんはこういう時に陣頭指揮を執ってくれるから助かるぅ~」


 結局プレゼント内容は「プロテイン」「手料理」の2つに絞られた。協議はなおも続く。




「プロテインはドラッグストアで売ってるそうだから、最悪当日でもギリギリ間に合うから良しとして……後は料理の内容だね」

「霧亜の言う通り問題は料理の内容ねぇ。さっきも言ったけど林太郎の事だから肉でいいんじゃない?」

「なるほど焼肉かぁ。でも凛姉(りんねぇ)、焼肉程度だったらオレたち5人が協力する程の事じゃないけどその辺どうすんだ?」

「あの、凛香姉さん。だったら5人をプロテイン担当と焼肉担当で分けたらどうですか?」

「!! 雪、ナイスアイディアね。それ採用」

「ありがとうございます。では誰がプロテイン担当で誰が料理担当か決めないと……」


 その後の話し合いで凛香と(ひめ)は手料理である焼肉担当、霧亜と雪と(あきら)はお金を出し合ってプロテインを買う事になった。


「プロテインを調べるにはリアル店舗で実物を見ながらするといいわ。もしMamazonなんかで注文するなら早めに注文してね。クレジットカードが無いから即日配達は出来ないよ」

「分かったよ。じゃあボクと雪と明は近所のドラッグストアをめぐってどういうプロテインが置いてあるのか調べて来るよ。姫姉さんはネット上でどれが良さそうなのか調べてね」

「分かったわ。お姉さんに任せなさい」

「こういう時には姫姉さんは頼りになるなぁ。凛香姉さんはどうします?」

「私はスマホで美味しい焼肉の焼き方を調べるよ」

「分かった。じゃあ解散ね」


 朝の1時間ほどファミレスに居座った5人姉妹は、ドリンクバーの清算をして各自やるべきことをやり始めた。




 凛香と姫は自宅に戻って焼肉に関する情報を集めていた。凛香はスマホで、姫はパソコンで調べ事だ。


「あった。えっと……『いつもの焼肉が店の味になる秘伝のタレの作り方』だってさ。本当かな? 「秘伝」っていう割には検索してすぐに何件も出てくるんだけど」

「ハハッ、言うねぇ。まぁネットに上がってる情報だなんてそんなものだよ姉たん。なにせ無料だしね」

「こういう所は姫は慣れてるからねぇ。私は検索かける事さえあまりやらないし」

「ふーん、姉たんはSNS中心にやってるんだ」

「うん。やっとまともに出来るようになったから楽しみだったんだ」


 雑談しながら調べ事を進める凛香と姫、その一方で……。


「えーと……『ZADAS(ザダス)アドバンスド ホエイプロテイン プレミアム バナナ風味』か。げ、1キロ5500円もするの!? 高いなーオイ」


 明はドラッグストアをめぐって、売られているプロテインの種類と値段を調べていた。店内は撮影禁止だったので持参したメモ帳にプロテインの種類と値段を書いていく。

 彼女の金銭感覚からしたらプロテインはどれも結構な高級品で、そりゃアニキが豆乳で我慢しているのもうなづける話だ。


 調査を終えた霧亜と雪と明の3人は町中で合流してそれぞれの成果を報告しあう。


霧姉(きりねぇ)雪姉(ゆきねぇ)、そっちはどうだった?」

「ボクと雪が見たところは、どこも同じような品揃えだったなぁ。値段に多少の差があったくらいで、1キロ4000円くらいだな」

「ふーん。じゃあオレが見つけた1キロ5500円ってのが最高値だな。それで行こうよ。今すぐ買っちまおうぜ」

「……」

「?? どうした? 霧姉」


 善は急げとさっさと買おうと思ってた明に霧亜はバツの悪そうな顔をして申し訳なさそうに(ふところ)事情を告げた。

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