レベッカと不運
「ここは…一体」
決まった様な感嘆が彼の口を貫かせた。
今見えているのは、色鮮やかに、それでも慎み深い品位を感じる、典型的な、大人しき欧州の都市風の何かだった。
「ふむ、無事に転生できた様だな」
「…貴女様…此処にまで口出し出来るのですか」
「当然だ、我の指示を、寝付く時でも無い限りいつでも聴いてもらうぞ」
「そうですか…」
黒谷は、何処かの千葉の夢の国に、慰安旅行で行ったらこんな気分なんだろうな。と心の中で密かに思うのだった
「まあ、逆にお前が我が名を呼んでくれればいつでも、可能な範囲で応えてやろうとは思っている」
「そうですか、ありがとうございます…それで、貴女様のお名前というのは?」
「※#@$€€%°#…だが」
「…多分人間に発音不可能です」
音声としては聞こえるのだが、何と言えばいいのか。神が名乗ったその名は、強いて例えるなら、設定を誤りキーンという音が響く、マイクに。宇宙人が全力でシャウトしたような、そんな名前だった。
「ふーむ、我が名は『帝國』の民には理解出来んでも、貴様には理解できるかもと期待したのだが…やはりダメか」
「逆になぜいけると思ったのですか」
「やはり我が真名は、宇宙一高尚な存在である我にしか発音できないということか、仕方あるまい。名付けられるというのはちと癪ではあるが、貴様が発音できる名前で呼んで良い」
「心遣い感謝致します…それじゃあ…」
「邪神」と呼んでやりたい所ではあるが、それでは炭にされかねないので、普通の名前を考える。
三十秒程考えて、これに決まった。
「決まりました『レベッカ』様でどうでしょうか」
「レベッカ…のう、何なのだそれ?人名か?」
「女王が君臨していた場所の名です」
「成る程のう…まあ良いだろう」
嘘はついていない、嘘は。
その後はレベッカサマに指示、説明を受ける。どうやら、此処は連合王国の首都。
『クラルス』というらしい…しかしそれを教えられた所でどうしろと言うのだろう。
取り敢えず中心街に向かってみろ、という雑な命令を下されたので、そこまで向かう。ふと、自分は如何なっているのかと気になり、
窓に映った顔を見る。
如何やら誤差程度しか変わってない。世界は全て変わってしまったというのに
一つ確かなことは、どうやら足は正しく中心街に向かっているらしいということである。最初はまばらだったに人間も、通りが広がるにつれて多くなり始めた
しかし人々の表情にはどこか歓びというものが欠けていた。まるで明日にも全て奪われかねないかの様な表情をしていた
街灯の数も、多いには多いのだが、半分程の灯りは点いていない。首都だと言うのにこんな事が有り得るのか
こんな事になっているので、当然治安が悪い。何となくで散策していると、気がつけば路地裏に着いてしまっていた。
「路地裏、全く良い思い出ないんだよな」
そうぼやきながら歩いていると、運命は更に悪い思い出を付け加えようとしてくる。
「オイ…貴様、旅人だな?」
そう声を掛けてきたのは、いかにも治安の悪そうな顔をした、中年の男。前なら間違いなく無視していたろうが、貴重な情報源となっては仕方ない、一応話を聞いてみる。
「ええ…一応」
「ミングから来たか?」
「ミング…?」
「お前のその顔の雰囲気、嘘をついてもわかるぞ、此処より遥か東にある金持ちドモの国、ミングの者だろう…王が暗愚な奴等ばかりらしくて同情はするがな」
…遥か西の国にまで伝わる暗愚な奴等が王に連発する国とは、知らない国家だが国民が可哀想である。
「つまり何が言いたいか、分かるよな?
金持ちから分取れば全財産俺のもんだ!!
命乞いなんて聞かねえぜ?だって殺せば良いだけだもんなぁ!!『魔法』喰らえ!!」
「ハァ!?魔法!?…そこまで裕福じゃ無さそうが、この国は全員魔法でも使えるのか?」
「貧乏人だけだ!!こんなもん使うのは!!
装填に二十秒近くかかり、撃っても銃火器以下の破壊力!!銃買えたらこんなんいらねえんだよ!!お前を屠ったらとっとと銃買ってやる!!」
「世知辛えなあ!?」
ツッコミ入れてしまったが、それどころではない、奴は二十秒近く掛かると言った、其れ迄に何とかしなければならない




