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前夜の話

 八月の終わり、果たして彼は何をしていたのか。彼の夏休みのルーティンは以下の通りだった。CDショップに行き。

 ヘッドフォン越しに邦楽或いはUKロックを聴き漁る。

 

 気に入ったモノがあれば古いも新しいモノ関係なく、いつも通り下を向きながら店員の作り笑いを無視し、財布から一枚一枚小銭を丁寧に出して帰る。


 そして帰る前にはちょくちゃく図書館に行き、新しい小説読んでは、此処が駄目だと評論家のフリをするのだった。


 それ以外の日は、コンビニバイトとは思えないほどの無愛想さで淡々と仕事をこなす、レジ打ちは無駄に早かったので店長も店長で文句は言えない。


 が、流石に接客業なのに表情が日本経済並みに変化しないのは問題だ。三十代のしがない店長は、老婆心的な勇気を出して言ってみる。


 「黒谷君…?ねえ、黒谷亮(くろたにりょう)君?」


 「…何ですか、どっかの正文さん見たいな顔した店長」


 「それは一体何処の正文さんなの。まあ良いや、君の仕事ぶりには満足しているけどさ、少々無愛想が過ぎないかね…

この前お爺さんにお茶の場所聞かれて丁寧に教えた迄は良いけど『六十年以上生きてきてお茶の場所ひとつわからないとは面白い人生ですね』って言った時は流石に引いたよ!?

凄い引いたよ!?」

 

 「…俺が尊敬するのはジョニー・マーやスティーブン・モリッシー位の話です…後は…人も物も夢も、便所の他人の糞より興味ないです」


 「君…よくこのバイトしようと思ったね」


 「どうせ帰宅部なので…何か建設的なことをしようと思っただけです。他に何か文句あるんですか?」


 そう言う彼の目は、完全に氷点下だった。これで彼なりに心情にヒーターを付け、温めているつもりではあったのだが。


 「うぅ、うーん、まあ働いてくれてるから良いか。

しかし、本当…身長176はあって、顔も良くて…声も良いっていう超優良物件なのに。多分言動さえ何とかすれば人生天国だろうに…残念なイケメンって君のことを言うのかね」


 「…どうでも良いです、店長。そろそろアガり何で帰って良いですか?」


 「う、うん良いよ?唯…これは僕なりのアドバイスだけど…

いつか、本当に好きなことがあったら。それに正直になれば良いと思うよ、こんなとこ辞めちゃって良いんだから」

 

 「…そうですか、どうも。それでは」


 そう言って黒谷はサッサと下向きに帰っていった。

さて、こうなると彼にはもう帰る他やる事はない。普通、人間には相性というモノがある。磁石で言うならばN極とS極の様に、強かれ弱かれと言うだけで反発する仲だったりくっつきあったりすると仲、と言う様な関係で。彼はZ極なのでそんなモノは存在しない。


 この日の帰りもオエシス聴くかナーヴァナ聴くかで迷っていただけだった、いつも通り帰るだけの筈だった。


 下向きに夕焼けを覗く、時間は夏の比較的長めの日差しを傾かせていた。

 

まだ転生すらしておらず、タイトル詐欺みたいになってしまったことをお詫びいたします…

二話以降、何とか連載できるよう頑張っていきます。

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