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大友義介との謁見

いよいよ桐丸が大友のお館様に御目通りする日がやってきた。

桐丸は緊張する気持ちを抑えて、母から教わった所作を頭の中で繰り返し、また母から仕立ててもらった着物の着付けをこれでもかと丁寧に整えた。


父である武介も緊張が隠せないようで、朝からそわそわしていた。


桐丸の御目通りは午後からというお沙汰が下っていた。

話しによると、大野の山本様も同席して下さるという。山本様がどういう口添えをしてくれるのか気掛かりだったが、はやる気持ちをぐっと抑えることにした。


大分の町で宿泊していた宿を出立し、大分城へ向かう。特別な着物で着飾った桐丸の姿はやはり目立つらしく、道ゆく町人たちが振り返って見ていた。


仰々しい構えの城門を通って場内に入る。門番に止められるが、用件を伝えて手形を見せると奥に案内される。


大友のお館様との謁見が行われる大広間に案内されるとそこで平伏して待つように言われる。お館様が顔を上げるように言うまでは顔をあげてはいけないのだ。


桐丸、父の武介はじめ一行が緊張して平伏していると、衣ずれの音がしてお館様が入ってきたのが分かった。

お館様は広間の奥の一段高い場所に腰を下ろすと声を発する。


「苦しゅうない。面を上げい。」


その声を聞いて、桐丸、父、一行はさっと顔を上げて挨拶の口上を述べる。


「奥豊後の宇目の領主、田中武介にございます。このたびはお館様に拝謁の機会を賜り、恐縮至極に存じます。こちらにおりますのが拙者の息子、桐丸にございます。」


「田中桐丸と申します。今回は拝謁の機会を賜り、誠にありがたき幸せに存じます。」


大友のお館様の傍には父の武介の上司にあたる、大野の領主、山本文介が座っていた。

お館様である大友義介は鷹揚に言葉を発した。


「そなたが田中桐丸か。ふむ。なかなか悪くない美少年じゃ。奥豊後の宇目で何をしておったのじゃ。」


「はっ。宇目は小さい領地にございますが、その中で日々武術と学問に励んでまいりました。また、小姓にたるための修行として、母上より所作の稽古、着物の着付け、髪結の仕方などを教え込まれております。」


「ふむ、確かに所作も優雅で美しいのう。女子にも劣らぬ美貌じゃ。ワシにも小姓が何人かおるが、そなたの方が美しさでも所作でも優っておる。」


「そなたのような美少年を奥豊後の山の中で埋れさせておくのは惜しい。」


ここで、大友のお館様である大友義介は脂ぎった顔に血走った目を桐丸に向けてこう言った。


「桐丸、どうじゃ。ワシの小姓として仕えてみぬか。」


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