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ファッション修行

桐丸の父、田中武介の主人、山本文介にお目通りをする日になった。桐丸の母、田中宇目は前日から落ち着かなかった。


「良いですか、桐丸。小姓になるには器量だけではなく礼儀作法が大事です。一つ一つの所作の美しさが問われるのです。おなごはかようなことを幼い頃よりしつけられるので、桐丸の年頃になると自然に美しい所作が身についているものなのです。」


「しかし、桐丸。そなたは武芸と学問の稽古ばかりしてきたので、女子と同等の美しい所作が身についておりませぬ。こればかりは一朝一夕でどうにかなるものではありませぬが、せめて最低限の礼儀作法だけでも身につけておかねばなりませぬ。」


母の宇目はそう言うと、桐丸に美しく見える礼儀作法についてくどくどと教え込むのであった。


しかし、母宇目の心配事は尽きることがなかった。


「桐丸、髪の結い方は昨晩はこうしてみましたが、今朝は違う方が良いように感じます。さっそく結い直してみましょうか。」


「母上、またでございますか。もうこれで5回も髪を結い直しておりまする。」


「桐丸、そう文句を言うでない。桐丸の器量を最も引き立てる髪の結い方を探し当てるのは難しいことなのです。何度もやり直して初めて桐丸に似合うた髪の結い方が見つかるというものです。」


「武芸の稽古も同じではありませぬか。毎日毎日何度も稽古を積み重ねて、それで初めて自分に合うた構えや打ち込み方などが分かり、身についていくものでありましょう?髪の結い方も同じなのですよ。」


「さらに言うならば、着物の着付け方も同じなのです。」


「母上、まさかまた違う着物に着せ替えをしようと言うのではありますまいな。もう懲り懲りでございます。」


「宇目や、もうその程度で良いのではないか。ワシには十分に男前に見えるのじゃがの。」


父、武介が助け舟を出す。


「あなた様、なりませぬ。男にとっての武芸と同じとお考えくださりませ。髪の結い方も、着物の着付け方も、美しい所作も、全て幼き頃より繰り返し稽古して身につけていくのが本来のあり方です。それを桐丸はたったの数日でなんとか形にせねばならぬのです。」


「分かった、分かった。桐丸、母に任せるのじゃ。男が口を出すものではない。おなごに任せるのが一番じゃ。」


「父上〜」


桐丸は父に泣きついて見せたが無駄であった。


こうして、ようやく桐丸が山本のご主人様にお目通りをする準備が整った。

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