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41 心技体と精神力

 こんにちは。


 今日、ダンスは「心技体」のうち、一番必要なものは「心」だという言葉を聞いて、感銘を受けた。


 マイケル・ジャクソンさんのダンスはシンプルだが、どうしてとんでもなく魅力的に見えるかというと、その一つ一つに魂がこもっているからだと。

 指さす動きでも、キックの振り付けでも、全てが魂が……「心」が伴っているから。



 私の好きなアーティストが「昔は喉が悪いから歌えないと思っていた。でも、本当は精神力が足りないだけだった」と言っていた。


 その言葉も聞いた時、すっごくよくわかった。

 同じ事を考えてる人が居た……と感動した。


 

 私は物心ついた時から歌っていた。

 言葉が遅い子だったと思う。

 感情に言葉が追いつかなくて「ん、ん!」とか言っていた。それは自分でも覚えている。


 感情を言葉にするには膨大で、その言葉も見つからないし、言葉を発する時間すら遅かった。

 だから、「んっ」や、「ばーん!」とか擬音で済ませていた。


 私が二歳の時、妹が出来た。

 母親のお腹が臨月でパンパンに膨れると、「おなか、このまま大きくなって爆発するの?」と言いたかったけど、

 「んんっ(お腹を指さす)、ばーん!」と言っていた。


 なのに歌はスラスラ出て来て、何かしらずっと歌っていた。

 知っているものも、勝手に作ったものも。

 

 世の中に既存していると思っていた歌を歌ってみたら、私の勝手な創作で笑われたりした。

 (スーパーの歌だったけれど……、実は私は異世界から転生してきたのかもしれない・笑)


 大人になってから、あることがきっかけでボイストレーニングに通う事にした。

 音楽活動に誘ってくれた方が、私のボイトレに対する偏見をなくしてくれたから、通う決心がついた。


 これも小さいころ、いとこのピアノの発表会か何かに行った折りに、その教室はボイトレもしていて、歌のお姉さんやお兄さんを目指すコースがあったらしく、子供たちはみんな先生のハンコだった。

 それがとても嫌で。個性を殺されるところだと思っていた。

 小学校低学年でも感じるくらい。


 でも、ボイトレは、喉の使い方とか体の使い方を教えてくれるよ、とその方が教えてくれたので、教室を探すことにした。


 確かに大手は駄目だった。

 ただのカラオケ教室。

 見学に行っても、生徒も魂から歌う事を欲しているとは思えない感じの人たちばっかりで。

 ナヨナヨ歌ってた。

 複数人の同時授業なのに30分とか40分とか、短かった。

 そんなの、エンジンがかかる前に終わってしまう。


 探しまくって、巡り合ったのがジャズボーカリストの浦先生だった。

 浦さんは、喉の骨格の形から、どこに意識を置いて息を当てたら、外ではどんな音が鳴るとか、いろんなことを教えてくださった。

 

 人は歌う時に聞いている音は、外で響いている音とは違う。

 自分の声は、自分の身体や頭蓋骨で反響した音でしか聞こえていないから。


 骨の形や筋肉の動かし方を教えてもらって意識することで、すごくわかりやすかった。


 でも一番に私が感謝しているのは、心の問題。

 私が探していたのは、ボイトレじゃなくて、カウンセラーだったんだなって。今でもそう思う。


 私の病的にマイナス思考を、よく一人で受け止めてくださったな、と感謝してもしきれない。

 はっきり言って病んでいたと思う。

 実際に辛い事もいっぱいあったし。トラウマもあった。(解いてもらった)


 やっぱり子供の時と一緒。

 外に出したい感情や表現が、言葉や身体表現に追いつかないから、心が言葉よのも早いから、それが鬱屈して病んでいた。


 私にはいっぱい、ストッパーが付いていて、それを一個一個突破していくのがどれだけ大変だったか……

 歌えないのは、全部心の問題だった。


 大きな声を出しているつもりなのに出せないのも、リズムに乗ろうと思っても乗れないのも、歌に感情を乗せられないのも。全部。


 私は自由で、結局全て開放してやってみればいいのに、それを心が理解するには何年もかかった。

 そしてそれを実現するにも時間がかかった。


 

 つまり、心技体の「心」。精神力。


 今でもいつもそうだな、と思う。

 なんでもそう。


 特に声はすぐにばれてしまう。

 「あ、今の音外したな」「感情が乗っていない」と思っても、それはもう過去の音。出した後の音だから聞こえている。

 だからどうする事も出来ないのに、心が動揺して次の音も外す。

 

 心がしっかりしていれば、過去を捨てて未来が歌えるのに。


 


 浦さんとアイドル(スター)の話をした時も印象深いなぁと、思い出していた。


 ライブでマイケルが奈落から飛び出して、そのまま静止したまま動かないだけで、ファンは熱狂するというのを聞いて。

 

 アイドルという存在は、歌が上手い事を一番として望まれていないし、それが仕事ではないと。


 例えば空港でアイドルを見れたとして、姿を見ただけ、手を上げてくれただけ、で満足するのだ。

 一挙手一投足が、仕事。


 ボーカリストは、自分の名前も把握していないような客を前にして、聞いているのか聞いていないのか分からない様なディナー中でも、完璧に歌わなければいけない。

 それが仕事だから。


 どちらも大変な仕事だと思う。


 その話をしてから、口パクも下手でも何も気にならなくなった。

 彼らの仕事はそれじゃないから。

 きちんと望まれる仕事をしている。他の人では出来ない仕事。


 そしてその場合、下手でも気持ちが伝わる。

 きちんとアイドルという「仕事」をしているから、言葉よりも早い。


 とどのつまり、歌は上手くなくていい。

 上手いに越した事はない。

 でも上手いから、歌手として成功するわけじゃない。

 その人のキャラクターや、声や、表現したい事が、時代に選ばれた時売れる。望まれる。

 残酷だけど。


 

 でもその時代のオーディションを受けるには、まず「心」が必要なのだ。


 きっと、小説でも漫画でも絵画でも彫刻でも、……人に選ばれるものはそういう一面があるんだろうと思う。



 最近、全く歌っていない。

 コロナ禍で歌う場所を失くしてしまっている。


 テレビなんかで仕事で歌っている人を見ると羨ましくて仕方がない。

 

 これも、ある意味、時代が選んでいるのか。

 残酷だな。



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