第17話【いざ、 エルフの里へ】
「……エルフの里、 楽しみですね! 」
「そうだな! 」
イージス達はギルドで受注したクエストをこなすためにエルフの里へ向かっていた。
この世界に来てからエルフの村に行くなんて始めてだ、 ロフィヌスもたしかにエルフではあるけども……やっぱり普通のエルフも見てみたい!
元いた世界でも俺はエルフが大好きだったんだ……それが今実物を見れるなんて……異世界最高!
イージスがそんなことを考えているとザヴァラムが
「イージス様、 見えました」
イージス達はエルフの里へたどり着いた。
エルフの里はバルナルハから数キロ離れた山を三つ越え、 高い木々がそびえ立つ魔法の樹海の奥深くに存在している。そう、 エルフの里は普通の冒険者では到底たどり着くことのできない秘境にあるのだ。
イージス達でも着くまで二日はかかった。
「うぉぉぉぉ! エルフの里だぁ! ! 」
イージスは大興奮。
すると奥の方から何人かのエルフ族の人間が歩いてきた。
「お待ちしておりました……聖剣王、 イージス様……お連れ様もよくぞ参りました」
真ん中に立っていたエルフが歓迎の言葉を言った。
おぉ~本物のエルフだ……この人が村長かな?
「申し遅れました、 私はこの村の村長のクレウスと言います」
「初めましてクレウスさん、 俺達のことはもう知っているようなので話を進めます。あなたが今回のクエストを出した方ですか? 」
「はい、 中々ここまで来てくれる冒険者様がいなくてずっと待っていましたよ。ささ、 詳しい話は私の家でしましょう」
そしてイージス達はクレウスの家に移動した。
エルフの村の家は木の上に建ててあり、 樹海の魔物達から襲われないようにしてある。クレウスの家は一番高い場所に建ってある。
「さて、 今回のクエスト内容ですが……」
「樹海に封印されていた鬼神が放たれた……ですよね? 」
今回イージス達が受注したクエストは超高難易度……樹海に封印されていた鬼神の封印が溶け、 今でも封印されていた神殿の周辺で暴れ回っている。それを退治して欲しいという内容だ。
鬼神は何千年もの昔から存在している伝説の魔物である。鬼神は幾度も国を滅ぼし、 誰もが恐れる存在となっていた。しかし、 500年前にエルフ族の英雄が鬼神と戦い、 樹海の奥深くにある神殿に鬼神を封印したという。
「……そして現在、 封印が溶かれてしまったと……」
「はい……」
鬼神なんて聞くだけで強い感じが出てるけど、 俺とラムなら問題無しだな……ミーナとヒューゴにはサポートに回ってもらおう。
「ちなみにその鬼神のレベルって分かります? 」
「さぁ……何せ500年もの昔のことですから……私は120年生きてますが、 私の祖父でも鬼神の事はよく知らなかったので……」
そういえばエルフって寿命が人間よりも凄く長いんだよな……どう見ても20代にしか見えないけど……クレウスさん、 120歳なんだ……
それはそうと、 鬼神のレベルが分からないのは少し不安だなぁ……下手すると里まで被害が及ぶかもしれないし……まぁグダグダ考えても仕方ない、 明日その神殿に行って鬼神を倒すしかない。
「……分かりました、 では明日神殿に行って鬼神を倒してきます」
イージスがそう言うとクレウスは驚いた。
「た、 倒すなんて……そんなことができるのですか! ? 」
「まぁ、 強さによりますが……」
「流石はイージス様だ……! 」
「ははっ……じ、 じゃあ話はここまでですかね? 」
「あっはい、 今日は村でゆっくりしていって下さい」
そしてイージス達はクレウスの家を出ていった。
さて……早くエルフ族の女の人達を見に行きたい、 まずは酒場に行こう! !
「皆、 酒場に行くぞ! 」
「え……はい」
イージスは急ぎ足で村の酒場に向かった。
酒場に着くとそこには沢山の美女エルフがいた。
『いらっしゃいませー! 』
うぉぉぉぉーーエルフ女子来たぁぁあぁぁぁーーー! ! !
俺だって男だ、 大好きな美女を目の前にして興奮するなと言う方が無理だ! ! !
するとエルフ達はイージスの周りに集まってきた。
「貴方がイージス様ですか♡」
「初めて会う冒険者様がイージス様だなんて……何て運がいいんでしょう♡」
「はぁぁ……イージス様ぁ♡」
「う、 うぉぉ……実際間近に来ると緊張する……! 」
それを見ているザヴァラム達は
「わ、 私だってイージス様のこと……」
「い、 イージスさん……」
「……羨ましい……」
そしてイージス達は酒場で美女エルフ達と一緒に食事をした。
食事中、 イージスは美女エルフ達に囲まれていた。ついでにザヴァラムも隣に座ってきた。
……な、 何かキャバクラみたいになってる……そしてラムはどうしたんだ……まさか……
するとザヴァラムが
「イージスしゃまぁ……♡」
「っ……! ? 」ピシッ!
イージスの膝に頭を乗せてきたのだ。
……あぁ……完全に酔ってる……でも普段ラムはあまり酒を飲まないはずなのに……もしかしてヤキモチ妬いてしまったのか……?
そしてザヴァラムはイージスの膝に頭を乗せながら言った。
「酷いですよぉ……私だってイージスしゃまのこと大好きなのにぃ……」
ラム……俺のことをそんな風に考えてたなんて……正直嬉しい……
イージスはザヴァラムの頭を撫でた。
「えへへぇ……イージスしゃまぁ♡」
「ブッ……! 」
……かわいい! ! !
その後もザヴァラムはイージスにベタベタだった……
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深夜、 イージス達は里の宿屋に向かっていた。
「あんなイージスさん初めて見ましたよ……」
「ははっ、 まぁずっと前からエルフが大好きだったからな……会えて良かったよ……」
「いいなぁイージスさんは……皆にモテモテで……」
ヒューゴは肩を落としながら言った。
「ヒューゴだって強くなればモテるさ! 」
どうかは知らないけど……
「それとザヴァラムさんは完全に酔ってましたね……」
「あぁ……」
イージスは背負っている眠ったザヴァラムを見ながら言った。
……これを機にラムの気持ちも知れて良かったかもな……確かにエルフは大好きだけど、 俺はラムにそれとは別の特別な感情を抱いている。
いつか……ラムが俺の大切な人に……
するとザヴァラムが
「……イージス様ぁ……ずっと一緒ですよぉ……」
寝言を言いながらイージスを軽く抱きしめた。
……ラム……
イージスはザヴァラムの手を握りながら宿屋へと歩いていった……
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翌日、 イージス達は樹海の神殿へ向かった。
道中、 ザヴァラムが
「……い、 イージス様……私、 昨日……///」
顔を赤くしながらイージスを見て言った。
「あ、 あぁ……気にするなって! 」
「は、 はい……」
気まずい……
イージス達がそんなやり取りをしているとミーナが神殿を見つけた。
次の瞬間、 イージスは異様な気配を感じ取った。
っ……まずい、 これはかなりの強敵……! !
「ミーナ、 ヒューゴ、 俺とラムの側から離れるな……」
「え……はい……」
奴は神殿の奥にいるみたいだが……何だろう、 さっきから気配が動いていない……まさか俺達を待っているのか?
イージス達は神殿の前に来た。
「行くぞ……」
『はい……』
そしてイージス達は神殿の奥へと入っていった。
……気配が近くなっている……ジースさん……
(スキル、 挟域探知が発動します。)
イージスは探知を使った。
……! ? まずい! ! !
探知した反応が猛スピードで近付いていたのだ。
「ラム、 二人を守れ! ! ! 」
「っ! ! 承知致しました! 」
次の瞬間、 何かがイージス達の所に突っ込んできた。地面と激突する轟音と共に、 辺りには大量の砂ぼこりが舞った。
すると砂埃の中からイージスの方に向かって何かが飛んできた。イージスはそれを避けた。
「……来たか、 鬼神……! 」
砂ぼこりが収まるとイージス達の前に鬼神が現れた。
「ほほぅ……今の攻撃を避けたとはな……中々の強者よのう……」
鬼神は肌が薄く赤み掛かっており、 額には二本の長い角が生えている。
……あいつが鬼神……何というか……
イージスは思った……
「えっと……女! ? 」
そう、 鬼神は女だったのだ。
いやいや待て待て、 普通鬼神って言ったらもっとゴリゴリのめちゃくちゃ強面なデカい鬼だと思ったんだけど……女! ?
すると鬼神は怒りだした。
「し、 失礼な、 こう見えても妾は歴とした鬼神なのだぞ! なのに何なのだその反応は! ? 」
「あぁいや……つい……」
「はぁ……もう良い……それより、 お前達は妾を倒しに来たのであろう? 」
あ……そうだった、 危うく目的を忘れるところだった。
「そうだ、 エルフ族の皆が恐れてるしな」
「ならば……」
すると鬼神の気配は激変、 とてつもない威圧感が辺りに満たされた。
それに対してミーナとヒューゴが地面に手を付いた。
「な、 何て威圧感……」
……俺とラムに影響が無い……もしかして……
(スキル、 能力透視が発動します。)
イージスは鬼神のステータスを透視した。
……マジか……レベル357って……強い……けど……俺と守護者達からしたらとんでもない雑魚じゃねぇか! !
鬼神って位だからもしかしたら900以上はあるんじゃないかと期待もしてたのに……
「……はぁ……」
イージスは深くため息をついた。
「ほほぅ、 私の威圧で平気にしていられるとは……」
「もう何かこの世界の伝説とかどうでもよくなってきた……そもそも俺は冒険がしたいのに……こんなに弱い奴等と戦っても何も面白くないじゃん……はぁあ、 本当に残念だ……」
イージスはぶつぶつと呟きながらうなだれている。
「何をぶつぶつと─」
「もういい、 スキル……」
(スキル超威圧が発動します。)
するとイージスから鬼神以上の強烈な威圧感が放たれた。
それを感じた鬼神は
「うっ……な、 何だ……この威圧感……」
体が硬直して動けなくなっている。
「……スキル超強化」
イージスは威圧を更に強化した。
「……ひ……ひぇぇ……ま……参りましたぁ……」
鬼神は遂に尻もちを付き、 泣きながら降伏した。しかしイージスは威圧を弱めない。
「……もう暴れないと誓うか? 」
「ち、 誓います誓います! ! なので命だけは! ! 」
鬼神は深々と土下座した。その体は震えている。
……何か我ながら鬼畜なことをしてるな……こういうのあまり好きじゃないし……そろそろ許してあげよう。もう暴れないって言ってるし……
イージスは威圧を解除した。
「それで、 何で今までずっと暴れてたんだ? 」
「うぅ……実は妾……本当は皆と仲良くしたかっただけだったのだ……」
鬼神は涙を浮かべながら話しだした。
「大昔、 妾が生まれた里では他の種族との友好関係は一切禁じられていたのだ……だが妾はもっと他の種族と仲良くなりたかった……そして妾は里を離れ、 外の世界へと足を踏み入れた……しかし……」
鬼神は自分の服を強く握りながら言った。
「皆妾のことを化け物だの悪魔だの……仲良くどころか差別までされた……その時妾は自分の中で何かが切れたのを感じた……それで……」
なるほど……話すら聞いてもらえなくて、 怒って、 そのまま国までも……普通に考えてみると鬼神って末恐ろしいんだな……
すると鬼神は涙をポロポロと溢しながら言った。
「本当は妾は……皆と仲良くしたかっただけなのだ……なのに……なのに……妾は何てことを……! ! ! 」
鬼神は声を荒げて泣き出してしまった。
……鬼神の気持ち……少し分かる気がする。俺も元いた世界では皆から嫌われていたからな……時に自暴自棄になったこともあったっけ……
イージスは鬼神の元に近寄った。
「そうだったんだな……今まで辛かったんだな……」
そしてイージスは鬼神に手を差し伸べた。
「……へ……? 」
それを見た鬼神は涙で濡れた顔を上げた。
俺にはどうすればいいのかよく分からない……でも、 俺にできることは……これくらい……
「なら俺達が友達になってあげるよ、 エルフ族の人達にも話せばきっと仲良くしてくれる」
「お前達が……友達……妾の……初めての……」
「そう、 俺達が初めての友達だ。なっ、 皆! 」
イージスはザヴァラム達の方を見た。ザヴァラム達は微笑みながら鬼神を見た。
「だからもうそんな辛そうに泣くな……」
すると鬼神は
「う……うぅ……うぇぇええぇぇ~ん……! ! ! 」
泣きながらイージスに抱き付いた。
イージスは優しく鬼神の頭を撫でた。
……結構角痛いな……
続く……