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となりの慈英さん  作者: 芥川先生
8/8

EXTRA2 酒は飲んでも呑まれるな

「イッエ〜イ、飲んでる〜?」

乾杯を済ませた佐久間さんが、首に腕を回して絡んでくる。


どうやら乾杯の前からすでに引っ掛けているようだった。


…頰に彼女の巨乳が当たる。


「佐久間さん…、当たってますよ。」

「バカねぇ、当ててんのよ〜!」


まったく、この大人は…



ちなみに、この花見には怪魔荘のほとんどの住人が参加している。


ほとんど、というのは大神さんを除いて、ということだ。


佐久間さん曰く、

「いくら気が弱いからって、お上を未成年飲酒に立ち会わせたらマズイでしょ〜」

とのことだった。




「ところでさぁ、アタシ達がいない間、あんた達どこまでヤッたの?」

佐久間さんが右手にOKサインを作り、間に人差し指を抜き差ししながら訊いてくる。


酒飲むと、ほんと下品だな、この人は!

…まぁ、そうでなくても大概だけど。


「別に、楽しく話をしただけですよ!」


「だからキミはいつまでも童貞なんだよ。

若いんだから、思い切りも大切さ…

お姉さんで練習してみるか?」


耳元で囁いたのはクルスちゃ…さんだった。


少女に迫られる男子大学生。

見る人が見たら発狂しかねない状況だが、ぼくは彼女の裏を知っている。


「お断りしておきます!」

「なんだ、残念だよ…

今日はとびきり派手なのを仕込んできたのに…」


前回の紐パンよりヤバいのがあるのか⁉︎

愕然としながら、ふと違和感を感じる…



ぼくが少女とこのようなやり取りをしていて、番場が反応しないわけがない…


ところが、大人しくしみじみ一人で飲んでるじゃないか?


病気だろうか? 元から病気みたいなものだが。



………………………………

「なぁ、番場さん。あんた、クルスちゃん…には、その…欲情したりしないの?」


素朴な疑問。

だが、明らかに不快そうな表情をして番場は答えた。


「マジでありえねぇ! あんなババアの血なんか飲んだら死んじまう! テトロドトキシン飲んでるようなもんだからな⁉︎」


そうか、クルスさんの血液はフグ毒だったのか…

鋭い毒を吐くはずだ。



思うが早いか、番場の首にはクルスさんの腕が巻きついていた。


呻く間も無く、番場さんは落ちた。


「番場くん、向こうで話し合おう」


そういってクルスさんは、人気のないところへ番場を引きずっていく。



哀れに思ったぼくは、こっそり覗くことにした。

そこでは…



………………………………………

「さて、番場くん? 私の年齢はいくつかな?」


よく見えないが、割り箸二本を番場の頭に突き刺すようにして、クルスさんが尋ねている…


「あっ…あっ… 12歳と あっ…いうのが あっ…最もあっ…あっ… 一般的で… あっ…」



見てはいけないものを見てしまった気がする…

そっとしておこう。




その後、番場は綺麗なジャイ○ンのような表情で帰って来た。



…………………………………

「ところで少年、こいつをどう思う?」


さらに酒に酔ったクルスさんが、絶壁を手で寄せて谷間を作り、こちらに見せて迫ってくる。


ここは冗談で乗り切るか…


「すごく…大きいで…」


言い終わる前に、ぼくの息子の数ミリ前の地面に割り箸が突き刺さる。


「言葉に気をつけたまえ。 手元が狂うぞ。」


冗談に聞こえない…


「オコサマ…ボディ…」

番場が渾身の力を込めて、自分の意思を表明した、が…


刹那、割り箸が眉間に直撃しまたも意識を失った。


「こんな風になぁ!」

クルスさんがドヤ顔を見せる…

女帝が降臨した。


(慈英さ〜ん、助けて〜)

視界の隅で、慈英さんは小さな寝息を立てて、佐久間さんと絡まるようにして寝ていた。

寝顔も可愛いなぁ…


諦めるしかないのか? いや!

命を、男としての人生をまだ失いたくない!

意を決して、ぼくは言った。


「クルスさんには、クルスさんにしかない魅力があります!

たしかに、身体は佐久間さんや慈英さんと比べると母性的な面で差があるように思われるかもしれません!

しかし、下着を始め、クルスさんの隠された大人の魅力には二人に負けないものがあるかと思います!」


ぼくは強く閉じた目をゆっくりと開いた。

そこには、目を見開く女帝の姿があった。


「ま、まぁいいだろう… 精進するがよい」

道場の師範のようなことを言い、くるりと背を向けた女帝は耳が真っ赤になっていたようにも見えた。



こうして、佐久間(女王)さんとクルス(女帝)さんが暴れに暴れた花見は幕を閉じた…





♡……………………………………………♡

部屋に戻り、製作に没頭するはずが手につかない…


覚醒していく意識の中で、クルスちゃんに、彼女の魅力を熱く語る徳井さんの姿が見えた。


あれって告白なのかな?

徳井さん、クルスちゃんのことが好きなのかな?



ツーっと、頰に涙が流れる。

おかしいな、わたし。

クルスちゃんのことも、徳井さんのことも好きなのに…

徳井さんがクルスちゃんのことを好きなら、大好きな人の大好きな人だから、応援してあげなきゃなのに…


わたし、最低だ…




そこからしばらく、静かな夜が続いた。

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