EXTRA 桜舞い散る中で
桜並木の下、学生2人にはだだっ広く感じるブルーシートに座り、買い出しに出たみんなの帰りを待っていた。
慈英さんと、2人きりで…
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怪魔荘の住人達と親しく(?)なる中で、ぼくや慈英さんを中心に親睦を深めようと花見に誘われていた。
企画者は佐久間さんだったが、ぼくは彼女の瞳の奥に「酒」の字が浮かんでいたのを見逃さなかった……
だが、こうして慈英さんと2人きりで過ごすことができたのは正直ありがたい。
最近は佐久間さんを中心に、怪魔荘の連中に振り回されてばかりで、なかなか慈英さんと話すことができなかったのだ。
…しかし、私服の慈英さんも可愛いなぁ…
薄いピンクのワンピースに、茶色の肩掛けカバン。
カバンの紐が彼女の形のいい胸を…
っといけない。
佐久間さんみたいな思考になってしまっている…
せっかくだ。
何か話さないと…
♡……………………………………♡
久しぶりに徳井さんと2人きりになれた…
話したいことはたくさんあるのに、胸が高鳴ってなかなか言葉が出ない…
引っ込み思案な性格。 わたしの嫌いなところ…
直したいんだけど、難しいなぁ…
今日の徳井さんもカッコいいなぁ。
それに、私のことを気がけてくれているのか、チラチラ見てくれているのが分かる…
やっぱり優しくてステキな人だなぁ…
…徳井さんには、とても感謝している。
あの日の出会いから、徳井さんとの繋がりでたくさんの人と仲良くなれた。
大芦くんに、番場さん。佐久間さんに木吉さん。大神さんにクルスちゃん…
変わった人も多いけど、どの人もとても優しくしてくれる…
徳井さんのおかげで、わたしの世界は広がった。
あのひとりぼっちのコテージから、実家の離れから、木と戯れるしかできなかったわたしの世界は、この人のおかげで広がっていったんだ…
「徳井さん。」
ん?と彼は振り向く。
精一杯の笑顔で、わたしは言った。
「ありがとうございました。」
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突然の彼女の言葉に、何よりその笑顔に困惑した。
春の陽に照らされた彼女の笑顔が眩しくて、目がくらみそうになる…
可愛い過ぎか!
しかし、ありがとうございました、とはなんだろう?
「ねぇ、慈英さん…」
ありがとうございました、の理由を尋ねようとしたとき、ヤツらは帰ってきた。