202号室 ロリコンとバンパイア
「て、てめぇ! 朝はよくも!」
変態が吼える。
変態の頰は綺麗に晴れ上がり、アンパン○ンのようになっている。
「まさか露出狂の変態と同じアパートとは…」
「露出はしてねぇよ⁉︎」
思ったことが口から出てしまった。
変態だってことは否定しないんだな…
頰をさすりながら、男はぶつぶつと文句を言って部屋に戻る。
「何してんだよ? 入れよ。」
あまりの出来事に頭がショートしていたぼくに、男が言う。
この男に対するミジンコ程度の良心が痛み、その言葉に従うことにした。
………………………
男がソファに踏ん反り帰って座っている。
ぼくは、男の言うままに2人分の茶を淹れる。
やっぱり、何か言い訳を考えて帰るか…
(祖母が危篤で、すぐ帰らないと!)
よし、これだな!
「帰れると思うなよ?」
コイツ、エスパーかよ…
「名前、なんだっけ?」
「と、徳井ですけど…」
「徳井くんね… ふ〜ん、なんかふつうの人間って感じだな?」
普通の人間? どういう意味だ?
「オレは、吸血鬼の番場ってんだ。 よろしくな。」
今、コイツなんて言った?
キュウケツキ?
頭の中で緊急会議、もう大パニック。
「ったく、人の食事を邪魔しやがってよぅ…
もうやんなよ!」
置いてきぼりのぼくを無視して、番場は続けた。
「あの…吸血鬼ってことは、人の血を…
その…吸うんですか?」
「吸うよ。 まぁ、別に必要でもないんだけどな」
吸う必要ないんかい!
しかし、初対面のぼくを部屋にあげたということは…
「ひ、ひょっとして…ぼくの血を…」
「はぁ⁉︎ ありえねぇ!」
番場は吐き気を催したような表情でこっちを睨んだ。
「おっさんの血なんか吸えるかよ… オレは、ロリ
の血しか吸わん!」
うわぁ、真性の変態だ…
ぼくは無意識に110番を押す。
「通報、ダメ、ゼッタイ」
番場は、物凄い速さでぼくのスマホを奪った。
「と、とにかく! ぼくの目が黒いうちは、番場さんを犯罪者にはさせませんから!」
怪魔荘から犯罪者が出たとなれば、住人のぼくらがどうなるか分かったものじゃない…
そうなれば、慈英さんがまた居場所を失ってしまう…
そんなことはさせない!
「しゃあねぇな、月1で我慢するか。」
「月1もダメです!」
番場さんは吸血鬼だった。
じゃあ、慈英さんももしかして…
いや、そんなことはないだろう。
そもそも吸血鬼って、馬鹿らしい。
番場の部屋を出て、改めて思う。
変態の戯言は忘れて、挨拶周りを続けよう。
そう、思っていた…