201号室 てめぇらの血は何味だ
都会の真ん中だというのに、澄んだ空気の爽やかな朝だ。
窓から見える木には小鳥がさえずり、太陽の匂いがする暖かい風が吹いている。
隣から夜中響く轟音も、東京の喧騒に比べれば大したことない… こともないが、そう思わなければやっていけない。
寝不足な目をこすりながら大学に行く準備をする。
なんでこんな素晴らしい朝に大学に行かなきゃいかんのだ…
単位が取れないからか… なら仕方ない。
大学までは歩いて15分。
穏やかな太陽の光に、
(もう帰って寝てしまおうか…)
と思っていたぼくの視界に、一気に目が覚めるような光景が映った!
…………………
「ハァ…ハァ… お嬢さん…
オレ、腹が減って仕方ないんだ…」
春の陽気の中、黒いコートに身を包み、
登校中の女子小学生に声をかける頭のあたたかい変態がそこにはいた。
女子小学生は、可哀想に怯えて声も出せないようだ。
「ハァ…ハァ… ちょ、ちょっとだけでいい…
先っちょだけでいいから…
お嬢さんの血を、オレにお〜くれ!」
⁉︎ 血⁉︎
今、血をくれとか言いやがったかコイツ!
わけがわからないことを叫びながら、動けない少女に男が飛びつく。
こんな場面で、あなたならどうするだろうか?
相手は頭のおかしい変態。何を持っているか分からない…
普通なら、少女を助けることを躊躇うだろう。
あなたもそう思うだろう?
だからまずは、その幻想をぶち壊す‼︎
ぼくは渾身の力を込めて、変態の頰目がけて右ストレートを打ち込んだ!
「ブッフォ⁉︎」
変態は、豚のような声をあげて吹き飛んだ…
やっちまったかな?
まぁ、1人の少女を変態の手から救ったんだ…
情状酌量だろう。
小さく会釈して学校に向かう少女と別れ、ノビた変態を尻目に講義に向かう。
今日は本当にいい天気だ。
………………………………
帰宅し、夕食を終えてタオルを持って部屋を出る。
「さて、ぼちぼち始めますか!」
慈英さんにまた会いたい気持ちもあるが、他の住人に挨拶しない訳にもいかない。
作り笑顔の練習をして、端の部屋から挨拶に回る。
チャイムを鳴らし、声をかける。
「すみませ〜ん、昨日ここに越してきました。
徳井です〜。」
作り笑顔で、出来るだけ明るい声で。
ドアが開くと、作り笑顔が引きつった…
ぼくは変態とエンカウントした。