ヒガンバナ
朝、いつもと同じように目が覚める。いつもと同じ風景、いつもと同じ時間。それは見飽きたほどの光景だった。
ため息を一つこぼすとベッドから起き上がり、まず顔を洗いに洗面所まで向かう。部屋は2階で、洗面所は1階にあるので階段をのそりのそりと降りる。
蛇口をひねり、水を掬っては顔を洗う。 秋も大分深まってきたからか、水は刺さるように冷たい。
顔を洗うと、今度は朝食をとる。 朝食はいつもどおり母が作っており、メニューもいつもと変わらない。白米と味噌汁と、それから目玉焼きだ。
もそもそと手をつけ、すぐに平らげる。 そこでふと壁にかかっている時計に目を配る。針は7時半を刺している。いつもどおりだ。
朝食を済ませると、また洗面所に向かい今度は歯を磨く。そして自室に向かい着替える。こうして支度を済ませ、8時前には学校に向かう。いつもと変わらない、いつもどおりの日常だ。それは登校途中も変わらない。朝からジョギングしている人、夜勤明けらしい疲れ切ったサラリーマン、「なんだテメェ」とでも言いたそうにこちらを睨んでくる猫… そのすべてがいつもどおりだった。
学校につく頃には既に8時半前になっている。結構ギリギリだが、これがいつもどおりなのだ。
教室に入るとクラスメイトがまだざわついており、その中に溶け込むようにして席に着く。こういう喧騒の中に居るとまるでここが日常の中のように思えてくる。
時間が来ると先生が来てショートホームルームが始まる。いつもと同じ内容の話を聞くのは何度目になるだろうか… 兎に角その内容は聞き飽きたものとなっていた。
授業もいつもと変わらない事をしているので大分飽きてきた。正直寝ていたい気持ちはあるのだが如何せん目の前で誰かが話をしていると寝られない性分なのでここは虚ろを見て時間を過ごす。
午前の授業を済ませ、昼休みとなる。母が持たせてくれた弁当を開き、冷え切ったおかずやご飯を口に運ぶ。全く、この冷え切った白米はどうにかならないのか。なんてことを考えていた時期もあったが、それももう昔の話だ。
午後の授業に入ると自習が始まる。これが一番暇なのだ。 普通の授業なんかだと先生の話を聞き流す事によって暇を潰す事ができるが、この場合はそれができないので寝るに限る。丁度先生も居ないし回りもある程度は静かだし、何より満腹感が副交感神経のスイッチを入れ、体の底から来るような眠気が耐え難いのだ。
机に突っ伏すように寝て5時間目を過ごし、6時間目は先生の話を聞き流して過ごす。こうして一日が終わるのだ。
家に帰り制服から部屋着に着替える。テレビを見るにしても、ゲームをするにしても同じことの繰り返しだからつまらないし暇つぶしにもならない。仕方なく本を読んで時間を潰すが、部屋にある本だとやはり限界がある。どれもこれも読み飽きてしまった。
そんな事をしていると夕飯の支度が済んだようで、リビングから母が呼んできた。
夕飯のメニューも代わり映えがない。毎回毎回こうも同じメニューが続くとやはり飽きてくるのもだ。(因みにメニューはカレーで、カレーはどちらかというと好きなほうだ)
夕飯を済まし、部屋でごろごろと時間を潰す。課題は… 出されたがやってもやらなくても同じこと。むしろ、やると労力の無駄のような気がしてやる気になれない。
今度は風呂が沸いたと母に呼ばれ、風呂に入る。風呂から出て部屋に戻り、やはり何もせずにごろごろして時間を潰す。ベッドに寝転がって天井を眺める。しかしそこには新しい発見や刺激的な思いつきなんかがあるわけでなく、ただただ呆然としている。窮屈な世界なのかで只自分ひとりがぽつんとしている感覚がしてくる。
ふと、目覚まし時計に目をやる。すると時計は無慈悲にも11時59分を指していた。
まずい、と思った瞬間に0時になる。すると世界が不協和音を奏でるかのようなゆがみを生み、そこで意識が途絶えた。
*****
朝、いつもと同じように目が覚める。いつもと同じ風景、いつもと同じ時間。それは見飽きたほどの光景だった。
ため息を一つこぼすとベッドから起き上がり、まず顔を洗いに洗面所まで向かう。部屋は2階で、洗面所は1階にあるので階段をのそりのそりと降りる。
蛇口をひねり、水を掬っては顔を洗う。 秋も大分深まってきたからか、水は刺さるように冷たい。
顔を洗うと、今度は朝食をとる。 朝食はいつもどおり母が作っており、メニューもいつもと変わらない。白米と味噌汁と、それから目玉焼きだ。
もそもそと手をつけ、すぐに平らげる。 そこでふと壁にかかっている時計に目を配る。針は7時半を刺している。いつもどおりだ。
朝食を済ませると、また洗面所に向かい今度は歯を磨く。そして自室に向かい着替える。こうして支度を済ませ、8時前には学校に向かう。いつもと変わらない、いつもどおりの日常だ。それは登校途中も変わらない。朝からジョギングしている人、夜勤明けらしい疲れ切ったサラリーマン、「なんだテメェ」とでも言いたそうにこちらを睨んでくる猫… そのすべてがいつもどおりだった。
学校につく頃には既に8時半前になっている。結構ギリギリだが、これがいつもどおりなのだ。
教室に入るとクラスメイトがまだざわついており、その中に溶け込むようにして席に着く。こういう喧騒の中に居るとまるでここが日常の中のように思えてくる。
時間が来ると先生が来てショートホームルームが始まる。いつもと同じ内容の話を聞くのは何度目になるだろうか… 兎に角その内容は聞き飽きたものとなっていた。
授業もいつもと変わらない事をしているので大分飽きてきた。正直寝ていたい気持ちはあるのだが如何せん目の前で誰かが話をしていると寝られない性分なのでここは虚ろを見て時間を過ごす。
午前の授業を済ませ、昼休みとなる。母が持たせてくれた弁当を開き、冷え切ったおかずやご飯を口に運ぶ。全く、この冷え切った白米はどうにかならないのか。なんてことを考えていた時期もあったが、それももう昔の話だ。
午後の授業に入ると自習が始まる。これが一番暇なのだ。 普通の授業なんかだと先生の話を聞き流す事によって暇を潰す事ができるが、この場合はそれができないので寝るに限る。丁度先生も居ないし回りもある程度は静かだし、何より満腹感が副交感神経のスイッチを入れ、体の底から来るような眠気が耐え難いのだ。
机に突っ伏すように寝て5時間目を過ごし、6時間目は先生の話を聞き流して過ごす。こうして一日が終わるのだ。
家に帰り制服から部屋着に着替える。テレビを見るにしても、ゲームをするにしても同じことの繰り返しだからつまらないし暇つぶしにもならない。仕方なく本を読んで時間を潰すが、部屋にある本だとやはり限界がある。どれもこれも読み飽きてしまった。
そんな事をしていると夕飯の支度が済んだようで、リビングから母が呼んできた。
夕飯のメニューも代わり映えがない。毎回毎回こうも同じメニューが続くとやはり飽きてくるのもだ。(因みにメニューはカレーで、カレーはどちらかというと好きなほうだ)
夕飯を済まし、部屋でごろごろと時間を潰す。課題は… 出されたがやってもやらなくても同じこと。むしろ、やると労力の無駄のような気がしてやる気になれない。
今度は風呂が沸いたと母に呼ばれ、風呂に入る。風呂から出て部屋に戻り、やはり何もせずにごろごろして時間を潰す。ベッドに寝転がって天井を眺める。しかしそこには新しい発見や刺激的な思いつきなんかがあるわけでなく、ただただ呆然としている。窮屈な世界なのかで只自分ひとりがぽつんとしている感覚がしてくる。
ふと時計を見るとすでに11時58分に差し掛かろうとしていた。
深くため息をつくとモソモソと布団に潜り込み目をつぶる。こうして今日が終わってゆく。
*****
朝、いつもと同じように目が覚める。いつもと同じ風景、いつもと同じ時間。それは見飽きたほどの光景だった。
ため息を一つこぼすとベッドから起き上がり、まず顔を洗いに洗面所まで向かう。部屋は2階で、洗面所は1階にあるので階段をのそりのそりと降りる。
蛇口をひねり、水を掬っては顔を洗う。 秋も大分深まってきたからか、水は刺さるように冷たい。
顔を洗うと、今度は朝食をとる。 朝食はいつもどおり母が作っており、メニューもいつもと変わらない。白米と味噌汁と、それから目玉焼きだ。
もそもそと手をつけ、すぐに平らげる。 そこでふと壁にかかっている時計に目を配る。針は7時半を刺している。いつもどおりだ。
朝食を済ませると、また洗面所に向かい今度は歯を磨く。そして自室に向かい着替える。こうして支度を済ませ、8時前には学校に向かう。いつもと変わらない、いつもどおりの日常だ。それは登校途中も変わらない。朝からジョギングしている人、夜勤明けらしい疲れ切ったサラリーマン、「なんだテメェ」とでも言いたそうにこちらを睨んでくる猫… そのすべてがいつもどおりだった。
学校につく頃には既に8時半前になっている。結構ギリギリだが、これがいつもどおりなのだ。
教室に入るとクラスメイトがまだざわついており、その中に溶け込むようにして席に着く。こういう喧騒の中に居るとまるでここが日常の中のように思えてくる。
時間が来ると先生が来てショートホームルームが始まる。いつもと同じ内容の話を聞くのは何度目になるだろうか… 兎に角その内容は聞き飽きたものとなっていた。
授業もいつもと変わらない事をしているので大分飽きてきた。正直寝ていたい気持ちはあるのだが如何せん目の前で誰かが話をしていると寝られない性分なのでここは虚ろを見て時間を過ごす。
午前の授業を済ませ、昼休みとなる。母が持たせてくれた弁当を開き、冷え切ったおかずやご飯を口に運ぶ。全く、この冷え切った白米はどうにかならないのか。なんてことを考えていた時期もあったが、それももう昔の話だ。
午後の授業に入ると自習が始まる。これが一番暇なのだ。 普通の授業なんかだと先生の話を聞き流す事によって暇を潰す事ができるが、この場合はそれができないので寝るに限る。丁度先生も居ないし回りもある程度は静かだし、何より満腹感が副交感神経のスイッチを入れ、体の底から来るような眠気が耐え難いのだ。
机に突っ伏すように寝て5時間目を過ごし、6時間目は先生の話を聞き流して過ごす。こうして一日が終わるのだ。
家に帰り制服から部屋着に着替える。テレビを見るにしても、ゲームをするにしても同じことの繰り返しだからつまらないし暇つぶしにもならない。仕方なく本を読んで時間を潰すが、部屋にある本だとやはり限界がある。どれもこれも読み飽きてしまった。
そんな事をしていると夕飯の支度が済んだようで、リビングから母が呼んできた。
夕飯のメニューも代わり映えがない。毎回毎回こうも同じメニューが続くとやはり飽きてくるのもだ。(因みにメニューはカレーで、カレーはどちらかというと好きなほうだ)
夕飯を済まし、部屋でごろごろと時間を潰す。課題は… 出されたがやってもやらなくても同じこと。むしろ、やると労力の無駄のような気がしてやる気になれない。
今度は風呂が沸いたと母に呼ばれ、風呂に入る。風呂から出て部屋に戻り、やはり何もせずにごろごろして時間を潰す。ベッドに寝転がって天井を眺める。しかしそこには新しい発見や刺激的な思いつきなんかがあるわけでなく、ただただ呆然としている。窮屈な世界なのかで只自分ひとりがぽつんとしている感覚がしてくる。
ふと、目覚まし時計に目をやる。すると時計は無慈悲にも11時59分を指していた。
まずい、と思った瞬間に0時になる。すると世界が不協和音を奏でるかのようなゆがみを生み、そこで意識が途絶えた。
*****
朝、いつもと同じように目が覚める。いつもと同じ風景、いつもと同じ時間。それは見飽きたほどの光景だった。
ため息を一つこぼすとベッドから起き上がり、まず顔を洗いに洗面所まで向かう。部屋は2階で、洗面所は1階にあるので階段をのそりのそりと降りる。
蛇口をひねり、水を掬っては顔を洗う。 秋も大分深まってきたからか、水は刺さるように冷たい。
顔を洗うと、今度は朝食をとる。 朝食はいつもどおり母が作っており、メニューもいつもと変わらない。白米と味噌汁と、それから目玉焼きだ。
もそもそと手をつけ、すぐに平らげる。 そこでふと壁にかかっている時計に目を配る。針は7時半を刺している。いつもどおりだ。
朝食を済ませると、また洗面所に向かい今度は歯を磨く。そして自室に向かい着替える。こうして支度を済ませ、8時前には学校に向かう。いつもと変わらない、いつもどおりの日常だ。それは登校途中も変わらない。朝からジョギングしている人、夜勤明けらしい疲れ切ったサラリーマン、「なんだテメェ」とでも言いたそうにこちらを睨んでくる猫… そのすべてがいつもどおりだった。
学校につく頃には既に8時半前になっている。結構ギリギリだが、これがいつもどおりなのだ。
教室に入るとクラスメイトがまだざわついており、その中に溶け込むようにして席に着く。こういう喧騒の中に居るとまるでここが日常の中のように思えてくる。
時間が来ると先生が来てショートホームルームが始まる。いつもと同じ内容の話を聞くのは何度目になるだろうか… 兎に角その内容は聞き飽きたものとなっていた。
授業もいつもと変わらない事をしているので大分飽きてきた。正直寝ていたい気持ちはあるのだが如何せん目の前で誰かが話をしていると寝られない性分なのでここは虚ろを見て時間を過ごす。
午前の授業を済ませ、昼休みとなる。母が持たせてくれた弁当を開き、冷え切ったおかずやご飯を口に運ぶ。全く、この冷え切った白米はどうにかならないのか。なんてことを考えていた時期もあったが、それももう昔の話だ。
午後の授業に入ると自習が始まる。これが一番暇なのだ。 普通の授業なんかだと先生の話を聞き流す事によって暇を潰す事ができるが、この場合はそれができないので寝るに限る。丁度先生も居ないし回りもある程度は静かだし、何より満腹感が副交感神経のスイッチを入れ、体の底から来るような眠気が耐え難いのだ。
机に突っ伏すように寝て5時間目を過ごし、6時間目は先生の話を聞き流して過ごす。こうして一日が終わるのだ。
家に帰り制服から部屋着に着替える。テレビを見るにしても、ゲームをするにしても同じことの繰り返しだからつまらないし暇つぶしにもならない。仕方なく本を読んで時間を潰すが、部屋にある本だとやはり限界がある。どれもこれも読み飽きてしまった。
そんな事をしていると夕飯の支度が済んだようで、リビングから母が呼んできた。
夕飯のメニューも代わり映えがない。毎回毎回こうも同じメニューが続くとやはり飽きてくるのもだ。(因みにメニューはカレーで、カレーはどちらかというと好きなほうだ)
夕飯を済まし、部屋でごろごろと時間を潰す。課題は… 出されたがやってもやらなくても同じこと。むしろ、やると労力の無駄のような気がしてやる気になれない。
今度は風呂が沸いたと母に呼ばれ、風呂に入る。風呂から出て部屋に戻り、やはり何もせずにごろごろして時間を潰す。ベッドに寝転がって天井を眺める。しかしそこには新しい発見や刺激的な思いつきなんかがあるわけでなく、ただただ呆然としている。窮屈な世界なのかで只自分ひとりがぽつんとしている感覚がしてくる。
さて、ここで今、自分が置かれている状況を整理してみよう。
今、俺は“日常”を繰り返している。
それは簡単に言うと、「ある一定の時間からまたある一定の時間まで」が繋がれたテープのように繰り返されているのだ。
因みに、「記憶」はどんどん「追加」されていくようだが、「記録」は日付が変わると同時に「リセット」されるようだ。つまり、いくら課題をやろうがゲームのストーリーを進めようが、日付が変わると無かった事にされてしまう。
面白い事に、無理に日付をまたごうとすると世界が歪んだようになり、そこで意識が途絶えるのだ。(名状し難い現象なので、こう説明するほか無い)さらに、「リセット」は自分が居なくとも、つまり自分が死のうと繰り返されるのだ。一度学校の屋上から飛び降りた事もあったが、気がつくとベッドで寝ていたのだ。しかも飛び降りて地面に激突するまでの記憶付きで、だ。
一体誰が、何の為に… なんて考えた事もあったが、それも当の昔――具体的には10万とんで135回前の話だ。因みに今は11万と1158回目の夜だ。 …我ながらこういうことを一々数えているのはどうかと思うが、コレくらいしかもうやることが残っていないのだ。
ふと、目覚まし時計に目をやる。すると時計はもう既に11時59分を指していた。
こうして、自分の“日常”は終わり、“日常”はが始まるのである。