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ミフネは制御室から一ノ街前に転移した。
街に入る前に尾を1本にして服装を通常のミフネに変えた。さすがに耳と尾の色が違うとはいえ九尾の装備のままで街に入ると私に出会った40人にばれてしまう可能性があるからな。ただ、あまりにもヒントが少なすぎるのもあれなので戦闘で使った狐のお面を腰にぶら下げた。
「尻尾もあまり動かしすぎないように注意しないとな」
本来、獣人の耳と尾は感情によって動くように設定しているため九尾のように自分の意志で動かすことはできない。あまり動かしすぎると怪しまれてしまうのだ。
すべての確認が終了し街に入った。
街はお祭り騒ぎだった。モンスター襲撃が始まる前の緊張感はなく皆祭を楽しんでいた。
ミフネはミフネで近くの屋台で串焼きと団子もどきを大量に購入した。
のんびり串焼きを食べながら街を歩いていると
シン:今酒場で飲んでんだがこねぇか?
シンからの誘いのチャットが来た。そこで自分がシン達を探していたことを思い出した。
ミフネ:どこの酒場にいるんだ?
シン:この前のカフェテラスあるだろ?あそこの近くだ
ミフネ:わかった。今から行く
この前のカフェテラスというと北門の近くか。この混み具合だと時間がかかるな面倒だが屋根の上を走っていくか。
ミフネは人気のない路地の裏でジャンプすると屋根の上まで飛んだ。
「数値がバグっていたのでまさかとは思ったがここまでとはな」
このまま屋根を走ると顔がばれてしまうので、腰につけていた狐のお面をつけて走ることにした。
試しに全力でシン達の酒場に向かってみた結果1分程度で着いた。
ミフネは屋根から裏側に降り仮面を外した。
「もう笑うしかないな....絶対アリンに怒られる」
ミフネは自分の持つ権限でアリンにばれないように証拠隠滅をした。
予定より早くついてしまったが仕方ないのでミフネは酒場に入った。酒場には30人ほどのプレイヤーがいた。未成年もいるのか大人たちから少し離れたテーブルでジュースを飲んでいた。
大人たちの数人が酔っているのか噛み合ってない会話が聞こえる。
「先輩ですか?もう来たんですね」
ユウキが話しかけてきた。
「近くにいたからな」
本当は全然近くに居なかったのだが余計なことを言うと実は問題があったことがアリンにばれる恐れがあるので言えなかった。
「獣人になってたので一瞬人違いかと思いましたよ」
「なかなかいいだろ?」
「なんで狐なんですか...」
ユウキが苦笑いしながらなんで俺たちの負けた獣人で来るんですかと言った。
そのユウキ達と戦った本人が来てるのには気づいていないようだった。
「そんなことより、私を呼んだシンは何処だ?」
周りを見渡してもシンの姿がなかった。
「シンさんならそこにいますよ」
ユウキがテーブルの方を指差した。そこには誰も座っていなかったが下の方を見るとシン達が倒れていた。
近づいてみると
「何故すでに酔いつぶれているんだ....」
シンがミフネを呼んでまだ10分もたっていないはずなのだがユウキによるとケンジ達と飲み勝負をしたらしい。ゲームだから飲めると思って勢いよく飲んだ結果倒れたそうだ。このゲームは設定次第で酒を飲むと酔うのだが、その酔い具合現実の本人と同じなのだ。シン達は何を思ったのかアルコール度数70%を超えている酒を一気飲みしたらしい。
「これ大丈夫なんですか?」
ユウキがシンを見ながら質問してきたので、ログアウトすれば現実世界では問題ないと伝えた。この世界で直す方法は回復魔法で酔いの状態異常を回復させればいいと伝えた。
「私は回復魔法を持っていないからユウキ頼んだぞ」
「わかりました。【キュア】」
「「「「....」」」」
倒れていたシン達が体を起こし周りをきょろきょろ見渡していた。
「なんで俺たち寝てるんだ?」
「さあ」
「どうですか?酔いは治りました?」
「ああ、なんか頭がすっきりしてる」
シン達は自分たちがなんで倒れたのかを思い出しようで少し恥ずかしそうにすぐ立ち上がった。
「というかユウキ、どうやって直したんだ?」
倒れるほど酔っていたのに一瞬で治ったのを疑問に思ったケンジがユウキに聞いた。ユウキは回復魔法で酔いを治せることを教えた。本来酔いを治すための魔法ではないのだが誰かが酒の一気飲みするだろうなと思って追加しておいたのだ。
「あれ?あんた誰だ?」
「ケンジさん先輩と会うの初めてでしたっけ」
ケンジがやっとミフネの存在に気付いた。
「私は此奴に呼ばれてきた。名前はミフネだ」
シンの方を指差してミフネは挨拶した。
「ミフネか俺はケンジだ。よろしく」
「貴方がケンジかシンから話は聞いている。よろしく」
ケンジのことはよく知っているが下手なことは言わない方がいいだろう。ケンジと話しているとケンジのPTメンバーがこちらに気付いたのか近づいてきた。
「ケンジーその人誰?」
ケンジのPTの1人はケンジに聞いた。
「此奴は、ミフネだ。シンのPTメンバーだな」
「あれ?シンさんのPTにこんな人いたっけ?」
一応ケンジのPTメンバーは知っているのだがミフネの姿で会うのは初めてなのでケンジに紹介してもらった。
「こいつらは俺のPTメンバーだ。」
「シンのPTにたまに入っているミフネだ、よろしく」
「私はエイラです。私は魔法使いやってます」
「俺は原人だ。剣士をやっている。」
「ファオです。自分は細剣士やってます。よろしく」
「私はミキ。このPTの回復担当です」
戦闘時は知らなかったがミキというプレイヤーもケンジのPTメンバーだったのか。ランキング1位が2人もいるPTか。正式サービスもプレイしてくれるのであればイベントが盛り上がりそうだな。正式サービスもプレイするのか気になったので聞いてみると、
「やりますよ!イベントは勝利しましたけど私たちボスを倒せませんでしたから」
エイラはやる気のようだった。他のメンバーも負けたのが悔しかったのかもう1度戦うためにプレイを続けるらしい。まあミフネからするとプレイヤーが続ける気があるのはうれしいことだ。続けることが分かったので正式サービスで一緒に連絡をとれるようにとケンジのPTメンバーとフレンド登録した。
「ミフネさんに聞きたいんですけど、シンさんのPTに入ってるってことは強いんですか?」
唐突にエイラが聞いてきたので、ミフネはPTの中で1番弱いよと笑いながら答えた。シンとユウキは苦笑いしていた。ケンジは違和感に気付いたようだが何も言わなかった。
「もう現実では22時か。そろそろ落ちる」
「あ、私もー」
ケンジ達は明日用事があるようで正式サービスでまた会おうと言ってログアウトしていった。
「てかなんで1番弱いなんて嘘言った」
「そうですよ。先輩が弱いなんて冗談でしょう...」
「あの状況でシンより強いなんて言ったら面倒なことになるだろう」
「だが、正式サービスで一緒に戦う時にどうせばれるんだぞ」
「その時はお前たち主人公の陰に隠れてこそこそするさ」
「俺たちが主人公ですか?」
私は神や悪役にはなれてもシン達と同じ主人公にはなれない。私はこの世界の出来事をすべて知っている。自分で作ったのだから知っているのは当然なのだがそのため私は自分でこの世界の物語を進める気はない。そういうとユウキが、
「なら先輩は正式サービス開始してからはどうするんですか?」
「私は生産職でもしながらのんびりこの世界を楽しむさ」
「ミフネが生産職とかありえないだろ。絶対裏でやばいの倒しに行ってる」
裏モンスターか、そのまフィールドにいると問題になりそうだな。秘境に隠しダンジョンでも置いてそこのモンスターを裏モンスターにするか。
「いいヒントになった」
「まさか本当にやばいやつを実装するんですか」
「それは正式サービスのお楽しみだ」
「どうせ作るなら今回の九尾も再戦したいぜ」
「最後に何かしようとしてましたもんね」
「ほお、戦闘終了後にへたり込んでいたくせによく言うな」
「見てたのか。いや違うな、あの九尾お前か」
シンはどうやら気づいたようだ。理由を聞くと最初の違和感はイベントに来ないと言ったときだったそうだ。ミフネの好きそうなイベントだったのに参加しないと言ったその時の表情が悔しそうではなかった。そしてボス戦でHPが半分を切った時ミフネの口調に戻り、明らかにサクラちゃんを狙う必要がないタイミングで弱い魔法が飛んで行った。
「半信半疑だったが今のお前の顔を見る限り当たっているようだな」
「確かにあの九尾は私だ。正しくは今もそうだが」
ミフネは尾をくねくね動かしてみせた。
「どうする?今から再戦するか?」
シンは少し考えるとミフネの申し出を断った。理由は自分だけ再戦しても意味がないそうだ。
「残念だ。あのときの九尾より今の方が強いから試してみたかったんだがな」
「あれより強いってそれ勝てるんですか...」
「さあな今はステータスがバグっているから恐らく勝てんだろうな」
「バグっておい。そんな状況でよく再戦するかなんて聞いたな」
急に酒場の入り口の方が騒がしくなった。なんでも仮面をつけた女性がかなり怒りながら入って来たらしい。ミフネは嫌な予感がした。ミフネが柱の陰からチラッと覗くと入り口にサクラ、マイ、ハルキが1人の女性と会話していた。ミフネは女性を確認するとシンの方へ向いて、
「やばい、あれはアリンだ...バグを放置したのがばれたなこれは」
「なんでこんな急に来たんですか?」
思い当たることと言えば「今はステータスがバグっているから」これくらいだろうか。思い出しているとサクラからチャットが飛んできた。
サクラ:酒場の入り口に来て
アリンのやつサクラを使って私を呼ぶ気か。
「よし、逃げよう」
メニューを開きログアウトボタンを押そうとした瞬間アラームが鳴った。
「そこですか」
入り口の方を見ていたプレイヤーが一斉にミフネのいるテーブルを見た。ミフネは一瞬でシンの後ろに隠れ腰につけていた狐の仮面をつけた。シンの後ろに隠れたおかげで音の発生源がシンだと思っている内にミフネは今の全力で入り口に向かって走った。アリンの横を過ぎようとした瞬間ミフネは左腕を掴まれた。ミフネは顔が青くなりながらゆっくり振り向いた。
「捕まえましたよ」
さすがに管理AI相手じゃあ横を素通りさせてもらえなかった。
「今度は何したの?アリンさんかなり怒ってるよ」
サクラの言葉にミフネは顔をそらした。
「この方はまた私に嘘をついたんですよ。今回ばかりは許しません」
「いや、それには事情が....」
「嘘ですね。どうせ面倒くさかっただけでしょう」
ミフネはビクッと反応した。
「これは何らかの罰が必要なようですね。まあそれはあとでシオン達と話し合います」
ミフネはアリンに腕を掴まれたまま引っ張られていった。
これにてβテスト編終了です。次回からやっと正式サービス開始です




