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逸材の生命  作者: 郁祈
第六章 偽りの因果編
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影は見ていた

 夕方にもなり窓から見れば学生たちがチラホラ帰宅している様子が目に入る。

 俺は早退という形で学園から帰宅しているので既に家だ。

 現在家には昔の師である美月、そしてアメリカから預かっているリアの二人。リアについては命も結構好いているので問題なく俺の家に住まわせているが、美月はどうなるのか。

 リアはあくまで年下だからいいとしても美月は同い年くらいだからな・・・。俺は命が帰ってくるのを少し恐怖に思いながら窓から外を眺めている。


 「フフ、そんなに怖い方なの?東雲・・・さん?って」


 俺のベッドに座り込んでいる美月は興味津々かのように不敵にそう言う。


 「いや、そうで・・・怖いか。悪い奴じゃないんだけどまあアレだよな。普通の女の子だよ」


 「どうかしらね。そもそも生。貴方が女の子という存在をよく理解していないように見えるけど」


 「・・・・だろうな」


 生活してきた環境にはそう言った考えは必要なかった。だから俺は女は愚か人との接し方に少し困るところが多々見られている。

 だが、いずれはまともにしないと社会に出たときに困ってしまう。命やリア、御神槌や楠に棗・・・身内と話すのは抵抗がない。これから先に出会う人とはきっと俺はまともに会話することはできないんだろうな。


 そう思うと以前会長に勧められた生徒会への入会。それはやはり向いていないのではないかと思ってきてしまう。

 あの答えは今だに見つけていない。年が変わる前には答えを出すべきなのだと考えているが俺にその決心がつく余裕はなかった。


 「どうしたの・・・震えているわよ」


 色々な葛藤で震えている俺を美月は後ろから優しく抱きしめてきた。


 「....」


 「生、貴方はひとりで抱え込み過ぎなのよ。今の貴方には多くの仲間がいる。過去の自分は捨てたのでしょ?それを私に示した。その貴方はどこに行ったのかしら」


 仲間は必要。どんなことがあっても友はいなくてはならない。それを俺は美月に示し、勝ったんだ。


 「でもね生。貴方の闘い方は酷くいびつよ」


 歪んでいる・・・それが俺の戦闘スタイル。元々一人で生きてきた俺だったが故に心では人を・・・仲間を欲していても表にでる戦闘スタイルなどは個人で行うものが多い。

 現に極限の極致パーフェクトリミット、それは周りの声を遮断するかのような集中力を見出すがゆえに他の人物と連携をとることはできやしない。

 つまりは俺の闘い方は矛盾しているのだ。友を欲しても一人で抱え込む。それが俺なのだ。


 「歪・・・か」


 流石は俺の師匠だな。お見通しってわけか。

 ギュッと美月の力が強くなる。


 ──ドサ、


 突然にそんな音がドアの方から聞こえる。


 「・・・・ッ」


 忘れてたぜ。


 「しょ、生・・・?その方は・・・・??」


 動揺しているのか命は口を大きく開けて美月を指差しそう言った。

 美月は動じることなく俺から離れてトンとベッドから飛び降りる。


 「あら、私は神無木美月かんなぎみづき、生の・・・師匠ってところかしらね」


 意地悪っぽくこちらをみて美月は自己紹介を済ませた。


 「か、神無木さん・・・師匠・・・えっ・・・」


 突然に色々降りかかって命は混乱しているようだ。


 「お、落ち着け命・・・」


 俺は命をフォローしようかと思ったが、


 ボォッっと命の髪の毛を結んでいるリボンがほどけ髪色が赤色に変わる。瞳の色も赤色に染まり完全にようを引き出した。


 「あら、逸材者・・・」


 美月は意外そうな顔をしている。だが、落ち着いていた。


 「フフフフッフ」


 影の力を完全に引き出した命は何やら闇に満ちた感じの笑い声を上げている。


 「ねえ生、さっき神無木と抱きしめられてたように見えたんだけど・・・・どうしてか、な?」


 笑顔だった。命は笑顔で質問をしてきた。ただ、その顔は笑顔でも笑っているようには見えない。

 

 (──影は見ていたってか)


 俺は心の中でそう自分に言い聞かせる。


 「生は私の物。私と付き合っているのよ。貴方みたいな部外者は消え去ってちょうだい」


 「酷い言いようね。怖いったらありゃしない。ねえ生。どうにかしてよ」


 「悪いが俺にはできないな。ハッキリ言って怖い」


 冗談じみた返しを俺は美月にやった。


 「なまじ感情を覚えた貴方は言うこと聞かないのね」


 やれやれと美月はため息をつく。


 「なんにしてもだ。これは美月、アンタのやった行いが招いたことだろうよ。アンタが処理してくれ・・・壊さないように」


 「だが断る」


 某漫画家のようにキッパリと断られてしまった。


 「お前な・・・」


 「あら、何か問題でも?」


 「二人でイチャイチャ・・・羨ましい・・・・ああ、羨ましい」


 おいおいどんどん命が闇に堕ちているじゃねえか。


 「アンタのせいだからな」


 俺は大きなため息をついて命の方に歩き始める。


 「1%くらい生の責任よね」


 「99%美月じゃねえか....」


 ──女を理解していないか。確かにあったかもな。俺はここしばらく命と過ごす時間が短かった。

 ゆえに俺が命に対して愛想が尽きていると思わせていたのかもしれない。命の心の中では焦りが生じ影を使って闇に向かった。


 (俺の不手際とわいえ、まさかここまで狂気に満ち溢れるとはね)


 俺のイメージする命はあまり起こることをしないとてもカワイイ彼女だと認識していた。

 だが、そのイメージもかけ離れ今の命は怖いって感想しかない。


 「美月・・・それからリア、そこにいるんだろ?」


 ベッドの隙間に隠れて見ているリアを見てそう言う。


 「悪いけど目を瞑るかそこの窓から飛び降りてくれないかな」


 「兄様!?」


 「究極の二択ね・・・」


 悩むところなのかそこは・・・。


 「簡単に聞こう。目と窓....どっちがいい?」


 「むしろ怖くなった!?」


 リアは元気にツッコミを入れてくれる。


 「やれやれね。それじゃリアちゃん?目を瞑りましょうか・・・飛び降りてもいいけど」


 「兄様~この人なんか怖いです」


 そういい二人は目を瞑ってくれた。


 「さて、環境は整ったか」


 別段見られて困ることをするわけでない。だが、何となくなのだ。


 ──シュッ....


 一瞬で命の目の前に立つ。あの距離なら力を入れずとも高速で動くことは容易だ。


 「しょ──」


 命が俺の名前を言おうとした瞬間、


 俺は命の口にそっとくちずけをした。


 何秒くらいだっただろうか。1分くらいだな。それくらいしてようやく命の口から離れる。

 そして俺はそのまま命の頭を撫でてこう言った。


 「悪いな。最近構ってやれなくて。だが知っていてくれ。俺はどんなことがあってもお前が好きだ。それは変わらない。例えお前がどんなに醜くなろうと俺の気持ちは変わらない」


 そうだ。変わらない。俺にとっての幼馴染であり俺の好きだと確信しているただひとりの存在。命は俺にとって特別なのだ。


 「生.....」


 フッと命の瞳と髪の色が元に戻る。


 「ゴメンなさい・・・私ったら・・・・」


 「いいさ。俺も悪かった」


 誤っているがどこかお互い気まずい感じの空気が漂っていた。

 それはさっきのくちづけなのか。どことなく俺と命は意識をしているのかもしれない。

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