師の感
「ん・・・ここは・・・」
「起きたか」
俺はあれから美月を家に連れて帰って寝かせていた。一応師匠だし、女の子をみすみす放置にはできなかったしな。
「しょ、生・・・・ッ」
美月はバッと布団から離れ後ろに後ずさる。
「安心しろ。ここは俺の家で俺の部屋だ」
「生の・・・?」
キョロキョロと辺りを見渡している。
「て、てことはこれは・・・生の・・・」
手に持っている掛け布団を見て美月の顔は赤くなっていく。
「そうだが問題あったか?」
「い、いやそうじゃなくて・・・」
何かを言いたそうにしていたがよくわからなかった。
「・・・ねえどうして私を殺さないの」
急に真面目な美月に戻り声も緊張がある形で美月はそういった。
「どうもこうも俺に人を殺める権利はない。この世は人を殺しただけで罪人だ。俺は平穏に過ごしたい。それと相反する行為はもうしないんだ」
「・・・優しいのね貴方は」
「優しくなんかない。俺は誰よりも冷たく、厳しい人だよ」
「嘘ね。貴方は優しくなったわ。昔の生はとっくにいなくなっている。この部屋を見ても分かるの」
「・・・根拠は?」
「フフ、師匠の感です」
美月は可愛らしく手を口に当ててそう言った。
こういう時だけ女ぶるのは反則ってものだろうな。
「なあ美月」
「なに?」
「あーその・・・南の方にいる逸材者のアンドレア?だっけ。彼奴は」
「気にしなくていいわ。それはこっちの方で対処することにするから」
「いいのか?」
「ええ。本当は貴方を殺して禁忌の存在を消しておきたいんだけど、そもそも貴方は殺すことをしない以上大丈夫って気づいたの」
アンドレアは相手の逸材を盗むことができる。それ故に美月は俺の存在を消してこの世から「禁忌」の技を闇に消そうと企んでいた。
だが、俺に勝つことはできず美月は諦めてくれたようだ。
「こっちとしては殺さないでくれるのはありがたいが、それは大丈夫なのか?」
「ええ。アンドレアはまだ禁忌のことを知っていないわ。だから大丈夫。私はこれから先のことを思って行動していただけだし」
遠くを見るかのように外を眺め美月はそう言った。
「兄様たち雰囲気いいですね」
どことなく声が聞こえた。
どこかなと思い下を見るとそこにはリアがちょこんと座っているのが分かった。
「リア・・・」
「きゃ、だ、誰」
「美月、こいつはリアって言って俺の家族みたいなものだ」
俺がリアに挨拶しろと視線を送るとリアは
「リア・ルノアベルですッ、兄様のことが大好きなかわいい美少女」
指を目に当ててピースをしながらキラッとポーズを取りながら自己紹介を始めた。
「・・・・・」
美月はポカーンと口を大きく開けていた。
どこからつっこんでいいのかわからないって感じだなこりゃ。
「美月・・・悪いが気にするな。悪い奴じゃないから」
「兄様気にするな・・・なんてひどい」
隣でリアが一人芝居を始めていたがそれは無視だ。
「っと、美月も起きたし・・・お前泊まる所とかあるのか?」
ふと疑問に思っていたことを口に出す。
「えっ、そう言えば決めてないわ・・・」
ヤバとばかりに美月は額から汗がにじみ出てくる。
「ね、ねえ生・・・」
「ん?」
「部屋って空いてるかしら?」
その言葉に俺は何かを察した。
空いてるけどここで肯定したら何か面倒なことになる気がする。
「いや空いてな・・・」
そう言いかけた時だ。
「空いてるよね兄様?」
ヒョコッとリアが顔をだしてそう言ったのだ。
「ちょ、おま」
「・・・・?」
俺は心の中でアチャーと思いながら美月の方を見る。
「本当!?空いてるのね。じゃあ悪いんだけど今日だけいいから泊めてくれないかしら」
手を合わせてお願いされる。
ここまで来ると断るのも無理なもので俺はOKしてしまった。
時刻は4時、そろそろ命もウチにやってくる時間。さあ、どうなることやら・・・




