復讐の「エピローグ」
──魔王の逸材者との闘いから一週間が経った。
アレから環境は色々と変わった気がする。まず、学園では大した騒ぎになりやしなかったけど、色々壊れたものとかが多くて俺たちはしばらくの間、学園でこき使われていた。
会長は相変わらず生徒会長として日々、この恋桜学園の変化について頑張っているようだった。たまに生徒会室に顔をだしに行くと愛桜先輩が歓迎してくれる。
でもこの二人はあと数ヶ月で卒業をしてしまう。この二人について進路とかに対して話を聞かないから大丈夫なのかなと思うけど、会長の性格から考えれば大丈夫かと俺は感じている。
魔王の逸材者である織田 樹とアンジェリカ・ホームズ。この二人はどうなったかは知らない。でも会長は「樹の命は助かっている」と聞いていた。だからきっとどこかでまた俺を恨んでいつの日か襲いに来るんじゃないかと思っているが、それはそれでいいのかもしれない。
伊吹も退院したらしく緋鍵高校で元気にしているようだ。
「平和になったな」
夕焼けが見える中、俺は屋上でそうつぶやく。
この秋の季節、アメリカにいったりと色々あった。でも今思えばそれは全てよき思い出になっている。
俺はそう思っていると後ろからある人が近づいてきた。
「会長・・・」
その人物は会長だった。
「どうかしたんですか?」
「・・・・いや」
会長の顔は夕焼けでよく見えなかったが、どこか考え事をしている顔をしているように見えた。
「お前と出会ってもう半年、それまでに色々あったと思っていたところだ」
「そうですね・・・」
学園の裏でMr.Kが動いていた、それを止めたり、アメリカに行き逸材者を倒したり・・・今回のように恨みに駆られた逸材者と闘ったりとここ最近は色々ありすぎた。
無の部屋にいた頃はそんなことはまるでなかったのにいざ外に出てみればこうなのだ。
「俺はあと少しでこの学園を去る。卒業だ」
「そう、ですね・・・会長は進路とかどうなんですか?」
疑問に思っていたことを俺は聞いてみる。
「進路、か。そうだなお前には言っておくか」
会長はいつものようにメガネをクイッと上げてそう言う。
「俺は"この学園"・・・学園長を引き継ぐ」
その言葉は予測もしていなかった。会長の才能をもってすれば普通に安定した職とか大学に行くかと思っていた。
だが、会長はこの恋桜学園の学園長を継ぐと言ったのだ。
「この学園を日頃から変えたいと思っいたんだ。それには会長では足りない。そう思った・・・だから俺は必死でこの半年間考えていた、その答えがこれだ」
会長の眼差しは真剣そのものだった。一切の迷いのない瞳。会長の決意は本物だと俺はそう感じ取った。
「引き継ぐですか」
「悪いか?」
「いえ別に」
迷いがあるのなら別段だけど会長は真っ直ぐ前を向いて決断したことだ。俺から言えることなんてありやしない。
「それでだ境川」
自分のことを言い終えると会長はそう話をふりだしてきた。
「俺は知ってのとおり今年で学園を卒業する。故に生徒会は愛桜も抜けものの抜け殻となってしまう。そこで、境川──」
会長は少し間を空け、
「生徒会に入らないか?お前の頭脳をもってすればいい話だと思うのだが」
「生徒会ですか・・・・」
正直そんな予感はしていた。会長は卒業をしてしまう。それは生徒会長がいなくなるという意味。だが会長が他のメンバーを選ぶ際に候補として俺を入れるのは確信が得ていた。
少なからず会長には俺の実力が見られている。だから会長は俺にそんなことを言ったのだ。
もちろん普通に考えれば推薦で生徒会に入れる、それは光栄なことで引き受けることはするだろう。だが、俺は平穏に生きたい。生徒会に入ったら絶対厄介事に巻き込まれる。そう思った。
「なぜ俺なんですか?」
だからか俺はそう聞き返してしまった。
「・・・・ふむ」
会長は少しだけ考え、
「優秀だと判断したからだ。入学時のテストの点数、そしてこれまでの闘いにおいての機転・・・それら全てを踏まえお前なら相応しいと判断したのだ。これは愛桜も同じ意見だ」
「俺が逸材者だからというところは大きいと思います。だったら命や御神槌をオススメしますよ」
「あくまでお前は光になるつもりはないというわけか」
そうだ。俺は決して目立つ行為はしない。これ以上目立ってしまってはまた何か起きてしまう。だからこれ以上目立つわけにはいかないんだ。
「なら、一応他に声はかけてみるか・・・境川、気が変わったらいつでも来い。俺は待っている」
会長はそう言って立ち去ってしまった。
生徒会に入る、か。もうそんな時期なんだな。一年なんてあっという間だ。気がつけば俺だって卒業の時期になるのだろうか。
復讐の闘いが終わり平和に戻ったこの人生。これから待つのは平穏なのかそれとも再び運命は闘いに戻るのか・・・。
秋の季節も終わりに差し掛かり冬が近づいてきているこの頃、その先に何があろうと俺はただ生きるだけだ。




