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逸材の生命  作者: 郁祈
第五章 復讐の魔王編
86/130

戦いは最後の五分間にある。【その弐】

 ──緊迫した状況、広い生徒会室で境川はただ一人座っている。

 意識があるのかは定かではない。たが、樹は座っている境川から何かを感じ取った。


 (・・・樹が一瞬止まった・・・彼は生きているのね)


 アンジェリカはすぐさま状況を把握する。境川が樹による猛攻に耐えていることを。そしてこの生徒会室で行われる相手側の策を。


 「イツキ、今は境川だけに集中しなさい。まずは相手の出方をみる。私の推理と間違っていたら厄介だから」


 腐っても相手は逸材者。それも底辺でなく上級の。いくらアンジェリカでも境川や樹と言った頭脳に適した相手だと推理に確証が持てていない。

 だが、たった数秒で状況を把握できるその力は間違いなく洗練された逸材であることに違いはない。


 「私はお前を信用している。だからお前の言うことは聞こう・・・それに境川にしか私は興味ない」


 樹の目的はあくまで境川を殺すこと。それに障害となる人物だけを始末するだけ。だから命や会長、愛桜たちには興味がないみたいだ。


 「・・・ああ。だけどルノアベル、奴には興味があるぞ」


 リア、それだけ樹は興味を示した。実力が認められたのか、はたまた別の何かを感じたのか。それはアンジェリカにも分からないことだった。

 樹と同じくして刀を武器として戦うところに惹かれたみて間違いはないはず。脆い武器を使用したというのにも関わらず、樹といい線の勝負をしたのだ。ましてや犯罪者というカテゴリーに入る彼女は惹かれるところが多すぎたのだろう。

 

 「彼女・・・ルノアベルもこの部屋に潜んでいるわよ。多分ね」


 確証はないが、アンジェリカはここに来る際、リアの身体から流れ出ている血が廊下に染みついているのを見つけている。ワザと血を垂らしているとは考え深いので素直にここにいるということで間違いないはずだろう。


 「境川を殺した後、ルノアベルも始末しよう」


 樹がいくら喋ろうが境川は椅子に座ったまま顔を上げない。

 

 (煉獄を消したのは間違いなく境川の仕業のはず・・・あの中に力を消す逸材者はいなかったはずだ。加え私の力を消すとなるとそれそうの力を持った奴に違いない)


 だが境川は動こうともしない。動けないほどのダメージを受けたのは明白。圧力だけで煉獄を消したとは言い難い。天命ならいざ知らず煉獄は辺りを狙う技、範囲が桁違いなのだが。


 (だが、動かないのなら)


 チャキっと鞘から刀を抜く。


 「──二度目だな、境川ッ」


 そう言ってブンッと刀を振るう。

 ──スゥゥ...境川の腕がゆっくりと上げられ刀を受け止める。


 「なっ──」


 下を向いているのにも関わらず、刀を受け止めた。


 「待っていたぜ....魔王」


 ゆっくりと顔が上にあげられた。

 樹は刀を境川の手から放そうとしたが、境川の力は強くグググと握られ放せなかった。


 「アンジェリカは慎重な女だ。きっとこちらの状況をすぐさま把握してくると俺は予測を立てた」


 アンジェリカは境川に集中しろと言った。それは決して間違ったことではない。だが、アンジェリカには一つだけ誤算があった。

 その誤算とは


 「──確かにここには他に人物がいる。だが、決してそいつらは目を離していいやつじゃねえ」


 境川がそう言うと物陰から会長たちは姿を現す。


 「やるな境川」


 会長はメガネをクイッと上げてそう言う。


 「正直言ってこの作戦は危険だった。境川くんの命の危険性が伴っていたからね」


 「それでも生はこの策に賭けた。魔王を近づけさせるために」


 そう。境川の策は"魔王 織田樹を境川の距離に近づける"だけだった。


 「してやられたというわけね」


 アンジェリカは少しだけ悔しそうにそう言った。


 「こんどはこっちも武器を使わしてもらうぜ・・・樹」


 「ほぉ、武器を手にするか」


 境川の拳に握られた刀は放され少しだけ後ろに下がる。

 俺が手にした刀はリアから借りた綺麗な刀。

 スっと椅子から立ち上がり、俺は樹の前に出る。


 「私を近づけさせたのは褒めてやろう。だが、いくら武器を手にしたところで私に勝てるとは到底思わんがね」


 樹にはアンジェリカといういい軍師とも呼べる相方がいる。だから彼女が指示することで境川たちを追い詰める行為が可能。そして樹が無理な動きを可能とすることができる。


 「勘違いするなよ魔王」


 「なに・・・?」


 そう言って境川は後ろから命を引っ張り出す。


 「そっちが二人なら・・・こっちも二人だ」


 命の肩にポンと手をのせてそう言ったのだ。


 「・・・・・・?本気か貴様」


 「本気だぜ」


 「ルノアベルならまだしも明らかに力のない女を使うか。はっ──よもや思考まで馬鹿になっているようだな」


 「お前をおびき寄せたのはこいつだぜ」


 俺がそう言うと樹の目は鋭くなる。


 「貴様が考案したのではないのか?」


 「違うぜ。土台は俺だが、内面を構成したのは命だ」


 おびき寄せようと策を提案したのは俺だ。だが、その策は講じ方によってはアンジェリカに一瞬でバレてしまう。僅かな仕掛け、アンジェリカはそこから展開し策を破ってくるだろう。

 だから命の力である『未来視』を使用した。映像だけだがアンジェリカがどのように推理をするのかを見てもらった。そこから一番安全そうな策、それは俺が生きているんじゃないかと思わせてもう一度とどめにこちらに来るということだった。

 もちろん遠距離技を使用してくることも想定内だ。だから樹が"煉獄"を使用した際に一度だけ『消滅』を使用して遠距離は通用しないということを痛感させていた。どんな些細なことでも一度やられてしまえば誰しもまたあるんじゃないかと警戒をする。それはいかなる人間であってもそうなのだ。

 だから俺たちはそれを利用した。案の定、樹も同じで態々俺に近づきトドメを刺しに来てくれた。


 「アンジェリカの推理を超えし力...それを彼女は持っているというのかね」


 「・・・それはご想像に....ね」


 「フンッ──それはまあおいおい確認すればいいだろう」


 チャキッっと互いに刀を構える。


 「アンジェリカ、境川はどう動くと思う」


 「....抜刀すると見せかけてそのまま右に飛ぶわね」


 「なるほど」


 樹はニヤリと笑う。

 相手の動きを理解していればそれそうに対処が可能。だから樹はそれを読んで右に視線をおくる。


 「──はあッ!!」


 「ッ!!」


 二人はほぼ同時に攻めた。

 

 「──(しょう)!左」


 命が叫ぶ。俺は右に行くつもりだったが、命の急な指示で急遽左にジャンプをする。


 「なに・・・!?」


 樹の抜いた刀は右に振られる。だが、そこには誰もいるはずもなく空振りに終わった。


 (私の推理を上回った・・・それも直前に判断した・・・)


 アンジェリカは驚いている。自分の推理が破られた。それに対して驚いている。

 

 「もらった!!」


 隙だらけの樹に境川は後ろから襲い掛かる。


 「ちぃ!!」


 だが、後ろからの攻撃にも樹は反応する。

 後ろ向きで刀を刀でガードをしたのだ。

 

 「アンジェリカを超えしその力・・・確信を得たよ。だが、勝敗は別だ」

 

 そう言って後ろ向きで刀を猛威で振るう。天命のごとく振るうその刀裁き。境川には対処できずそのまま境川は後ろに下がった。


 「そこの女・・・実に興味深い。なあ?アンジェリカ」


 樹はそう言ってアンジェリカに聞く。


 「そうね。同じ・・・いえ、私より上位の能力を持っている貴方に興味が湧いてきたわ」


 「えっ・・・」


 命は二人に実力を認められて戸惑っている。


 「いいパートナーだな。殺しがいがあるよ」


 「冗談は口だけにしとけ。命は殺させない」


 「どうだか・・・」


 二人は体制を立て直す。

 命の力で一瞬行動の読み合いで勝つことはできたがまだ優勢とは言えない。

 勝負はここからだった。

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