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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
66/130

だからお前はダメなんだ

 ──もう時間がない。

 その言葉は恐らくルナの模倣の時間切れを意味しているのだろう。

 "無茶な動き"をしているルナはその小さき身体に相当な無理を強いている。一般人やオリンピック選手、そこまでなら負荷を要することなく、一目見ただけでルナは動きを真似ることができる。

 だが、今現在ルナが行っている行動は違う。一般人でもオリンピック選手でもない。俺や御神槌(みかづち)、伊吹と言った「逸材者」の動きだ。

 

 「クックック・・・やるじゃないかルナ」


 シャルルは自分の攻撃を防がれた・・・消されたというのにも関わず、笑っている。

 

 「何がおかしいって言うのよ」


 「いや、なに。お前の力がここまでとは思っていなかったまで。俺としたことがお前を甘く見ていたようだよ。この数年離れていたとは言えお前と過ごした時間は少なからずあるといってもいい。だというのに逸材を開花させたのは今とはな」


 「開花させたのは(しょう)がいたからよ。私一人だったら私は弱いままだった。彼が私と共に行動をしてくれたからこそ、今の状態が存在している」


 「開花させたまでは良しとしよう・・・だが、それは大きな間違いだったな」


 そう言ってシャルルはパチンと指を鳴らす。


 「ッ!!」


 それと同時にシャルルとルナの間に大きな炎がボォ!!っと出現した。


 「く・・・!」


 すかさずルナは模倣した消滅の力を使い、炎が出現した瞬間、それを沈下させる。


 「待てルナ、罠だ!!」


 シャルルが講じたこの戦法・・・!

 炎が消え目の前にはシャルルの姿が存在していない。


 「・・・逃げた・・・?」


 そんなはずはない。あの一瞬で逃げれるほどここの建物は低い位置に存在していない。

 ゴォォォと風の音だけが響く中、俺は耳を研ぎ澄ましていた。

 シャルルの足音は聞こえない。心臓の音も何もかも聞こえない。


 だが、


 ──パチン、


 その音はどこからか聞こえた。


 「ルナ!!!」


 「Shit!!」


 ルナはギリギリでジャンプをして目の前の点火から身を守る。

 

 「外したか・・・」


 暗い外の背景とどうかしていたかのようにシャルルはスッと姿を現す。


 「──炎は光だ。一瞬でも炙ることでお前たちの目は突然明るいものが目に入り暗いものが見えづらくなる。だから俺を捉えることができなかったんだ」


 それだけではないはずだ。心臓の音を消すことはできない・・・。


 「感がいいな境川生。目を封じたところで貴様に勝てるほどこの闘いは楽じゃない。Let's rock....派手にやりたいがお前にそれができれば苦労はない。一瞬だが息を殺させてもらった」


 なるほどな。一瞬だけ心臓を止めていたわけか。化物じみたことを軽くやりやがるぜ。こいつ。


 「俺はルナ、お前を殺したくはない。痛めつけはしてもお前と俺は血を分けた家族だ。貴様がもし降参し俺のもとに来るというのなら命だけは助けてやるぞ?」


 「調子のいいことをいうわねシャルル。断るわ。私は悪の道に進むつもりはない。アメリカを守るため私は貴方を止める」


 「はっ、口だけは達者なやつよ。だからこのアメリカは戦争で勝つことができないんだ。俺という強力な逸材者がいるというのに、お前たちが協力しないせいで攻めることもままならないんだよ」


 日本は戦争を放棄しているからあまり実感がないが、世界はやっぱり逸材者を使って戦争しているんだな。そう言えばフェンもそっち方面で活躍していたんだっけ。まあシャルルが燃やして殺したからもうこの世にはいないけどな。

 

 「戦争した先の未来が決していいというものではないわ。血なまぐさいことを強いて何の得があるというの」


 「・・・だからお前はダメなんだ」


 シャルルは呆れるようにそう言った。


 「──"強い者に従う"それがこの世の中だ。弱い者は所詮は生きることはできない。それを国に置いてみても同じこと」


 「・・・戦った先に一体何があるというのよ...」

 

 同じ家族でもこの二人の意見が合うことは無かった。

 この言葉を聞いて俺は少しだけシャルルに対しての見方が変化している。

 強さを持って国を守ろうと動いているシャルル。やり方は非常だが、アメリカを守るという意思が少なからずあると思う。

 ルナは逆に説得で救おうとしている。武力行使をせず、平和な解決法を見出そうと頑張っているんだ。

 決して交わることのない二人。だが、やろうとしていることはどちらも似たり寄ったりだったのだ。


 「この国を守るには力が必要。ルナ、お前のように弱きものはこの国にはいらない。だから俺はお前を殺すことを思って生きてきた」


 才女と謳われ、遥々と俺を求めて日本に来たルナ、実力はここにくるまで皆無だったが「模倣」を会得してからというもの、ルナは誰よりもその強さを身につけた。


 「境川生、お前の実力、認めている。貴様のような逸材者が多様に存在すればこの国も安泰だろう」


 ニヤリと笑いシャルルは


 「どうだ?俺と組む気はないか?お前とならこの国・・・いやもっと世界を狙えるだろう」


 手を前にだしそう言う。いつでも点火できるというサインなのだろうか、シャルルの指は中指と人差し指がくっついている。

 だが彼奴がどうこう言おうが俺には関係ない。答えは初めから決まっているんだから・・・。


 「──悪いが断る」


 俺は誰よりも平穏に過ごしたかった。そう願ったからこそ このアメリカに来るのにも躊躇(ちゅうちょ)があった。

 他ならぬルナが頼んだから俺は賛同した。

 心から願っていること、無駄な争いはせずひっそりと俺は命やリアたちと生きるんだ。


 「・・・そうか。ならお別れだ」


 パチン──その音とともにシャルルの目の前、つまりは俺たちのところは爆発した。

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