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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
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最強の存在

 ルナが行ったこと行動、それは俺の模倣。

 ルナの力は他人を真似する模倣、だが、それはルナ自身が可能とする動きだけであって、俺の動きやシャルルの点火、御神槌の空気弾などは実質不可能に近い。

 だがルナが自分の身体能力で補うことで最低限の動きは可能になる。俺はその可能性に気づいていた。

 実際ルナもそれに気づいていたのだと思う。だから俺の頼みもすんなりとOK出してくれた。


 (とは言え....目つきまでここまで変わるとはな)


 隣にいるルナはもはやいつものルナではない。目も激しく睨んでおり鋭い目つきになっている。俺ってこんな感じなのかな。

 

 「おもしれえじゃねえかルナ。まさか逸材者の動きを再現しようだなんて言うんじゃないだろうな?」


 シャルルはつけくわえて「よりにもよって境川とは笑わせるぜ」と言った。


 「ごちゃごちゃ五月蝿いわ。実際に見えてあげる」


 「んじゃ──行くぞルナ!!」


 合図と同時に俺とルナはシャルルに向かって走り出した。

 歩調から手の動きまでルナは俺と全く同じだった。なんか普通に考えて怖いわなこれ。

 だけどそんなことを気にしている場合ではない。俺はサッと右に曲がりルナは反対に左へと曲がる。


 「ちぃ・・・小賢しい真似を!!」


 パチンパチンと右指と左指で双方に炎を放つ。

 だが、その炎は俺によって消滅の力で一瞬で無と化した。


 「くらえシャルル!!」


 「至近距離にきたか!ならまずはお前からだ境川!!」


 そう言ってギリギリて指を向けるが、


 ──パッ!!


 俺はシャルルの視界から消えた。


 「なにッ!?」


 「こっちだ!」


 ドゴォ!!

 俺は下からシャルルに強烈なアッパーを喰らわした。

 久々に視線誘導使ったな。意識を後ろにいる俺もどきのルナに対象を合わせてシャルルの視線を俺から外させた。

 

 シャルルは大きく吹き飛ばされたが、受身をとりそのまま大きく上にジャンプする。


 「喰らいな!!」


 そのままパチンと指を鳴らしてルナを狙う。

 ルナは不意をつかれたが、


 「ッく!!」


 ギリギリでシュッと炎をかわして着火を免れた。

 だけど風で飛ばされたルナは前のめりで宙を舞っている。着地刈りをされてもおかしくはなかった。


 「ルナ・・・バカめ!!終わりだ」


 着地寸前のルナを上から狙おうとする。

 だが、ルナは


 クルッとその場で一回転し身体を上に向ける。

 そしてそのまま右手を大きく振りがざす。


 ──ドス、


 「がっは・・・!」


 シャルルに何かが命中する。キラリと光っている。あれは・・・ルナのオーラの弾だ。

 そのまま点火することなくシャルルは地面に落とされた。

 ルナもズザザと転ばずに着地する。


 驚いたのはルナの行動だった。シャルルが空中から最初に攻撃してきた不意の一撃、あれをかわしたのは紛れもなく俺の模倣だった。

 そこまでは理解できている。ルナは尚今でも俺のことを観察し行動に移している。若干ズレがまだあるが、少しずつ俺に近いものになっているのが分かる。

 だが驚いたのは次だ。宙で当てられそうになったときルナは回転をした。俺の動きだけでなくその後は「伊吹の絶対領域」だ。

 不完全な体制から標的を当てることのできる伊吹の模倣、ルナは俺の模倣を行っている間に一瞬だけ伊吹に切り替えたのだ。

 ルナが模倣を開放してからまださほど立っていない。それなのにルナは逸材者である伊吹の動きをマスターしていたのだ。


 (観察眼は人一倍か・・・・)


 よく見ているからこそ、あのような芸当ができたのだ。

 だがこれでハッキリしたことがある。逸材者の模倣、それはもって数分だ。ましてや逸材者同士の力を同時に使えばスグに体力切れになる。

 

 「だが、今のルナは──この場において最強の存在だ」


 逸材者全ての動きが使用可能の状態、ルナは現在無敵だった。



 「くっ・・・・ルナァ・・・・調子に乗るなよ・・・・」


 シャルルは自分の思うようにいかないようで半分キレかかっている。


 「調子になんてのってないわ。でもこれだけは言えるわ。──お前ごとき私一人で十分なのよ」


 その言葉はシャルルにとって怒らせる言葉以外なんでもなかった。


 「だったら見せてやろう」


 そう言って両手を上にあげる。

 ボォ!!っと大きな火の玉がシャルルの頭上に出現する。


 「こいつを喰らえばいくら逸材者を真似ている貴様でも助かるまい」


 「火の・・・・溶かす気ね」


 遠く離れていてもあの玉の温度が伝わってくる。

 あれは真似するかの次元ではない。炎を操ることのできるシャルルにしかできない芸当だ。

 正直言ってルナも焦るかと思っていたが、


 「ふぅ」


 たった二文字で表せるかのような言葉を発しただけだった。

 驚くことをしても大きく表情に出さずルナは冷静を保っている。今だに逸材者である俺たちの動きを真似し続けているのだ。相当な集中力だぜこれは。


 「喰らえ!!──はああ!!!」


 シャルルはブンッと火の玉を大きく振りかざす。

 ゴォォォという音と共に俺とルナのもとへと近づいてくる。

 

 だがルナは、グッと腰を低くして、ダンッと前方に駆け出した。


 「臆したか、だが今更遅い」


 シャルルの火の玉は逃げれるほど小さいものではない。ルナの意図を読むことは逸材者である俺ですら理解しきれない。

 そしてルナは丁度火の玉の真下に立っていた。

 手を上にかざし何かを小声でボソボソと言っている。


 「──手に力を入れず、対象を消える....いや消す感じ・・・・」


 そう言っている。


 (まさか・・・)


 俺がそう思うと同時にルナの手元からはシュゥっと音がして強い光に包まれた。

 俺もシャルルもその光に目をやられ一瞬目を閉じてしまう。


 「・・・・嘘だろ」


 目の前にはシャルルの手元から放物線上に放たれた火の玉は存在せず、消えていた。

 まごう事なきこれは「消滅」だ。原理は違えどルナはルナなりに消滅の力を使ったのだ。


 「馬鹿な・・・我が一撃を止めた・・・だと!?」


 「悪いわねシャルル。時間もないの・・・これで終わりよ」

 

 その冷たい瞳したルナはスッと手を前にかざした。

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