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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
63/130

勝利すること

 ドォォォォン!!!!

 ライブラリータワーの真下では大きな爆発がし強大な炎に包まれた。

 間違いなく逸材者シャルルの仕業だ。


 「くっくっく・・・これで終わりよ」


 ライブラリータワー最上階である屋上にいるシャルルは高いその位置から真下を見下ろしながらそう言い放った。


 ゴォォと炎が燃え盛りあたりは真っ赤に染まっている。

 シャルルが再びパチンと音を鳴らすとその炎はシュッと消え、何もなかったかのようにただ焦げた跡が残っているだけだった。

 

 「──なに・・・」


 シャルルの目の先には焦げた跡の他にまだ存在していた。

 それは殺したと思っていた存在、俺とルナだった。


 「ルナ生きていたのか」


 「悪いけどそう簡単に死ぬほど私は単純な女じゃないわよ」


 ルナは黄色いオーラを纏っている。

 爆発の直前、ルナは俺をギュッと抱きしめて自分のオーラを(まと)った。ルナのオーラはある程度の攻撃を防ぐことができるので、それを利用し爆発を完全に防いだのだ。

 しかし、今の体制は咄嗟(とっさ)だったとはいえどもとてもよろしい状態ではなかった。

 抱きついているルナの下に俺という状態だ。そのせいかルナの柔らかいものが俺に直で当たっているのだ。こうしているとルナが改めて女の子ということに意識してしまう。

 だがルナはそんなことには気づいておらず必死で俺に抱きついていた。


 「生・・・大丈夫?」


 抱きつきながらルナはそう聞いてくる。


 「問題ないが、このままだと色々と毒だな。早くどいてくれると助かるよ」


 俺がそういうとルナは気づいたのか顔を赤くし慌てながら「ごめん」と一言いいどこうとした。

 その瞬間だった。パチンという音は聞こえなかったのに再び炎が俺たちを包み込んだのだ。

 ゴオオオオと燃え盛る。ルナはそれに気がつきどこうとしていたのに再び抱きついて俺を庇った。


 ピキ・・・激しい炎にルナのオーラが割れそうになる。

 そういうことか。ルナのオーラは決して鉄壁の盾ではない。当然のことながらある一定のダメージを負えばオーラは砕ける。

 シャルルはそれを狙い休む間を与えずに再び攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 (運がよければこのまま俺たちを倒せるか・・・)


 強引だが理にかなっている戦術だ。実際ルナのオーラは砕けそうで危ない状態だ。


 「生は・・・私が守るんだ・・・」


 抱きしめる力が一層に強くなる。そして俺はルナの胸に埋もれ意識が一瞬だけ飛んだ──



 

 「くっくっく・・・そろそろフィニッシュかな」


 地上は赤く炎に包まれている。ルナと境川を倒すためだけにここまで派手な技を繰り広げたシャルル、その実力は確かに強いものだった。

 

 ──ヒュゴォォォオッ!!

 突然炎が風に包まれたかのような音を立て一瞬でその炎を消滅させた。


 「なんだ・・・・」


 「うっ・・・あれ。炎が消えてる」


 オーラが砕けかけたルナはムクリと起き上がりあたりを見渡す。

 そこはいつもと変わらない地面だった。さっきまでの炎が嘘くらいに思えるほど、燃え盛ったあとすらなく空も灰に包まれていなく綺麗な夜空だった。


 「──境川・・・貴様」


 バチバチバチ.....


 「生・・・!」


 「──人間にはどうしても越えられない壁がある。努力だけでは届くことのない領域。天才と凡人では格の差がありすぎるんだよな」


 俺は全身に力が入らなかったのがまるで遠い昔のような感覚だった。

 今の俺は平然とその場に立ち、シャルルの方へと視線を向けている。

 だがハッキリと変化したことはある。それは俺の身体の周りにあるこの「オーラ」だ。これはさっきまでルナが纏っていたオーラそのものだったのだ。

 

 「ルナのオーラを纏うか境川生。ルナのような模倣(真似事)か?」

  

 「ルナの模倣はアクティブスキルだ。模倣のように受動的(パッシブ)ではないし俺は模倣が使えるわけではない」

 

 ルナの逸材はあくまで見様見真似をする模倣だ。あのオーラは副産物でしかない。だが、なぜそれが俺にまとわているかと言うとだ、恐らくはさっきの接触行為が原因だろう。命が俺に逸材を託したときと同じで一定距離近づけばその使用者の技が使えるようになるとかそんな感じなのだろう。

 

 「悪いなルナ・・・お前のスキルだってのに」


 俺は申し訳なさそうにルナの方を見て謝る。


 「ううん。大丈夫よ生。その力を使われても私はなんとも思わない。なにせ私自身の力は人の真似事・・・そんなことで文句を言える立場じゃない」


 ルナは「それに」と言い


 「好きな人に使ってもらえるのはとても・・・嬉しいことだから」


 少し照れたような表情をしそう言ったのだった。

 恐らくルナはどうやって俺にこのオーラを纏わせたのか気づいているのだろう。意図的ではなかったとは言えどもあの行為は少し恥ずかしいものがあったはずだ。


 「──色々ルナには謝りたいが、今は勝利することだけが最優先だな」


 はるか上空に存在するシャルル。それを倒すのが俺の今の目的だ。

 点火を扱う彼は遠距離では敵なしの逸材者、俺ですら相手するのが難しいくらいだ。


 (だが、このオーラだ。少しは攻撃に耐えれるだろう)


 ルナが俺に纏わせてくれたオーラ。バチバチと激しい音を立てている。

 だが、それはとても暖かく優しい力だ。纏っていて気分がいい。


 「ルナの力──借りるぜ!!」


 ダン!!

 俺はそう言って足に力をいれ思いっきり跳躍をした。

 このまま屋上までフルスロットルで飛び抜けてやる!!


 「フン、来るか──なら来い!!」


 指を前に出し鳴らす体制を取る。

 パチンという音とともに再び四方八方に炎が出現する。

 だが──


 「今度は無駄だぜ」


 オーラを纏った俺には無駄な攻撃だ。

 消滅の力を使わず俺は爆発の中を駆け抜ける。

 そして煙を掻い潜り俺はライブラリータワーよりも上空に出た。

 下を見るとそこには俺を見上げているシャルルの姿がある。


 ヒュぅぅぅ・・・ッっタッと俺は屋上に着地をする。

 顔を上げ後ろを見るとそこには追い求めていた相手が待っていた。


 「よぉ、シャルル・・・」


 「境川──生」


 シャルルはニヤリと笑い俺の名前を言った。

 ようやくだ。こうして目のままでたどり着いた。遠距離では敵わなかったがこの至近距離・・・負けられねえぜ。

 

 俺とシャルルの闘いは第二ラウンドが始まろうとしていた・・・。

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