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逸材の生命  作者: 郁祈
第一章 学園編
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三人の輪

学園と無の部屋の関係性をしった生──

無の部屋から出れないと待っているのは死のみ

もし恋桜学園がそれと同じだったらと思うと・・・

そうはさせない生は心に誓ったのだった

 キーンコーンカーンコーン


 学校のチャイムが鳴った。これは朝の予鈴・・・HRが始まる時間のチャイムだ。

 俺はこの学校に残ると誓ったため、急いで教室に戻った。


 「・・・」

 

 教室に入ると、まだ先生は来ておらず、もう誰もオレをみようとする者はいなかった。

 そう、俺はついにクラスから独立したのだ。


 「遅かったな、生」


 そんなクラスでも僅かながらオレを受け入れてくれる者は存在していた。


 俺の後ろの席である沢渡棗(さわたりなつめ)、こいつは昨日と変わらず、俺に接してくれた。


 「まあな」


 曖昧に返事をして、席に着いた。


 バタン・・・


 隣の席から倒れる音がした。


 急いで振り向くと、そこには命が倒れていた。


 「命・・・!?」


 俺は慌てた・・・。


 「しょ・・・(しょう)・・・」


 クラスの連中の仕業か、いやそんなことを考えている暇はない。

 ・・・・保健室は一階、しかしここは四階....


 「すまん棗。先生に保健室に行ったと伝えてくれ!」


 窓をカラカラと開け、


 「おい、生!?そっちは窓だぞ!」


 「知っているよ」


 俺は命を抱き抱え、"飛び降りた"





 ──ダンッ


 見事に着地成功だ。

 さて、保健室はっと



 





 「ん・・・・生・・・・?」


 命の意識が戻った。よかった・・・。


 「ああ、俺だ」


 俺は薄く微笑み、命みる。


 「私・・・一体・・・・」


 自分の置かれた状況を理解できず、困惑していた。


 「ああ。お前倒れたんだ。辛かったな」


 命が倒れている間、俺は"聴覚"の力を使い、教室に耳を傾けた。

 そこで会話は、どうやら命だけを先に教室に戻してしまい、そこで、散々周りから言われたみたいだ。


 あのとき、俺も一緒に戻っていれば何もなかったと思うが、これは油断していた。

 命は周りから色々罵倒され、辛かったのだろう。


 「命・・・ごめんな」


 命はクラスでも浮いていなかったが、俺に関わっていたためあまりよく思われていなかった。

 加え、今回の件のせいで命は完全に俺と同じでいじめの対象になったしまった。


 「(しょう)が謝ることじゃない。私はこれを受けれいてるもの」


 命は辛そうな顔をしていたが、なんとか振り絞って俺に笑顔を向けてきた。


 しかし、嫌な予感がする。命がこうなったということは・・・


 「なあ、命。棗はどうだ?」


 「棗くん・・・?今日は普通に来ていたみたいだけど」


 嫌な予感もあったため、聴覚だけなく、視力の力を使った。

 

 「──教室は・・・っと」


 教室に視界と耳を向ける・・・。




 

 「──棗くんって、よく命さんと境川くんと一緒にいるよね?」


 マズイ・・・恐れていた事が、置きつつあるのか。


 「ん?いるけど??」


 棗は普通に会話を返す。


 「ふーん。あんな奴たちとはもう縁切りなよ。あの二人このクラスの嫌われ者だよー?」


 棗・・・悪いことは言わない。俺達とはここで縁を切ってくれ。でないとお前までもが・・・・!!


 「・・・・断るね」


 なに!?


 「え・・・マジで言ってる?」


 「ああ、大真面目だよ。だって、あの二人は俺の友達だもん。縁を切るとかできやしないね」


 棗・・・・お前ってやつは。


 「ふーん。なるほど。いい友情だね」


 マズイ・・・これ以上は。

 "力"を使い、棗のもとに向かいたいが、ここで肉体的な力を使うと命にバレてしまう・・・。


 「──だったら・・・」


 女子生徒が、棗に殴りかかる。


 だが、棗はそれを受け止めた。


 「なっ・・・!」

 

 「悪いけど、俺は君たちより強い自信あるよ?」


 グググっと拳を受けて止めているが、その握っている力は計り知れない。

 

 「この・・・」


 棗が手を離すと女子生徒の手の骨は折れていた。


 「──なんて力なの・・・あなたまさか」


 「昔、バトル漫画に憧れてね、筋トレしていたんだ」


 ニッコリと棗は笑いそういった。


 あの力、力だけなら逸材者と同等。

 逸材の力をもち、逸材者ではない。努力して逸材に追いついた筋力。あいつめ・・・凄いじゃないか。


 「てなわけだ。僕を嫌うのも好きにして構わない。でも、次にあの二人にちょっかい出してご覧、ただじゃおかないから」


 笑顔で言っているのに、妙に迫力のある言葉を言い、女子生徒を下がらせた。


 






 ──もう大丈夫か。

 

 「生?ぼーっとしていたけど考え事?」


 棗の様子を伺っている間、命からはそう見えていたらしい。


 「ああ。ちょっとな。棗大丈夫かなって」


 言っていることは間違っていない。だが、考えていたのでなく見ていたんだがな。


 「大丈夫でしょ。きっと」


 「フ・・・そうだな」


 そう言って命は時間を確認した。


 「あーーーーもうこの時間テスト・・・・」


 時刻は8時40分、恐らくもう先生はやってきているだろうな。


 「どどどどどうしよう。このままじゃ私たち退学に・・・」


 「大丈夫だ、命」


 「え・・・どうして」


 不思議そうに命はこっちを見ていたが、俺はフッとし、


 「今から向かって解けばいいだろ?」


 そう言って、俺と命は教室に向かって走った。








 

 ──テストには間に合ったが、残り時間は数分だった。

 勿論本当のテストだったら、いくら俺でも書く時間が足りず、終わっていただろうが、問題の少ない小テストだったので、助かった。

 

 テストの結果も授業中に返された。


 「棗、どうだった?」


 返されたと同時に棗に聞く。


 「ふっふっふ・・・見て驚くな・・・じゃーん」


 自信をもって見せてきた点数は  32点

 赤点ではないけど・・・何とも言えんな。


 「棗くんすごーい!!頑張ったね」


 命は赤点でない棗を褒め称える。


 「どうよ。俺もやればできるんよ!」


 確かに退学は免れたが、これお前の姉に見せたら・・・・ご愁傷様。


 「生と命ちゃんは何点だった?」


 自分の点数よりも他人のが気になるのもよくあることだ。俺も棗のが気になったからおあいこか。


 「時間がなかったけど・・・こんな感じ」


 命は恥ずかしそうにテストを見せてきた。

 点数は・・・



 「うげえーーー90点!!高すぎるよ!!遅刻してきたよね!!おかしいでしょ」


 命はへへっと手を後ろにやりながら棗とワイワイしていた。


 「で、生は!?」


 棗は次に俺の方を見てきた。

 

 「それは私も気になるわね」


 命まで!?


 「ったく・・・しょうがないな」


 二人にさっき返された俺の点数をみせてやった。



 「嘘・・・・だろ・・・」


 「さすが(しょう)!!」


 俺の点数は──


 満点だった。


 「命ちゃんといい、おかしいでしょ!!何でとれるのかなぁ!!?」


 「いや、これ小テストじゃなかったら死んでたよ。問題数が少なかったからこそ、満点とれたし、命も満点近くをとることができたんだ」


 あと回答方法記号選択だったし。


 「まあ、棗くんも退学は免れたし、ここは一件落着ってことで」


 命が棗にフォローを入れる。

 

 


 この学園には無の部屋と同じ、人物が関係している・・・・。今回は免れたが、もしここで退学していたら、退学で済んだんだろうか。

 無の部屋に卒業以外のことはない。それ以外は全て死を意味していた。

 もし、ここで赤点を取っていたら、殺されていたのかもしれないな。


 そう思うと、今回俺たちは無事に突破が出来てホッとした。


 








 

 

 ──暗い一室。

 微かな光が存在しているが、それはモニターによる光りだった。


 そこに存在するのは二人の人物。

 一人は秘書の女、もう一人は男の存在。


 「Mr.K・・・どうやら境川生(さかいがわしょう)は今回の小テスト、残り超えましたね」


 Mr.Kと呼ばれる人物は表情を変えず、


 「さすがは"我が、最高傑作"だ。これくらいは朝飯前というわけか」


 「ですが、彼には友人が二人いるみたいです」


 「ほぉ?あの傑作にか」


 「ええ。一人は幼馴染である。東雲命(しののめみこと)、もう一人は・・・沢渡棗(さわたりなつめ)です」


 Kはふたりの資料を見て、何かを悟ったようだ。


 「だが、学力だけではこの学園は生き残れん。さあ、あがいてみせよ。我がかわいい生徒たちよ」









 


 ──チャイムがなり時刻は15時・・・放課後だ。


 「ああ~~終わった終わった」


 無事に授業も終わり、退学をかけた一日も終了というわけだ。


 「いやー命ちゃんと生には感謝しているよ。ありがとうな生命」


 俺はゴツンと棗の頭を殴り、


 「生命はやめろ、まとめるな」


 棗はたまに俺と尊をまとめて「生命」と呼ぶ。

 嫌じゃないけど、なんとなく気に入らないので呼ばれたらこうやっていつも殴っている。


 そういえばこいつ力強いのにこういったときは力出さないんだな・・・。


 俺は棗の力を今日初めて知った。あの力は相当な握力をしている。

 ・・・握力だけじゃない。棗は瞬発力もピカイチなはずだ。


 そう、肉体的な才能では俺と同じ・・・いや、それ以上だ。

 だが、こういう茶番では使わないんだな。ホント・・・いい友達を持ったよ。


 「ん?どったの生」


 棗が俺を気にかけた。

 

 「・・・いや、なんでもない」


 俺はいい友達を持ったな。そう思った。 



 「そういえばは生。今日朝──」


 棗が何かを言いかけだが、俺は何を言うのかが察せたので、


 「ムゴ─・・・・!」


 棗の口を塞いだ。


 「生?」


 命が唖然としていたが、今はそうじゃない。こいつ絶対俺が朝、教室から飛び降りたことを言うつもりだったな!


 「悪いが、棗・・・その話はやめてくれ」


 「ムゴゴゴゴ・・・・な、なぜだかは分からないが・・・しょ、承知・・・」



 棗となんとか今朝の話をしないことを約束できたので、俺は棗を開放した。


 「ゲホゲホ・・・うごっほごご・・・」


 「棗くん大丈夫?」


 「だ、大丈夫だよ・・・ゴホホ....み、命ちゃんはいい幼馴染も、持ったね・・・・」


 俺の方をチラチラ皆がら棗は命にそういった。

 力はあるのにこういう時には使わないんだよな。

 

 もしかしたら棗が力を発揮させるのは本気で怒った時とかだけなのかもしれない。



 「そういえば今日昼休みに噂で聞いたんだけど」


 どうせくだらないことなんだろと思って聞いていたら、


 「──駅前に逸材者がいるらしいよ」



 この言葉に俺は反応した。

 

 この街に逸材者・・・・

 世界は広いが、この街に俺を含め二人目の逸材者、それは驚きを隠せなかった。


 「ふっふっふ驚いているね、生・・・しかも、年齢は僕たちと変わらないらしいよ!」


 「なんだと・・・」


 「うわ、生が珍しく食いついた」


 命にそう言われたが、無視無視・・・!


 俺と同じ年齢の逸材者・・・それは二パターンの可能性を持っている。



 ──俺と同じで無の部屋出身の逸材者、もしくは、







 ──生まれ持っての逸材者、つまり純粋な逸材だ──


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