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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
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命の決意

 「幸いまだ人げも少ない。ここでお前たちを倒し境川の反応を見るとしよう」

 ジャキッと銃を構え伊吹はそう言った。

 逸材者の絶命を願う彼には私を殺す動機が確かにそこにあったのだ。

 「ッ・・・・」


 目の前には銃を持って立ちはだかる伊吹。彼は「どんな位置からでも狙撃できる」という逸材を持っている。真っ向から出て勝てるほど甘くはない。

 ましてや私の「未来視」だけではどうにでもできるわけではない。それに人だかりが薄いと言っても少なからず人は通っている。

 私が力を使えば髪色が変化してしまう。伊吹の銃はまだ人目についていないが私の場合になると絶対に人目に触れてしまう恐れがある。


 「東雲、こいつは?」


 いつの間にかリアが近づいている。


 「貴様、いつ動いた」


 伊吹も私と同じ反応だった。気がついたらリアがそこにいた。

 だが伊吹の質問に応じることなくリアは私にこいつは?と聞いてくる。


 「彼奴は伊吹龍って言って逸材者よ。しかも相当な手練」


 「ふぅーん。敵なんですか?」


 「まあ敵ね。悪い気はしないんだけど、狙われてるって感じかな。一度負かしてるし」


 生とルナさんと協力し一度伊吹を倒すことには成功している。いやはやしかしながら回復が早くて驚くいたわ。

 でもこうして再び敵に回ると恐ろしく怖いわ。


 「じゃあ、倒しますね」


 そう言ってリアは一歩前に出る。


 「私語は慎めよ女!!」


 パァン・・・伊吹はリアが動いた瞬間引き金を引き真っ向に銃弾を飛ばした。

 しかし──


 ──チャキ....キンッッ!!


 ──そんな音が響き、伊吹の放った銃弾はリアの目の前で真っ二つに割られていた。

 そしてリアの手元には以前見た刀が握られている。もうひとつの手にはその刀の鞘。


 「なに・・・?」


 一体どこからそのようなものを取り出したのか。でも以前もそうだった。気がついたらリアの手元には刀が握られている。

 

 「遅いですね。まだルナの攻撃の方が早かったです」


 「調子に乗るなよ」


 伊吹は再びパァンと弾丸を放つ。しかしその方向は左右でリアや私を狙っていない。

 伊吹の得意技の1つの跳弾だ。


 カンカンと跳ね返り私たちを予想もしない位置から狙う技だ。

 弾丸は跳弾を繰り返しリアの後ろと上から襲いかかってくる。


 「リア!!」


 思わず叫んだがリアは平然と刀を構え弾丸を切り裂いた。

 そしてリアは刀を鞘に収めて


 「ふぅ・・・」


 と言い立ち上がる。


 「なんだ。てんで話になりませんね。日本の逸材者はここまで低レベルとは思いませんでした。兄様が格別なんですね」


 そう言った。


 「言うじゃねえか女」


 「続きをやるのは結構ですけど。私は遠慮しておきます。生憎人がそろそろ増えそうなんで」


 そう言って刀をブンと上に投げる。そしてパッと刀は姿を消した。


 「ちっ、ガキの癖して生意気じゃねえか」


 そう言って伊吹も銃をしまっている。やはり人目につくのはまずいのだろう。

 丁度銃と刀をしまった辺りで野次馬たちがゾロゾロと現れてきた。


 喧嘩か?誰だ?という声が大きく上がっており、その群れは相当な数となっていた。

 

 「人増えてきちゃったね」


 「東雲。退散時間違えたかもです」


 あちゃーとリアは手を頭に当てる。

 

 「フン、決着は次だ。拳で決着つけてもいいが貴様に格闘ができるとは思わんし俺もなるべくはしたくない。日を改めるとしよう」


 伊吹はそう言って引き下がろうとしたが、


 「なんだよ。いいじゃねえか。拳なら引き受けるぜ」


 後ろから聞き覚えのある声がした。


 「誰だ貴様」


 トコトコと野次馬をどかし私たちの近くまで来たその人物。それは


 「俺は御神槌(みかづち)って者だ。お前と同じで逸材者だよ」


 そう自己紹介したのだ。


 「東雲さん随分と逸材者に縁があるようね。境川くんだけじゃなくて貴方も結局人を寄せるオーラでもあるんじゃないの?」


 御神槌に続いて(くすのき)さんも出てきた。


 「逸材者・・・まだ仲間がいたのか」


 「その口ぶり、前回も世話になってるみたいじゃねーか。拳の対決なら俺が専門だ。さあやろうぜ」


 こいよとばかりに御神槌は伊吹を挑発する。


 「フン、低脳が」


 「あ?」


 「これほどの野次馬の中出来ると思うか?ここで騒ぎを起こせば間違いなくお前たちは退学になるだろう。仮といえ貴様たちはこの学校に世話になっているのだ。それに元いたところは随分と低レベルの学園と聞く。そんなやつらが問題を起こせばさぞかしどうなることか」


 「テメー・・・!」


 「待ちなさい御神槌。ここは喧嘩するところではないわ。一度引き下がりましょう」


 楠は冷静に御神槌を止める。


 「ちっ・・・」


 「お前たち野次馬どももチリな。喧嘩なんて起きねえ」


 伊吹がそう言うと徐々に人だかりは消えて行き、やがていつもの通学路に戻った。


 「逸材者ども日を改め覚悟するんだな。特にそこの女」


 伊吹はリアを指差し、


 「次は・・・確実に仕留めてやる」


 そう言って学校に入っていった。


 「ったくなんだよ彼奴」


 「逸材者みたいね。私たちの知らないところでまだいただなんて」


 二人は伊吹と会うのは初めてだったからそんな反応だった。


 「それと東雲さん。そこの子は?」


 視線をしたにやるとそこにはリアがいる。


 「えっ・・・えーーと・・」


 リアの名前をいうのはまずい。まだ二人にはリアのことを話していない。話しても納得してくれないだろうし。


 「見たところ逸材者みたいだな。さっきの男も仕留めるって言ってたし」


 御神槌がそう言う。


 「で東雲さん。誰なの」


 「えーーーー・・・・」


 困り果てている私の代わりにリアがこう言った。


 「私は東雲の子です」


 その言葉に御神槌と楠はピキッと凍りついた。


 「「えっ・・・」」


 ふたり揃って同じ声で反応し、揃って私の方を見た。


 「東雲さん・・・い、いつの間に・・・・」


 「はえ~驚いたぜ。いつの間にか子供がいたなんてよ」


 「もしかしたら私たちと出会う以前から境川くんと・・・」


 「ちょっと誤解!!それ誤解だからーーーーーーー!!!!!」


 リアの危険な発言にこの場はひとまず収まったが私の印象が大きく変化した日だと実感した。







 「──それで、あの子は何者なのよ」

  

 昼休み、教室で私は御神槌さんと楠さんに捕まっていた。

 リアはというとあのまま丁度保健室の先生と出会い、保健室に預けてもらっている。とても優しい先生で今度あったらお礼をしなければね。


 「彼奴自体はお前の子って言ってるけどどういうことだ?」


 「えーーっとね」


 ホントなんて言ったらいいのか分からず言葉に詰まってしまう。


 「やっぱりあれか?境川とお前の・・・」


 「だーーーかーーーらーー!!違うーーー!!」


 御神槌の発言に私は遮って否定をする。


 「こんな東雲さん見たのは初めてかも知れないわね」


 私の新鮮な反応に意外な表情で見ている楠さん。い、いけない取り乱しすぎたかしら。


 「じゃあ何なんだよ」


 「なんていうか拾った子なの。とりあえず家が無いみたいだからひとまず私と生で預かっているってだけ」


 リアの情報は出さずに説明するのは中々に難しい。これで二人は納得するだろうか。


 「それにしても随分と懐いているみたいね。貴方を母と思ってるくらいだもんね」


 「私になついてるけど生にはもっとなついているわよ・・・」


 「な、なるほどね・・・」


 生に対するなついてる様子を話すと楠さんは少し呆れていた。

 

 「境川に懐くとはァ結構な性格してんな」


 一方で御神槌はケラケラと笑っている。


 「──だが、逸材者を拾うなんてこったありえねえだろぜ」


 急に真面目なトーンになって私はゾッとする。


 「本当に奴は偶然(・・)拾ったのか?俺には意図があって拾ったように思えるが」


 逸材者ということもあり御神槌は鋭かった。

 

 「ただ偶然よ」


 私はそうとしか言えない。


 「奴の髪をチラッと見たとき赤色だった。赤といえば最近ニュースになっていただろ」


 「ああ。アメリカの逃亡者だっけ?名前は確か・・・リア・ルノアベル」


 その言葉に私は心の中で驚く。やっぱりこの二人はリアのことを知っている。でもまだバレていない。


 「この日本に赤髪なんてそう居たもんじゃねえ。それに拾ったとされるのはつい最近だ。その脱獄犯がこの日本にやって来たのもつい最近。これは結びつくぜ」


 御神槌さんはやっぱり逸材者だ。知性が高く情報を結びつけて1つの答えにしてしまう。


 「その反応・・・確実だな」


 「東雲さん・・・貴方...」


 犯罪者を身内に置いている。その事がバレてしまった。しかもよりにもよって逸材者である御神槌さんに。


 「俺は決して正義の立場にいるつもりはない。だが、目の前で起きている罪人を放置するほどお人好しでもねえ」


 そう言って御神槌さんは立ち上がる。


 「まっ、待って・・・!どこにいくつもり」


 「決まってるだろ。あの女の元にだ」


 御神槌さんは私の言葉に止まらず答えそのまま教室を出ようとする。

 恐らくはリアを警察に突き出すつもりだろう。


 守りたい気持ちが込み上げてきたこの最近。ここでリアを失うことは私にとっても生にとってもいいことではない。

 仲間を救う。家族を守る。今リアを守れるのは私だけ。


 「なんのつもりだ・・・?」


 気がつけば私は御神槌さんの身体を掴んでいた。身長差上肩を掴むことはできない。でも決めたんだ。


 「──必ず守るって」


 「ほぉ」

 

 「ちょ、二人共・・・!」


 楠さんが止めに入ろうとしていたが、


 「楠ッ、見ていろ。仲間割れって感じだ。等々こいつらは悪の道に踏み込むことを決めたようだ。なら止める他ねえだろ」


 

 『やるのか?』


 頭に言葉が響く・・・。(よう)だ。


 「もちろん。リアを守るんだから」


 『なら全力で協力するわ』


 

 ボッと私は髪の毛を結んでいるリボンが解け、髪色が変化する。

 リアほど赤色ではないが少なからず私も赤い髪になり瞳も赤く染まる。これが逸材者の力を使った私だ。


 「東雲さん・・・貴方まさか・・・」


 「逸材者か。いや、自覚したのは最近か・・・おもしれえ!!」


 御神槌はニヤっと笑い私の方をみる。


 「境川が傍に置く女だ。少しは楽しませろよ」


 廊下で私と御神槌さんは闘うことになった。リアを守るため・・・私は負けない。

 この逸材で勝ってみせるんだ。

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