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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
51/130

どうすれば

 「──好きだよ」


 それは突然だった。何の前振りもなく発せられた言葉。

 目の前にいるルナは確かに俺に向かって好きだと言った。


 「えっと・・・ルナ?」


 その意味はどういうものなのかは理解できなかった。友達として好きなのか、恋愛対象としての好きなのか。好きという言葉だけではあまり分からない。

 だが、ルナの顔を見ると顔色は真っ赤になっており俺はスグに理解できた。


 「あっ・・・えっと.....その....」


 ルナはやってしまったと言わんばかりの表情しあわわと慌てている。

 

 「や、今のはそうじゃなくて」


 頑張って訂正しようとしてるのだが、慌てれば慌てるほどルナの顔は赤くなっていく。もはやここまで行っていると嫌でも分かってしまうな。

 ルナは俺のことが好きなんだと。

 今までの行動で俺はルナに好かれるようなことはしていないはずだ。どこで間違えたのかは知らないがこれは俺の不始末なのかもしれない。

 仲間を大切に思うからこそルナは俺を好きになってくれたのだろう。でなければ俺なんかを好きになることはない。最も昔から接している命は違うだろうけど。


 「ルナ、もう手遅れだと思うぞ」


 「えっ・・・あっ....」


 自分でももう気づいているようだ。ハッキリと俺に言ってしまったことを。

 普通なら死にたいと思う気持ちが一気に込み上げるのだろうが、ルナは意外にも吹っ切れたらしく、


 「す、すすすすす好きだからね!!生!!!」


 ビシッと指を刺してそう言ってきた。

 俺は正直言って何も言えなかった。ここまで開き直られるともはや対応に困るってもんだ。


 ルナはそう言うと俺の方にトコトコと早歩きで歩いてきてガッと俺の腕に抱きついてきた。


 「こんなところ命が見たら怒るだろうな」


 「命は今いないんだからいいのよ」


 こりゃアメリカ版の命だな。俺は頭をかきながらやれやれと思い再びルナと一緒にルナの家の方に歩き始めた。











 

 ──歩くこと数分、しばらくすると大きな屋敷が見えてきた。


 「生、あれが家よ」


 ルナの指先はまさに俺が見ていたところと同じで俺は驚いた。

 有田院(ありたかき)の家も相当な広さをしていたが、ルナの所はそれを軽く超えている大きさだった。


 「なるほど、こりゃ大層な家なこった」


 近くまで来るとその大きさが直で伝わる。大きな扉を潜り庭に出た。

 日本でここまで広い屋敷はそう存在しないだろう。広い土地を生かした外国ならではの広さって感じだ。


 「ッ、ルナお嬢様」


 庭にいたメイドらしき人にそう言われた。


 「お帰りになられていたのですね」


 「ええ。助っ人もちゃんと連れてきたわよ」


 そう言ってルナは俺を紹介した。


 「・・・境川生です。よろしく」


 どう挨拶したらいいのかも分からずおまけにあまり英語も話せる方ではないので俺は軽く挨拶をする。


 「日本人・・・?お嬢様、日本の逸材者はあまり良い評判はお聞きにならないのですが」


 「見くびってはダメよ。生は強いんだから。きっとシャルルだって倒してくれるわ」


 メイドが俺に対しいいイメージを持っていないのはスグに伝わった。

 だが、ルナはそれを訂正した。俺は別段悪いイメージのままでも良かったんだけどな。


 「それでシャルルから連絡はあったの?」

 

 「はい。ルナ様が戻られ次第こちらに襲撃をかけることと聞いています。ですから明日明後日にはこちらに現れるかと」


 メイドの言葉にルナは考える。


 「態々私の帰りを待っているなんて・・・。それほど私に見せびらかしたいわけね。ユーフラテス家を潰す状況を」


 「そのようですね。ルナ様は助っ人を探していると聞いていましたが、私はどうもこの逸材者を信用できません」


 そう言って俺の方を見てくる。


 「生はMr.Kを倒した逸材者よ。甘く見ないほうがいいわ」


 その言葉はどんな言葉よりも覿面(てきめん)した言葉だった。メイドは目を見開いて驚いた。

 俺は軽くどうもと礼をした。何だか気まずい。


 「・・・まあお嬢様がそこまで仰るのなら問題ないでしょうね」


 そう言ってメイドは家の中に案内してくれた。

 認めてはいないがルナが言うならって感じか。でもこの家内ならルナはお偉いさんなんだなということを理解した。


 

 家の中は当然広かった。ホテルくらいあるんじゃないかというくらいの広さだ。

 

 「こりゃ、凄い」


 「そう?まあ日本の家に比べるとちょっと大きいくらいじゃない?」


 ルナの感性はどうなっているのか少し気になったが気にしない方がいいのだろう。


 「じゃあ生、疲れてると思うから貴方はそこの部屋使ってゆっくりしてて、私はお父様たちに挨拶してくるから」


 そう言ってルナはじゃあねと言ってトコトコと広い屋敷の奥へと行ってしまった。


 俺は特にすることもなかったので部屋の中に入りベッドにダイブした。

 広い屋敷にお嬢様か。今までのルナを見ているととてもお嬢様という気はしなかった。俺たちと変わらずに生活をし学校に行き飯を食べ寝る・・・。彼女はそんな生活を送っていた。

 俺の知るルナはそれだった。だが、このアメリカに来て俺はルナに対するイメージを少し改めなければならない。彼女は俺の存在位置よりもずっと上の位の人物なんだからな。

 ルナに対して考え事をしている内に俺は段々と眠くなって......いった.....。







 



 「──ッ」


 パッと目を開く。外はすっかりと暗くなっていた。


 「寝ていたの・・・か」


 疲れていたのか俺は眠っていたようだった。

 ゆっくりとベッドから立ち上がると俺はベッドの奥にある机に寝ている人物を発見した。


 「なんでお前がここで寝ているんだ」


 スゥスゥと可愛い寝息を立てているのはルナだった。恐らくは俺の様子を見に来たんだろうが、ルナも眠っている。

 こうしてルナの寝顔を見るのは初めてだった。命といい何でこいつらはこんなにも隙だらけなのかねえ・・・。

 起こすのも尺だったので俺はルナを起こさずベットに座った。


 ルナを見ていると思い出す。ここに来る前に俺は告白をされた。返事はしていないがルナは俺と命が付き合っていることを知っている。

 それをしってルナは告白をしてきた。後悔すると分かっていながらもその気持ちは抑えきれず、俺に向かって発した。

 やはりちゃんと断るべきなのか・・・。だが、もしここでルナに対し返事を出したらきっと俺とルナの関係崩れるだろう。

 そんなことは起きてはならない。これからシャルルを倒すのに俺たちの関係がバラバラになってしまっては勝つことは到底できなくなってしまう。


 「また今度、か」


 今の俺に返事を出すことはできず、俺は寝ているルナの顔をみることしかできなかった。

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