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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
48/130

ロサンゼルス到着

 ──チュンチュンと鳥の鳴く声が聞こえる。朝だ。

 俺は不思議と寝起きが良かった。いつものように二度寝しようだなんて思うこともなく俺は布団から起き上がった。


 「いよいよだもんな」


 そう今日は俺がアメリカに向かう日だ。準備は昨日のうちに済ませてあり、飛行機はルナの方で既に準備が出来ていており、あとは空港に向かうだけだった。

 俺に残された時間はあと僅か。今日は普通に平日だが仕方がない。しばらくは学校を休むことになってしまう。


 「皆には今日って言ってないんだよな」


 俺が今日アメリカに行くと知っているのは命とリア、そして学園長だけだ。御神槌や楠、棗たちには一切言っていない。もし言ったとしたら彼奴らは着いてきそうと判断したからだ。

 御神槌なんて絶対に着いてくるに決まっている。彼奴は強い奴と闘うことに関してはもはや手がつけられないからな。


 「生?準備はいいかしら」


 ルナがノックし部屋に入ってくる。いつものように緋鍵高校の制服は来ておらず、別のところの学生服を来ていた。


 「ああ。この服?これはアメリカの方で来ていた服なの」


 ルナはクルッと一回転して俺にその姿を見せてくる。いつものルナとは違った印象を持つのでこれはこれでなんともコメントしづらい。


 「どう?似合ってる」


 「まあ・・・いいんじゃないか」


 俺は曖昧にコメントをした。


 「・・・反応薄いけどまあいいわ」


 なぜか少しだけガッカリしていた。いやホントなんでよ。

 

 「──それじゃ行きましょうか」


 ルナはそっと俺に手を差し伸べそう言った。これから始まるんだ。アメリカでの大きな闘いが──







 朝早くの羽田空港、そこに行くまでに俺とルナは執事のジョセフに車で送ってもらった。

 空港内には人が少しだけいる。やはりこんなに早くからでもどこかに行ったりする人はいるんだなと痛感する。


 「行っちゃうんだね」


 後ろから声がかけられる。

 命だ。彼女は空港まで着いてきてくれた。本当はリアも行きたがっていたのだが、流石に犯罪者という経歴で顔バレしてしまうので着いてくることは出来なかった。

 

 「大丈夫だ。スグに帰ってくるさ」


 「うん・・・待ってるからね。ずっとずっと・・・待ってるから──必ず・・・」


 涙を流しながら命は俺に対して色々言ってくれる。


 「必ず・・・帰ってきてね」


 その言葉は俺にどんな風に届いたか。別れが惜しくなるくらいの気持ちになってしまう言葉。


 「──ああ」


 俺に感情は存在しない。生きるという目的がなければ生きていることすらおかしい。だが、命という存在がある限り俺は情を取り戻すことができる。俺が守ると決めたものは何があっても守りたいと思うからだ。

 

 「生、そろそろ時間よ」


 ルナが後ろから俺に声をかけてくる。彼女なりに気を使ってくれてるみたいだが時間がヤバイみたいだな。


 「命、ゴメンね。生を連れて行くことになって」


 「ううん。生が決めたことだからいいのよ」


 「でも・・・」


 ルナはルナなりに命に対して罪悪感があったのかもしれない。俺と命を離すことがどんなことかを知ったからなのか始めて会った時とは少しだけ態度が違っている。


 「ルナさん。少しの間だったけど貴方と出会えて楽しかったよ。良かったらだけど生と一緒にまた日本に来てくれたら嬉しいな」


 命は強かった。ルナに対しては笑顔でいるんだ。少しの時間だけど一緒にいて友情が芽生えたりしてるはずだ。当然別れだって辛い。なのに命は耐えているんだ。これ以上ルナに悪い思いをさせたくなくて。

 

 「ルナ・・・行こう」


 これ以上待っていたら命が再び涙を流しかねない。そんなのをルナに見せたら踏みとどまってしまうだろう。俺はそうならないようにルナに行こうと声をかけた。


 

 「──んだ境川ァ、連れねなぁ」


 聞き覚えの声がふと聞こえた。


 「そうね。行くというのなら言ってくれてもいいんじゃないかしら?」


 「親友だろ!?生!!」


 「朝早くからとは、またこれは物騒な出来事に巻き込まれたな」


 御神槌、楠、棗、会長・・・それぞれの声が聞こえ俺は振り向いてしまった。


 「なんでお前たち・・・」


 「けっ、朝早くに連絡あってな。境川を元気に送ろうってな」


 「東雲さんが提案したのよ。もっとも聞いたのはさっきなんだけどね」


 「命・・・お前」


 俺は命の方を見る。


 「ごめんね生。でも皆 生のことが大好きなんだよ。だからしばらく会えないなんてことがあったら皆悲しくなっちゃうよ」


 「そうだぜ生、俺なんて最近お前と遊べてねえんだからなァァ」


 棗がわーわーと泣きながらそう言ってくる。


 「アメリカの逸材者、少しァ興味あったんだけど今回は行けねえみたいだな。頑張ってこいよ境川」


 御神槌はニカッと笑いそう言ってくれた。


 「もう止めても無駄なようね。無事を祈ってるわ」


 「皆・・・ありがとうな」


 そして俺はクルッと振り返りそのまま飛行機の方に向かっていった。

 



 「よかったじゃない生、お仲間がいっぱい来てくれて」


 「ああ・・・」


 歩きながら俺とルナは会話をしている。


 「生?」


 なんでだろうな。感情はとうに捨てたはずなのに何で・・・俺はこんなにも嬉しんだろうな。

 皆には黙っていたのに誰ひとり文句を言う奴はいなかった。命の言うとおり皆は俺のことをよく思ってくれているのが分かってしまう。それがたまらなく嬉しいと感じてしまう。


 「──負けられねえな」


 帰りを待つ人がいる。それを理解した今俺は絶対に負けられないと改めて覚悟するのだった。


 






 「行っちまったな」

 

 御神槌は空港の中を歩きながらそう言った。


 「あーここから学校があるのか。いいなぁ生はサボれて」


 「お前たちくれぐれも遅刻はするなよ。こちらとて遅刻されてはちょっと面倒なのだからな」

 

 クイッとメガネを上げて会長はいつものようにそう言った。


 「へいへい、会長様は厳しいですねー」


 棗は適当に答える。


 「しっかし、規模は外国まで言ったか・・・。境川の奴とんでもねえな全くよ」


 「そうね。私たちが始めて境川くんと出会った時にはまさかこんなことに巻き込まれるような人物とは思ってなかったわね」


 「彼奴はどこまで強いんだよ全くよォ」


 未知数の力を持っている境川。その実力は皆が認めているものでありそれと同時に詳しく知ることはない。

 固定した力を持っていない境川、それが故に彼は強いのだ。


 「東雲さんも知らないのよね?境川くんの力」


 楠は幼馴染である命に生の力のことについて聞く。


 「そうだね。私にも教えてくれないな生は」


 「そこまでして隠したい力なのかしら・・・」


 幼馴染にすら話すことのない力。それは一体どんなものなのだろうか。


 「仮に今まで境川が使ったことのある力から想像はできないのか?」


 会長が一つ提案をだした。


 「そうね・・・境川くんが今まで使ったことあるのは・・・」


 「あーアレだな、身体強化」


 御神槌が頭をボリボリかきながらそういった。身体強化を使われ御神槌は境川と始めてあったと時に敗北している。

 

 「純粋に強化だけなんだけど意外と厄介なんだよなァ・・・アレ」


 速さ、力・・・ありとあらゆるものを強化出来るその力はもはや体術で勝てるすべは少ないということになる。

 接近戦では境川はある意味最強なのだ。


 「後は」


 「時間跳躍(タイムリープ)っていうのかな。生はそれを最近身につけたよ」


 「なんだよそれ」


 「えーとね。《時飛ばし》って言えば分かるかな。生はそれが使えるんだよ」


 「彼奴まぁーた厄介な技身につけてやがるな」


 身体強化だけでなく時飛ばしが使えるんじゃもはやチートすぎる。

 

 「でも本当に謎が大き人物だ境川は」


 会話にあまり参加していない会長でさえこの言いようだ。それほどに境川は力を隠してきているのだ。











 

 ──ゴォォォ、と飛行機は空を飛んでいる。まさかこんな時期に飛行機に乗るなんて思ってもいなかったさ。

 

 「10時間くらいしたらアメリカに着くわよ。それまでは暇だと思うけど景色でも眺めているしかないわね」


 隣に座っているルナはそう言ってきた。 

 日本からアメリカに行くってのは相当な距離がある。10時間もかかるんじゃ結構暇だよな。景色と言っても日本列島から離れればしばらくは海だし。

 だけど知らないうちに俺はウトウトし始めてしまいそのまま寝てしまった。




 「──う!生、起きさない」


 目を開けるとそこにはいつもと違う光景、ルナが目の前にいた。


 「やっと起きた。ほらもう着いたわよ」


 ルナがそう言って俺は窓をみる。そこにはいつの間にか着陸しており10時間も立っているというのに空は明るかった。

 そしてようやく気がついた。これは時差だ。てことはアメリカに着いたってわけだ。

 俺はゆっくりと立ち上がり飛行機から降りる。そして日本にはない様々なものが目に入った。


 「(これがアメリカか)」


 周りから聞こえるのは日本語ではなく英語、歩くたびに外国ということを思い知らされる。

 少し歩き俺とルナはアメリカのロサンゼルス国際空港内に出てきた。

 そこには様々な国籍の人物がおり、これから飛行機に乗るものや俺たち同様このアメリカのロサンゼルスに到着している人など沢山だった。


 

 「Oh? Luna, is not it?(おや?ルナじゃないか)」


 俺たちの方から聞こえた英語はルナに対するものだった。


 「貴方・・・シルバー・・・どうして!?」


 シルバーと呼ばれた男は銀色の髪の毛をしており目が緑色の人物だった。

 シルバーは俺たちに近寄るなりこう言ってきた。


 「へっ、ここ最近見ないと思ったらまさかこんな猿を連れてきているとはな。落ちたものだなユーフラテス家も」


 肩をガッとやりシルバーは英語でルナにそう言った。俺にはなんて言ったかは分からなかった。

 無の部屋では外国語というものは学ばなかったため、いくら逸材である俺でも理解することはできない。だが、ルナに対していい言葉を言っているようには到底思えなかった。


 「お前ごときがシャルルさんに適うわけないだろ!」


 そう言って拳を上に上げシルバーはルナの顔を目掛けて拳を繰り出した。


 ──が、


 ガシッ、


 「な、なんだテメエ・・・!」


 俺はシルバーの腕を掴みそして睨んだ。


 「Shut up! You scum.(黙れ下衆が)」


 この空港に来てから俺はこの国の言語を学んでいた。耳を澄ませこの空港にいる人物たちの話し言葉、それを聞き俺は瞬時に記憶した。

 そのおかげか俺は自然と口から英語が出た。


 「あ?なんだテメエ・・・」


 「聞こえなかったか?ならもう一度言おう──黙れってんだよ下衆が」


 ルナを馬鹿にするもの・・・ルナの家を馬鹿にするなんて仲間を侮辱されるのと同じだ。そんなの──許せるかよ。

【キャラ説明】

■シルバー

性別:男

能力:──

説明:アメリカ ロサンゼルスの空港にてルナを待ち構えていた人物。逸材能力はないが、筋力はそこそこあり、動きもそれなりに動くことが出来る。外人ならではの体格の持ち主。

容姿:銀色の髪/緑色の瞳

学校:──

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