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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
45/130

──守ると決めたから

 「──なあ命。俺と勝負をしよう」


 俺は命に対してそう言った。


 今日の命はずっと俺を見ていた。それは俺に対して疑問を抱いていたから。だけど俺の目的は変わらない。

 みんなを、命を守る・・・それだけだ。

 それを分かってもらうにはここで命と一度やり合うのがいいだろう。


 「しょ・・・生・・・」


 赤い髪の毛が夕日と一体化し、その姿は綺麗に輝いているように見てる。

 今の命は100パーセント逸材能力を引き出した状態──つまり(よう)が表に出ている状態だ。

 以前ルナと闘った時、命はその姿で闘っていた。即ち影を最大限出すことで命は闘うことができるということだ。


 「命・・・・いや、影。折角の機会なんだ。お前が勝てば俺を好きにしていいんだぜ?」


 その言葉に命はピクンと反応を見せた。


 「どうしてそこまでして」


 「闘えばわかるさ。俺の考えってやつがな」


 そう。闘えば分かる。俺はこの闘いに皆を守るという意思を見せつけるんだ。

 グッと拳を構え俺は戦闘態勢に入る。


 「・・・ッ」


 命も覚悟を決めたのか、少し姿勢を下ろし始めた。

 そして──


 ビュ──


 横に大きく移動し、俺の直線上から位置をずらす。

 真っ向からでは勝てないと理解している。よく考えて動いているみたいだな。

 命は直線で向かってくることはせず、反復で右左に移動しながら俺に近づいてくる。

 

 「だが──遅いな」


 俺の近くに来た命はダッシュの速度に加えの回し蹴りをしてきたが、俺はそれをスッと避ける。

 しかし、命はそのまま片足に力をいれ、


 ダンッっと少し宙に浮いた。


 「これは・・・!」


 グルンと身体を回転させ、再び回し蹴り。

 

 「くっ」


 俺は避けることができず、拳を前に突き出し正面からの激突を防いだ。

 ザザ、と少し後ろに吹き飛ばされたがうまくガードすることができた。


 しかし今の戦法、一度目の回し蹴りは避けられることが前提の攻撃の仕方だった。俺が避けることを想定し、地面に残った片足を使い、僅かながらの跳躍をしそのまま勢いをつけ二度目の蹴りを喰らわせる。もし一撃目を避けなかった場合、二階の攻撃を喰らっていたことになる。

 これが「未来視」か・・・ッ


 命の能力、未来を見通す力、影の状態では常にその力が発揮されている状態だ。つまり俺の動きは完全に読まれていると言っても過言ではない。

 だが、今のように一撃目を避けることのできる場合もある。つまり命の見ている未来はやり方次第で直前に変えることが可能ということになる。

 近ければ近いほど変えることはできない、逆に遠い未来なら遠いほど運命を変えることができるのだ。

 つまり未来を読めたとしても1分とかの場合変えることが可能となるのだ。秒単位なら無理かもしれないが攻撃や速い動きならなおさらだ。


 「やるじゃねえか命。お前何か習っていたっけか?」


 「別に特別これといったことはしてないわね」


 そう言って命は再び俺に向かってくる。

 今度は正面から、


 「正面からとは随分と自信家だな」


 俺は命に向かって拳を繰り出そうとするが、


 ガッ、と何かに(つまず)いてしまった。


 「なに・・・!」

 

 これは、コンクリートの割れ・・・!

 さっき命が跳躍を行うときに力を入れた際にそこの地面だけ少し段差が生まれていた。しまった・・・。


 「私の勝ち──」


 そう言って命は俺に向かってもう一度廻し蹴りを撃ってくる。

 だが──

 

 ──ダン、ガッ


 俺は避けることせず、そのまま前に倒れ手で地面を抑え逆立ちの形になり足で命の攻撃を止めた。


 「う、嘘!?」


 「・・・未来視か。まさかここまで計算しているとはね・・・ッ。最初の攻撃は俺に対して行ったのではない。地面に段差をつけるために行った行為。ここまで計算されていると流石に適わねや」


 ブンと命を吹き飛ばす。

 俺はそのまま空中で一回転し、着地をする。


 「完敗だな・・・命。この俺に予想外の攻撃を2度も仕掛けたんだ。これ以上やっても無駄だろうよ」


 俺は両手を上にあげ命にそう言う。

 

 「嘘...生本気じゃなかった。生の動きは避けているだけ。一度も攻撃を仕掛けてこなかった」


 「──言っただろ、俺の目的は皆を守るということ。それ即ち俺は仲間には手を出さない」


 俺と闘えば命は気が付く。俺の願いとこの闘いには大きな矛盾があったということに。仲間を守りたい俺が仲間である命と闘う。そんなことは必然てきにありえないことだ。

 ルナやリアは戦闘経験があるようだから手合わせ程度はするが、命は素人以下の実力だ。そんなやつに本気で挑めるほど俺は馬鹿じゃない。


 「そんな・・・・そういう事だったの」


 フッと髪の毛が赤色から黒色に戻り命はガクッと膝から崩れ落ちる。どうやらそうとう無理をしていたみたいだ。

 俺は駆け足で命の元に近寄り、


 「大丈夫か?」


 そう声をかけた。


 「ちょっと疲れただけ・・・大丈夫」


 無理をしていたのか・・・。影の時はある意味命でなくもうひとりの人格みたいな感じだからきっと影は耐えれても命は耐えれないんだろうな。


 「でも生の言っていることは本当なんだね。私たちを守る・・・でもお願いだから無理だけはしないでね」


 無理か・・・・自分は俺と闘うだけで相当な無理をしていたというのによく言うぜ。

 だけど悲しませたくはないもんな。

 

 「ああ──無理はしないよ絶対」


 目の前にいる最愛の彼女には悟られてはならない。この先俺は絶対に無理があることをするだろう。アメリカの逸材者であるシャルル・ヴァン・シュトローゼ、奴と闘う時俺は生きて帰れるかも分からない。

 点火を使う逸材者、その攻略法だってまだ見つけ出していないのだから。


 チカ....突然命の背中に赤い光が照らされる。この光は遠くからまるで光線を当てられているかのような光・・・てこれは!


 「命!!」


 俺は命をドンとその場から突き放す。

 その時だった。


 パァン・・・


 どこからかそんな音がした。命を突き飛ばした俺の手はその謎のものにより打ち抜かれた。

 だが今のは銃によるレーダー・・・どこからか俺たちを狙っていたのか・・・?


 不意だったため銃弾をつかむことができず俺の右手は射抜かれ力が入らなくなる。


 「生・・!!」


 「命・・・校内に入るぞ」


 俺は力を振り絞って校内に避難をする。


 「無事でなによりだ」


 俺は左手で命の頭を撫でる。

 今の攻撃は遠くからではない。レーダーが映るということはそれそうに近い位置からの狙撃。

 やり方的に有田院(ありたかき)の仕業ではない。そうなると新しい敵・・・シャルルの前にか。


 俺は久々に目に力をいれあたりを見回す。この力も久々だな。音で人の移動位置を把握、目で遠くを見通し映像の取得・・・この二つをかけあわせることで俺は遠くに移動しているかのように様々な場所を見通せる。

 だが、近くに銃を持った奴などいなかった。放課後だから生徒も少なく滅多に犯行が行えるとは思えない。

 ましてや俺たちがいたのは屋上、狙うとすれば空か、ビルのどこからかと高い位置からしか狙えないはずだ。

  

 その時だった。

 

 カンカンカンと何かが弾き変える音かする。これはなんだ・・・。

 その音はどんどん俺たちの方に近づいている。


 「ッ・・・みこ──」


 パァン・・・俺が命に伏せろと言おうとした瞬間、階段から飛んできた弾丸は俺を貫いた。


 「生・・・!?」


 驚くべきことはなぜ曲がる箇所が多い階段をすり抜けてきたのか。カンカン鳴っていた音は恐らく銃弾が弾きかえる音、誰か分からないが恐ろしいほどの「跳弾」を行ったのだ。

 だが幸いにも銃弾が当たったのは脇腹のあたり、俺の命には別状ない。


 「・・・どこに身を潜めても無駄ってわけか」


 どこからか俺たちを狙う人物。それは一体どんな意図があるのか分からない。だが、止まっていては再び跳弾を使われ俺や命が狙われかねない。


 「移動しなくては・・・」


 俺はググと全身に力をいれ、命をお姫様抱っこした。


 「ひゃ、ちょ・・生・・・!?」


 命は何が起きたのか分からなく戸惑っている。


 「逃げるぞ!!」


 俺は全力でダッシュし、そのまま再び屋上に出て、そのままフェンスを乗り越え飛び降りた。


 「え?ちょ、生・・・嘘でしょ!!?」


 俺が飛び降りた瞬間、後ろから弾丸が俺たちを上をビューンと通過した。

 あぶねえ後一歩遅ければ脳天打ち抜かれてたぜ。


 足の筋肉に力をいれ、俺はダァン!!!と大きな音をたて着地する。幸い放課後でよかったよ。目立つこともなく着地できた。


 「・・・生」


 俺と命の目の前にいたのはルナだった。

 そういえばルナを待っていたんだったな。

 いきなり俺達が上空から降ってきたことにルナはポカーンと口を大きく開けていた。


 「って生、ボロボロじゃない。右手も無理しているようね」


 使い物にならない右手で命をお姫様だっこしていたおかげでもはや完全にイカレてしまった。


 「ご、ごめんね生」


 「いやいいさ。お前を持てたのも奇跡に近いだろう」

 

 さて、といい俺は命を下ろしゆっくりと立ち上がる。


 「──ここなら広い。いい加減出てきたらどうだ」


 俺はそう言った。


 「ちょ、命。これどういう状況よ」


 ルナは状況が分かっておらず命にヘルプを求める。


 「うーん。何か敵に襲われてるみたい」


 「敵!?嘘でしょ・・・気付かなかったわ」


 二人がよくわからん会話をしているとき、道路の方からひとりの男の人物が姿を現した。


 「お出ましか」


 男の容姿は俺たちと同じで学生服を来ている。いや、この学生服。どうやら緋鍵高校の生徒のようだな。

 

 「ルナ知っているか?」


 俺は小声でルナに問いかける。


 「ごめんさない。私これでも転校生だから・・・」


 おっとそうだったな。てことはこいつの正体は分からないか。


 

 「お前が境川生か」

 

 黒髪でショートの男は俺をみるなりそう言ってくる。

 手には銃を持っておらず、制服に仕込んである形跡もない。

 こいつは正真正銘 手ぶらだった。


 「お前・・・・何者だ」

 

 男は表情を変えないまま、口を開きこう言った。


 「俺は伊吹龍(いぶき りゅう)──まあなんだシャルルの仲間って言えばわかるか?」


 その言葉にルナと俺は凍りつく。

 シャルルの仲間。伊吹、そうやつは言った。日本にシャルルの仲間がいるのか。


 「実際シャルルには会ったことがない。俺は実力を買われお前たちの前に立ちはだかっているだけさ」


 「目的はなんだ」


 「おいおいもっと会話を楽しもうぜ」


 伊吹はやれやれといった感じだった。


 「まあいいか──俺の目的、それは逸材者の除去だ」


 逸材者の除去・・・。


 「俺も逸材者だ。だがここ近年で逸材者に人数は増加し、世界は悪人で染まりつつある。日本は比較的平和だが他国は争い、そして人々を巻き込んでいる。世界で逸材者という存在は戦争の道具に過ぎない」


 伊吹の言葉は信憑性がある。何しろこいつはどこからか俺たちを狙撃するという荒技を持っている。


 「戦争をしている中にも色々な派閥がある。絶対王者である極悪非道のグループ。方や戦争の終結を願う極悪に立ち向かうグループ。他にも色々あるが大きく分ければこんな感じだ。そしてあるとき言ったんだよ」


 ──逸材者がいなくなれば、戦争は終わるんじゃないか?


 「一部の人々は半ば諦めていた。いつかは訪れる終戦、だがそんな未来は来ない。戦っても戦っても戦争は終わらない。なぜ人類は戦争をするのか?それすら理解できない。そんな中、逸材者という存在を消すことにより、戦争を集結できると判断した」


 確かに逸材者がいなくなれば犯罪の数も減り日本だけでなく世界は平和になるだろう。だが、世界規模で見れば逸材者は数多く存在する。実質全てを倒すなんて不可能なんだ。


 「そうだ。不可能・・・だが、手始めに最強と謳われている貴様を倒すことによって、少しは変わるんじゃないかと思う。そんな時、俺は雇われた。シャルルにな」


 こいつは金で動く人物か。


 「Mr.Kを倒したそうだな境川。そんな貴様を殺せとシャルルは命じた。それが俺の今いる目的だ」


 「逸材者の一人を殺せて以来も解決ってか?」


 「そうだ。現に貴様を倒す手立てはもう終わっている」


 そう言って伊吹は目を閉じる。

 カンカン、とまたどこからか音がする。どこかで跳弾していたんだ。俺たちが会話しているときからずっと。


 「ちっ」


 俺は地面を殴り破片を散らばらせる。これでガードできるだろ。


 「甘い」


 ヒュんヒュウン・・・弾丸は4発、全て地面の破片をスルーし


 「しま──」


 ドシュ、ドシュ、ドドシュ....俺の足、左手、肩、そして顔を射抜いた。


 「生!!」


 「なっ・・・生・・・」


 

 「──呆気ないものよ」


 バタン、俺は射抜かれそのまま後ろに倒れた。


 「俺の逸材は《狙撃の逸材》──どんなところにいようと確実に仕留める位置範囲処理能力、それが俺だ」


 

 正直言ってこいつは強い・・・どんなところから居ても俺たちを確実に狙い仕留めてしまう。現に今こいつは俺の防御を読みそれを踏まえた上での跳弾をし、俺を射抜いた。

 

 「貴様・・・生きて・・・」


 俺はググっと起き上がる。


 カランと額から二個の弾丸が落ちた。


 「それは──」


 そう俺は屋上で撃ってきた弾をもち飛び降りたのだ。そして4発の弾丸が俺を襲う瞬間、時間跳躍(タイムリープ)を一瞬発動し、射抜かれる前の左腕で持っていた弾丸を顔の前にピンと弾いたのだ。

 そのおかげで顔を目掛けて放たれた弾丸は生憎にも目の前の弾丸にぶつかり威力は半減する。俺を射抜く力がなくなった弾丸は俺に当たるだけの石ころと変わらない。


 「俺を仕留めるには脳を狙うって予想できていた。おかげで狙いが読みやすかったぜ」


 「・・・なるほど。そういうことか」


 伊吹は感心するかのように俺の説明に聞き入っていた。それほど余裕があるということだ。


 「だが、その状態で何ができるというのだ。もはや貴様は動くことすらできない。死ぬのが遅くなっただけだ」


 そう言って伊吹はどこからか拳銃をバッと取り出す。


 「──ルナ・・・命。伊吹に勝つにはお前たちが必要だ。力を貸してくれ」


 俺は霞んだ声で二人にそういった。

 

 「・・・生」


 命は俺の方を見て、


 「私は生に死んで欲しくない。そのためだったらなんだってするわよ」


 そう言ってくれた。

 ルナは、


 「ここで借りを作っておくのも悪くないわね。それにここで死なれたらシャルルは誰が倒してくれるのかしらね?」


 そう言ってボォっとオーラを展開させる。


 「──勝つぞ・・・!」


 伊吹に勝つ、そのために俺は始めてチームワークで闘うことを決意した。

【キャラ説明】

伊吹(いぶき) (りゅう)

性別:男

能力:「狙撃の逸材」

説明:どんな位置からでも標的を狙うことのできる絶対領域を持つ。跳弾を駆使して建物の中なども狙うことが可能

容姿:黒髪/ショート

学校:緋鍵高校 1年

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