孤独を求めて
「──ねえ兄様・・・。兄様には話すわ。"私の過去"について」
そう言ってリアは語ってくれた。自分の犯した行動について....
──昔アメリカのある家にて一人の少女が誕生した。
少女の家は貧しくもなく裕福でもない。そんな家庭で生まれ、育った。
名は「リア・ルノアベル」名づけられ、父からも母からも溺愛され、彼女は優しい環境で育っていた。
「リア~」
父が仕事に行っている間、私は母と遊び過ごしていた。それがとてつもなく楽しく、時間はあっという間に過ぎていった。
ごく当たり前の生活をし、私は幸せだった。
でもある日の出来事だ。
それは突然訪れたのだ。
パチン、そう音がした瞬間だった。私の家は一瞬で炎に包み込まれた。
「な、なに!?」
母はいきなり家から炎が出てとてもパニックになっていた。
「り、リア。外に逃げるわよ」
私の手を掴み母は玄関へと走り出す。
だが、そこには一つの影が立っていた。
「──やあ、ルノアベル。そしてさようなら」
そう言ってその人物はパチンと指を鳴らし炎を出現させる。
そして焼かれた。母が・・・。
「お母さん!!お母さん!!!」
この辺から炎を出すことなど到底できるはずもない。なのに私の目の前では一瞬で出現し、母の身体を燃やしたのだ。
「運がよければまだ助かるよ。だが、君の人生は今闇へと変わるのだ」
そう言ってその人はこの場を去る。
それと同時に消防車が私の家に駆けつけ炎を沈下させてくれた。
母はスグに近くの病院に運ばれ一命はとりとめた。だが、
「・・・貴方、名前はなんていうの?」
面会に言った私とお父さん。だが最悪なことに母は脳を焼かれ"記憶障害"を引き越してしまった。
その関係で母は私のことやお父さんのことを一切忘れてしまった。
「リアちゃんって言うの・・・フフ、可愛いわね」
その言葉は決して私を子供だと思っていない。赤の他人と接するときの口調だったのだ。
それからだった。母の状態を受け止めきれない父は性格が荒れ、次第に私を育てることを放棄し、家を空けるようになった。
数日置きに帰ってくるものの、食事はまともに作らないし私とも会話をしてくれない。
私は酷く耐えれなかった。一瞬で大切な家族を失ったのだから。
「・・・・・ッ」
でも私にはどうすることもできない。母は別人、父は荒れはてた。この二人はもう二度と交わることのない関係だと悟った。
『君の人生は今闇へと変わるのだ』
私はあの時そう言われた。結果、その通りに私の人生は闇へと変わっていった。あの楽しかった時間はもう二度と戻っては来ない。
優しかった母も父も帰ってこない。二人は私を置いてどこか別の世界に行ってしまった。そんな気がしてしまった。
「こんな世界・・・止まっちゃえばいいのに」
それは単純に思ったこと。だが、
ピィィィン。そんな音が私の耳に聞こえた。
バッと顔を上げるとそこには奇妙な光景が存在していた。
空中に浮いている水滴、そしてテレビの映像も停止している。
「これは・・・」
まるで時が止まったかな様な現象だった。
だが、その現象はすぐに消え、浮いている水滴も落ち、テレビも正常に動き始めた。
一瞬何が起きたのか理解できなかった。
でも願ったから止まった。それは理解できた。この世界が止まってしまえばいいのにと願ったから一瞬世界が止まったのだ。
「だったら・・・」
私は両手で胸を抑え、願った。
「──お母さんとお父さんの時が止まって・・・永遠に....」
その日から父は帰ってこなくなった。病院に行き母も息を引きっとたと聞かされた。
数日後に父も突然死と告げられ私の願いは叶った。
だが、どういうわけか私の願ったことだと警察にバレ、私は捕まった。家族を殺した容疑で。
「・・・・こんなはずじゃ」
私は家族全員で楽しく過ごしたかっただけ。なのに・・・私は・・・・。
家族を失い、家も失った。私に残されたものは何一つない。
その日から私は暗い牢獄で生活するようになった。だが、その空間は私の精神を研ぎ澄ませ、あの能力を開花させた。
空間停止能力、それを自覚したとき、私は真に強くなった。そしてこの牢屋を脱獄した。
走った。私は逃げるためにひたすら。そして同時に願った。今度は失敗しない。私を助けてくれる・・・そんな人に出会えることを。
牢屋にいたとき一つの書置きの手紙が存在していた。
『──リア・ルノアベル。もしこの牢屋を出る機会があるのなら、日本という国を目指せ。そこでお前を介護してくれる優しい人物が居るだろう』
差出人は分からなかった。でも私は手紙の通りに日本という国に向かって走った。
飛行機に乗り込み私は飛行機の一部分を停止させ乗り過ごし無事に日本にたどり着いた。
私を介護してくれる人を探し、今度はもう誰も殺したくはない。この能力を持って私は生き延びる。
もし助けてくれる人がいたとしてもなるべくは頼りたくはない。それが一番の幸せだから。
どうせ私の力で殺してしまう。私という存在がいるだけで周りは不幸になっていくんだ。
「でも・・・・なんでだろう」
私の瞳からはポツポツと涙がこぼれ出る。
「どうしてこんなにも・・・人を求めるの・・・」
一人の方が楽と思っていても本当は介護してくれる人に会いたい。そう思ってしまっている。
まだ精神が未熟だから?違う。私はお父さんとお母さんを失ってる。家族と過ごした時間は短いものだった。
だから──家族という存在が居てほしいのだ。
私を受け入れてくれるそんな優しい人物。それを求め警察から逃げながら私は探すのだった。
兄様・・・境川生と出会ったのはそれから数時間先のこと....




