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逸材の生命  作者: 郁祈
第四章 アメリカの才女編
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新しい家族

 「時間停止・・・それってやばいじゃない」


 ルナはリアの能力に驚きを隠せなかった。


 「私の能力も封じられちゃうね」


 (みこと)の能力である未来視も時間停止の前では歯が立たない。


 「こうなったら武力行使よ!!」


 ルナは飛び出しリアの元に駆け寄る。

 だが、


 リアの時間停止によりルナの攻撃は尽く交わされてしまう。


 

 「(しょう)・・・このままじゃルナさんもやられちゃう」


 「ああ。そうだな」


 やられる。それはリアの持っている刀で切られるということだ。だがリアは時間停止の間いつでも切ることはできるはずだ。それなのにルナが攻めて来ている間、時間停止しか行っていないのだ。

 それに今の現状よく観察していると分かるのだが、リアが攻撃を仕掛ける時がないのだ。

 さっきはルナのオーラを切ったが今はただ攻撃をかわすことに徹底している。


 

 「どうしたのかしら?交わすので精一杯なわけ?」


 「一発も当てられないのによくそんな口が聞けますね」


 ルナの挑発にリアは乗らない。彼女は自分のことをよく知っているようだ。

 

 時間停止能力。それは一見最強でチートと(うた)われる力だ。だがその能力を破る方法はいくつか存在している。

 まずよく考えられるのは「同じ力で相殺させる」。俺自身が時を止め、先に攻撃を仕掛けるという方法だ。

 次に細かな細工や毒殺。要は相手に時間停止をさせないで倒すという方法。だがこれは実際に行うとすると可能だがハードルがとても高い。無理だな。

 これは仮説だが時間は4次元とされている。故に4次元以上の次元から攻撃することが可能なら相手に認識されず倒すことが出来るだろう。

 だが、そんな驚異な力は逸材を持ったとしても不可能に近いだろう。

 つまり人間が努力し時間停止を破る方法など存在しない。漫画や小説、フィクションの世界ならいくらでも可能だろう。


 「・・・いや、攻略できるか」

 

 能力という観点は無敵だ。だがその無敵な力も使用者が弱っていれば話は別。

 リアの状態ははっきり言って弱っている。脱獄してきて間もなく、体力が殆どない状態だ。つまり精々時間が止められても1秒か2秒程度だろう。だから俺たちを殺せないんだ。


 状況を見るとリアは時間停止をせず鞘でルナの拳を(さば)いている。


 「生、ルナさんが押し始めた」


 「ああ・・・そのようだな」


 体力のない状態のリアでは時間停止は行えない。これはルナの勝ちだろう。


 「もらったわ!」


 ルナはトドメとばかりにオーラを再び出す。オーラを乗せた攻撃なら鞘を破壊しリアに攻撃を与えれるのだろう。

 

 「──ッ」


 リアにルナの拳が当たろうとした瞬間、リアの居た位置が少しズレ攻撃が当たらなかった。

 ルナの攻撃はリアに届かず地面に突きつけられた。


 「なっ!!」


 

 「ルナさんの・・・攻撃が・・・」


 ルナは攻撃を外し、大きな隙が生じてしまった。

 リアは鞘から刀を抜刀しそのままルナの頭から刀を振りかざした。


 ガシッ──


 俺は時間跳躍(タイムリープ)を使い、ルナの前に一瞬で移動した。

 

 「ったく、抜け目のないやつだ・・・。一瞬だが止めたか」


 リアの刀を掴みながら俺はそう言った。


 「嘘・・・貴方さっきまで向こうにいた・・・」


 「悪いが俺の得意分野は高速移動でね」


 実際は違う。だがよく使う技なので最近は得意といっても過言ではなくなっている。


 「日本人ごときに・・・私が・・・」


 紫色の瞳を強くしリアは刀に力を入れる。

 

 「日本人ごとき、か」


 ググググ・・・力を入れた刀を動かさず俺は握り締める。

 

 「──確かに日本人は外国と比べれば大層弱者の国だろうよ。逸材でもお前たち海外には遠く及ばない。誰が初代逸材者かは知らねえがMr.Kだって日本人だったんだぜ」


 「あの人は・・・特別だから」


 逸材者のみんなはMr.Kをとても尊敬している。それは彼が逸材者として地位が高いからなのだろう。年もかなりとっていた。

 つまり今生きている中では彼は逸材者として一番年長の部類だったのだ。俺が倒すまでは・・・。


 「彼奴が特別なのは理解しているさ。でもな俺は奇しくも彼奴と3年間共に過ごしてきているんだぜ?」


 望んでいたわけではない。だが彼奴といた三年間、それがあったからこそ俺は強くなれた。


 「貴方・・・何者なの・・・・」


 「俺か?俺は境川生(さかいがわしょう)──」


 俺がMr.Kに言われた一言、それは


 「逸材者の最高傑作、それが俺だ」


 その言葉に驚いていたのはリアだけではなかった。同じアメリカの逸材者であるルナも今の言葉に驚いていた。


 「最高傑作・・・・生、貴方・・・」



 「リア、教えてくれるか。なぜお前は家族を殺した?そしてなぜ脱獄をした」


 理由がなければ家族を殺すことはない。そして理由がなければ脱獄なんて愚かな真似はしないはず。


 「・・・・・」


 しかしリアは俺の質問に答える様子は無かった。


 「喋りたくないのなら今はいいさ」


 俺はそう言ってしゃがみこみリアの頭を撫でる。


 「お前これから行く宛あるのか?」


 「生・・・まさか」


 「生!それは流石に」


 命とルナは俺の言いたいことが分かったような口ぶりだった。


 「・・・このままお前を放置しておけばいづれ日本の警察に捕まり、お前は更に重い処罰になるだろう」


 「・・・・」


 「だったら少しの間、俺の家に来ないか?」


 リアはきっと何か事情がある。そう思ったから俺はそう言った。


 「でも生・・・そんなことしたら」


 「そうよ!もし見つかったら私たちまで罪になるのよ!!」


 「──見つからないさ」


 俺はそう言ってリアの髪の毛に触れる。

 そしてルナと命の方をみて俺は、


 「いいだろ?」


 「ま、まあ・・・生がいいならいいけど」


 命は納得してくれる。


 「もし警察に見つかったら、あ、あんたが責任取りなさいよね!」


 ビシッと指を刺し、なんだかんだでルナも納得してくれたようだ。


 「それじゃ、リア。俺の家に帰ろう」


 そう言って俺はリアをお姫様抱っこする。


 「きゃ・・・」


 慣れていないのかリアはボッと顔が赤くなり長い髪の毛で顔を隠した。

 

 「帰るか」


 俺は新しい家族を連れて、家に帰ったのだった。







 

 ──現在俺の家には人が増えた。

 幼馴染で今は彼女の「東雲命」、小さい体でポニーテールが特徴のかわいい女の子。

 命は俺の家には住んでいないが家が隣ということで朝ごはんや色々手伝いに来てくれているから実質住んでいるのと変わらない。


 そしてアメリカから来た才女と呼ばれる「ルナ・ユーフラテス」

 金色の髪の毛でエメラルドの瞳をしている。こうなんていうかアメリカ人らしい女の子だ。俺たちは気軽にルナと呼んでいる。


 そんで新しい俺の家に来た女の子。

 赤い髪をし紫の瞳をした。命よりちょっと身長の高い「リア・ルノアベル」

 犯罪経歴を持ちなお脱獄犯という罪に罪を重ねた子だ。だが訳ありっぽく俺は彼女を(かくま)うことを決めた。

 リアと呼んでいる。空間停止能力を持っていて意外と闘ったら勝ち目のない奴だ。


 

 三人とも女性の平均身長より小さい。そのせいか少しだけ俺の視線は下に行く事になる。首が疲れるよ。

 

 「・・・増えたもんだ」


 元は家族がいなくて俺一人だったのに、こうも女子三人が俺の家に居ることになっている。

 命は幼い時から接してたからいいとしてルナは一種の押しかけだ。リアは俺が引き込んだから後悔ないけど・・・・。

 

 「・・・・・」


 「・・・・・」


 「・・・・・」


 なぜか俺たちは無言だった。なんというか気まずかったのだ。

 だが、リアは違った。


 「兄様~~!!」


 風呂から上がりパジャマを着たリアはリビングに来るなり俺に抱きついてきた。


 「ちょ、!!」


 命は立ち上がった。


 「り、リア・・・どうした」


 「えへへ~~兄様ぁ~~~」


 リアは俺に抱きつき顔を身体にくっつけてくる。なんだろうかシャンプーの匂いがとてもいい。

 

 「ちょ生から離れなさい」

 

 命はリアを離そうとするがリアは離れようとしなかった。

 

 「・・・なんというかリアってこんな人物だったのね」


 ルナは呆れたようにこの光景を見ている。


 「そういやリアって何歳なんだ?」


 ふと疑問に思った。ルナは俺たちと同い年だがリアはどう見ても俺たちより年下に見える。


 「私?14歳だよ」


 その言葉に全員が凍りついた。


 「・・・リア。嘘でしょ」


 ルナがそう言ったがリアは。


 「ううん嘘じゃないわよ。私は14歳であってるわよ」


 てことは俺たちより下なのか。それで逸材者か・・・生まれつきじゃないから目覚めた時期は天才肌というわけか。

 リアをまじまじと見て俺は気がついた。


 「なあリア。お前下・・・」


 リアが来ているパジャマは上しかなかった。


 「ん?履いてないよ??」


 その言葉に命とルナが大きく反応する。


 「ちょ、それ・・・」


 「生!!離れなさい!!」


 さっきまで傍観者だったルナも命と一緒に俺とリアを引き剥がそうとしてきた。


 「ちょ、お前ら」


 強引に引っ張られるも俺は二人を止める。


 「少し落ち着け」


 「はああ・・はあ・・落ち着けないわよ」


 「二人共怖いよ」


 リアは二人を見てそう言った。


 「家族を平気で殺すあんたには言われたくないわね」


 ルナは悪気はなかったのだろうがそう言ってしまった。

 そのときリアの表情は急に暗くなった。


 「──ルナ!!!」


 俺は叫んでしまった。


 「あっ、いや・・・・その・・・」


 だが少し遅かった。リアは俺から離れたったったと二階に走っていってしまった。


 


 「別に・・・私は・・・・」

 

 ルナはやってしまったと言わんばかりの顔をしている。


 「分かってるさ。だが、こうなってのは仕方がない。以後気をつけよう」


 俺はそう言ってリアを追い二階に向かった。







 コンコン、と二回ノックし俺は自分の部屋に入る。

 そこには可愛らしく体育座りをしてるリアの姿があった。


 「よおリア。ルナだって悪気があったわけじゃない。分かってくれ」


 ルナの後ろに立ち俺はそう優しく言った。

 

 リアはそのままの姿勢で、話してきた。


 「分かってる・・・・。でも私はあの話題になるとどうも反応してしまうんです」


 「・・・・立ち直ったらまた来い。下でみんなが待ってるから」


 俺はそう言って部屋を出ようとした。

 その時リアは、


 「──ねえ兄様・・・。兄様には話すわ。"私の過去"について」

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