外国からの脱獄犯
ザーザーと雨が振る音が聞こえる。
パシャパシャと水溜まりを踏み私は走っている。
「逃げたぞ!追え!!」
近くからは警官の声がする。気づかれたら私はまた牢獄戻りだ。
逃げるんだ・・・この国から・・・・!!
私はとある荷物の箱に入り、身を潜め、飛行機に運ばれた・・・・。
──数時間後、日本。
「...ん」
私は目を覚ました。どうやら気がつかれることなく、逃げることに成功したみたいだ。
でもこの国に身を潜められるのも時間の問題。私という存在はスグにこの国でも知られてしまうだろう。
「お腹・・・減った・・・」
フラフラと空港から出て、私は意識を頑張って保ちながら歩き、この場所から離れるのだった。
「えー・・・ただいま新しく入った情報です」
俺はこの日本にいる最後の休日は家で過ごすことにした。
明後日からはいよいよアメリカだ。
テレビのニュース番組を見ながら俺は意識を強める。
「新しく入って情報ですと、『リア・ルノアベル』という15歳くらいの女の子がアメリカの刑務所から脱獄し、この日本にいるとの情報です」
アメリカの脱獄者か・・・。物騒なところなんだなぁと俺は思う。
「生?なにそれニュース??」
「ああ。アメリカの脱獄犯だと。今日本に来ているらしいぜ。見つければ金と名誉くらいはくれんじゃねーか」
「ふーん」
俺と命は大して興味がなかった。「逸材者」と言われれば少しは過剰に反応したのだろうが、あくまでリアと言われる人物は一般の罪人だ。俺も命もましてや御神槌だって動くことはないだろう。
だが、俺の家に絶賛居候中のルナは、
「嘘・・・リアが・・・」
丁度二回から降りてきてたらしく、ニュースを見て驚いていた。
「知り合いか?」
「いえそういうわけじゃないんだけど、リアは恐ろしい犯罪者ってことを聞いてことがあります」
「なあルナ。そのリアって子は逸材者か?」
「いえ・・・そういう子ではないと思うわ」
ならこの件は関係ないな。日本の警察に任せておけばスグに見つかるだろ。しかも赤髪の女の子なんてこの日本から見たら珍しすぎる。一発で分かるだろ。
「でも物騒よねー。脱獄して日本に上陸してるとか普通に考えたらありえない事じゃない?」
「そうだな」
「どういうことよ」
俺と命の会話にルナは着いてきていなかった。
「リアって奴は時間的に考え飛行機に潜って日本に来たと見て間違いない。だが、飛行機に乗るには厳重なセキュリティが存在している。それを掻い潜って来れる人物はそういないだろう」
「なるほど・・・」
「第二の考えとすれば荷物に紛れてきたかだ。だが、貨物室の温度は冷蔵庫並みに冷えると聞いている。そこに人間が入り込めば数時間で凍死するだろうな」
貨物室に入る荷物だって中身の確認をされるはずだ。普通に考えどの方法を用いてもリアが日本に来る手段は存在しないぞ。
「逸材者・・・としか考えられないわね」
ルナが腕を組みながらそう言った。
「務所で逸材者になったと考えるのが自然だけど、そんな簡単に目覚めるものかしら」
逸材者はなろうと思ってなれるものではない。本来持っている才能こそが逸材者なんだから。例外とし、Mr.Kにより作られた無の部屋にいたのであれば生まれついてではなく逸材者に目覚めることも可能だろう。
「──いや、待てよ」
リアは刑務所に入り脱獄した。元々逸材者であったのなら捕まることは無かった。となるとルナの推測通り刑務所で逸材者に・・・?
可能性はあるかもしれない。空気や背景こそ違うが、刑務所の空間は一種の何もない空間だ。そこで精神を研ぎ澄ましたリアなら逸材者に目覚めても・・・。
「ルナの考え合ってるかもしれんな」
「え!てことは逸材者ってことなの!?」
「そうだな。これは迂闊に放置は出来ないかもしれない。被害が出る前に俺たちでリアを見つけ出そう」
「でもどうやって」
命は手段もない俺の発言に不安そうに見てくる。
「考えならあるさ」
そう、こういう時に役に立つんだ。
「命──お前の眼だ」
「えっ?」
「はあ・・・はあ・・・はあ・・」
リアは遠くまで歩いてきて体力の限界だった。何とか工事中の校舎に隠れることができたが、ここにいて見つかるのも時間の問題だろう。
「──いや、チェックメイトだ」
「ッ」
後ろから声がし、それに反応する。
そこには三人の人が立っている。
「貴方・・・・ルナ・ユーフラテス!?」
「有名人だな、ルナ」
「まあ、アメリカじゃ名の知れた家だから」
ルナは俺の言葉に反論はなく、普通に返答してきた。
「なぜ貴方が・・・いえ、何でここが・・・」
「悪いわねリア。こっちには優秀な味方がいるのよ」
ルナの隣にいる命を指差す。
そう、リアをみつけることができたのは命の逸材『未来視』を使ったのだ。故に命の右目は赤く光っている。
未来視を使うことでリアの移動する未来を見て、俺たちはこの立て直し工事中の"恋桜学園"にやってきたのだ。
「まさか地元にいるとは思いもしなかったぜ」
恐らくだけど逸材者は必然的に引かれあうのが運命なのかもしれないな。だから俺はルナとも出会えたのだ。
「私を・・・どうする気?」
リアは震えながらも立ち、こちらを警戒してくる。
「さあな。脱獄犯、そう聞いているから少しはおっかない奴かと思ったんだけどそうでもないみたいだな」
「騙されてはいけないよ生。リア・ルノアベルの犯した罪、それは──」
ルナが少し言いづらそうにし、少し間があった。
「彼女は・・・親を殺したのよ」
「ッ・・・・」
俺と命はルナの放った言葉に驚きを隠せなかった。親を殺した・・・この若さでか?
「そうよ・・・私はお父さんとお母さんを殺したの」
リアは笑ってそう言った。
「なぜだ・・・」
「なぜ?憎かったからよ。あの家族が・・・憎いから殺したのよ」
「なら、なぜお前はそんな顔をする」
笑ってはいるがリアの顔は酷く苦しそうな瞳をしていた。
「──ッ」
その瞬間、リアの眼が戦闘態勢に入るのが分かった。
「命、ルナ!!離れ─」
俺が二人にそう告げようとした、その瞬間だった。
俺たちから数百メートル先に居たリアは驚くことに"この俺の視界に入らず"ルナの目の前に存在した。
「これで・・・終わりです」
リアの手にはどこから出したか分からない抜刀された刀を持っていた。
「ルナ!!」
キン、という金属音が鳴る。
「ッ・・・」
リアがルナの首に目掛けて放った一撃はルナに当たる前に『黄色いオーラ』によって弾かれた・
「これは・・・!」
リアは大きく後退する。
「オーラ!」
ルナの周りには黄色いオーラが貼られていた。
「ふぅ・・・万が一を想定していて助かったわ」
「ああ。そのようだな」
だが恐ろしいのはリアの動きだ。はっきり言って分からなかったのだ。Mr.Kの移動方は6秒先の未来に行くことで俺の体感から消える。リアの場合だとそのケースではない。もしKと同じなら今の俺には目視するとが可能なはずだからだ。
「リア!!」
ルナは手を前にかざしバンバンと光の弾を放つ。
体力の低下をしているリアは間一髪でジャンプしそれを交わした。──だが、
「空中、そこに逃げ場はないわよ」
「しまった・・・!」
リアは中に舞った。だがそれが欠点となりルナの一撃、両手に弾を溜め、サイドからの攻撃を仕掛けたのだ。
ドォォォン、小さな爆発の音が響く。やがて煙は消えリアの姿が見えるはずだったが。
「い、いない」
リアの姿はどこにもなかった。
チン、と後ろから音がした。
「──終わりです」
今の音は刀を鞘に収める音。その瞬間。パリィンとルナのオーラが割れ消えた。
「嘘・・・私の左右の攻撃を交わし、オーラを切った・・・というの・・・?」
オーラが攻撃を受けたことにルナはまだ無傷だが一瞬でルナの攻撃を交わし攻撃を仕掛けた。それは驚異の速さと言える。
「・・・・」
だがそれは命も疑問に思ったようだ。
「ねえ生。リアのあの足で今の動きは無理よね」
リアの足はガタガタと震えている。加え体力が低下している状態で空中から攻撃を交わし俺や命、ルナに気づかれずに攻撃ができるだろうか。
1.5秒先に行くことができる俺でもその芸当は無理に等しいのだ。
「いや可能な方法は一つあるぜ」
考えたくもないこと。もしそれが本当なら勝つ手段はないと言い切れる。
「生。それって・・・」
「なんなのよ生!!」
二人は急かすように俺に聞いてくる。
リアは刀を収めてからゆっくりとこちらを振り向く。
「"空間停止能力"──それがリアの逸材だ」
時間を止める。それは時の先にいく俺や命の未来視とは全く違う力。時間そのものを止めてしまう能力。言わばチートだ。
その相手がまさかシャルルを相手にする前に登場するとは、アメリカ人の逸材者はとんでもねえのしかいないな。
「お前・・・私の能力に気がついたのですか。なら、次はお前を──殺す」
その時のリアの目は今まで以上に紫色に光り、強い目をしていた。
【キャラ説明】
■リア・ルノアベル
性別:女
能力:「空間停止能力」
説明:小柄でかわいい容姿をした女の子。過去に犯罪経歴を持っている脱獄犯。
容姿:赤い髪の毛/紫色の瞳
学校:無し




