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逸材の生命  作者: 郁祈
第一章 学園編
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変わり果てた学園

 「6月・・・ついに動き始めましたね」

 

 話しているのはスーツを来た女性。いかにも秘書って感じの女。


 「学園長はこのスタイルをあまり気に入っていないみたいですが、この先もこれで行くおつもりですか?」


 「・・・そのつもりだ」


 








 ──放課後、

 明日は退学をかけた小テストが行われる。正直俺はどうってことないが、万が一ということもあり、一応勉強をしている。

 勉強場所は俺の家・・・そしてなぜか、


 「ああーーー分からねえ。科学わからねえよォォォォォ」


 棗がいる。


 まあ、こいつは何もしなかったら退学確定ってことで命が気をきかせて連れてきたらしい。


 「棗くん。ここはこうだからあーなって・・・」


 まあ、教えてるのは幸い命だし、いいか。

 

 命のポニーテールがフワフワしている。風の影響かな。・・・ちょっと触ってみたくなってきたわ。

 

 「きゃ!」


 「へえ・・・結構いい髪質だな。命」


 気になってしまったので、ちょっとくらいならいいだろうと俺は触っていた。


 「ちょ、(しょう)・・・」


 顔を赤らめて命は恥ずかしそうに俺の手をどかした。

 

 「あっ、悪いな・・・勉強中に」


 「い、いや・・・嫌じゃないんだけど・・・ちょっと・・・」


 テレながら言う命は可愛かった。俺の知らない一面がどんどん追加さてれいる・・・女って急に変わるもんだな。


 「いーよな生は勉強しなくても赤点はないんだし」


 もはや俺と命の話に突っ込まなくなってきた棗。体制ついたんかな?


 「いや、まあ・・・ほら」


 なんて言ったらいいんだろうこの場合。あまり変なこと言うと可哀想になりそうだし・・・・なんとも答えられないな。


 「所詮俺は馬鹿ですよ・・・・トホホ・・・・馬鹿だからこの学園に入ったっていうのに・・・」


 偏差値が低い恋桜学園だが、その実態は入学させて金を巻き上げてからの使えない生徒は退学という恐ろしいシステムとなっていたのだ。

 このことに気がついたのも、HRで先生がいった明日の小テストの件がきっかけだ。


 「だが、まあ頑張るしかないよ」


 どんなに馬鹿でも赤点はとったらマズイ、とりあえず棗に赤点を取らせないようにだけ最善を尽くすことに専念した。






 「ああーーー分からねえ!!」


 数時間黙って勉強していが、ついにしびれを切らしたようだ。

 

 「科学ってムズイ・・・なんだよ元素記号とか昇華とかもう」


 「科学って暗記だろ?どうにかなるだろ」


 元素記号は確か覚えるための歌があった気がするな。アレは個人差あるけど結構覚えやすいんだろう。


 「っともうこんな時間か」


 勉強に気を取られ、全員が時間のことをすっかりと忘れていた。放課後から開始していたので、外はすっかりと暗くなっていた。


 「しかたね・・・なんか買ってくるか。命、お前は棗に勉強を教えててくれ」


 そう言い残し、俺は一人で近くのコンビニへと向かった。









 ──コンビニは今となっては24時間やっているから、有難いものだ。

 日に日に商品もそこいらのスーパーよりかは品揃えも良くなっているし、郵便受け取りや、公共料金の支払い・ATMなどコンビニ一つで生活ができるといってもおかしくはない。

 

 俺は安めの弁当を三つ買い、コンビニを出た。

 しかし、運が悪いのか外に思わぬ人物が居た。


 「ん・・・お前は」


 向こうが気がついた。

 メガネをクイッと上げ、こんな時間だというのに制服をきっちり着こなしているこいつ・・・生徒会長、恋桜祐春、

 こいつが俺の目の前に居た。


 「こんな時間に何をしてる・・・弁当、なるほど。さしずめ勉強していて気がついたらこんな時間になっていた、というところか」


 「察しが言いようで助かります。で、そちらはどうしてこのようなところに?」


 こんな時間、というくらいだ。さぞかし俺とは比べることのできない理由でも持っているのだろう。


 「さあな」


 俺の質問には答えなかった。だが、


 「これは忠告だ。境川生」


 生徒会長は急に真剣な眼差しになり、俺にそう言ってきた。


 「──この恋桜学園。生き残ってみせよ。"我々"はもしかしたらお前のような逸材者を待っていたのかもしれないからな」


 そう言い残し、生徒会長は暗い夜道を歩いて行った。


 しかし気になる言葉、我々・・・・彼奴は確かにそういった。俺のような逸材者を待っていた、か。

 それはどういう意味なのか。それは逸材の俺でも理解ができないことであった。 








 夕飯も食べ終わり、棗はもう遅いと負うことで帰っていった。

 家に残されたのは俺と命だけ。


 「お前ももう遅いんだから早めに帰れよ」


 ソファに座りながら俺は命にそういった。


 「隣なんだから少しは遅くなっても大丈夫なのよ」


 命は勉強中に使った、飲み物のコップやお皿などを洗いながら、そう答えた。

 まあ、家事とかやってもらっている立場上、これ以上は何も言えないか。


 「なあ、命・・・・恋桜学園についてどう思う?」


 ふと疑問に思っていたことを命に聞いてみる。


 「どうって・・・?んーでも少し変に感じるかな。あんな簡単に入学できるのに、明日のテスト赤店だったら退学でしょ。それってどうかと思うのよね」


 指を顎にあて考えながら答えてる。その姿はちょっと可愛い。


 「でも案外赤点とらなくらい簡単な問題なのかもね。だから赤点取ったら退学なのかも」


 なるほどな。その言う見方もあったわけか。あの学園でも解けるレベルの問題。そういうことも十分にありえる。

 だが、今日の先生を見ていて、それはないだろう。もし命の考え通りなら、もう少し教室の空気も良かったはず。

 

 そんな考え事をしていたとき、ソファの近くにノートが一冊置いてあった。


 「あれ、これって棗の・・・」


 棗のノートだ。こいつ置いて帰ったのか・・・。


 「命、俺ちょっと棗の所に行ってくるわ」


 「えっ!?どうしたの」


 「ノート忘れてるっぽいからさ。届けてくる」


 命がまだ家にいてくれるから、安心して家から出ることができた。


 





 「さて、棗の家はっと・・・」


 俺の家からあまり遠くなかったはず。

 一本道を歩いていると、棗らしき人物が居た。

 

 「あいつ、誰と話して・・・」


 遠くからだったが、棗は誰かと話をしていた。

 話しかけてもよかったのだが、少し気になったため、近くの電柱に身を隠し、話を盗み聞きした。






 「──(なつめ)、あなたはとても頭が悪かったから、恋桜学園に入れたのですが、思っていたより、あの学園は変わってしまっていたみたいですね。」


 変わった?学園がか?


 「姉さん・・・」


 姉さん!?彼奴姉がいたのか!!


 「棗、どうやら貴方を恋桜学園に入れたのは間違いだったみたいですね。貴方はあそこにいれて変わるかと思ったのですが、期待はずれもいいところです。──幸い、明日のテスト、聞いた話によると赤点を取ったら退学のこと・・・」


 「姉さん。俺は残ってみせる。あの学園に・・・姉さんが行ったあの学園に!!」


 姉は恋桜学園の卒業生みたいだな。だが、話を聞く限り昔の恋桜学園とは違っているみたいだ。


 「あの学園はテストに打ち勝った者のみが生き残る。敗者は全て切られるところ・・・あなたに通う資格はない」


 酷い言わようだ。だが、確かに姉さんの言うことも分からなくはない。

 あの学園は棗には少々無理があったと俺でも思う。

 だが、


 「──ッ誰!?」


 俺は隠れるのをやめ、棗と棗の姉の前に出た。


 「"少し・・・言い過ぎじゃないですか"」


 大切な友達を傷つけられて、平然としていられるほど、俺はお人好しじゃない・・・・。


 「生・・・!?」


 棗が驚いた顔をしている。まあ、普通か。俺がこんなところにいるんだからな。


 「棗の姉さん。少々言い過ぎかと思いますよ。昔の恋桜学園がどうだったかは分かりませんが、今は今です。それに棗自信確かに学園生活を真面目に過ごしてはいませんが、彼はやるときはやる子ですよ」


 「棗のお友達かしら?残念だけど、私の方が棗と過ごしてきた時間は長いの。知ったかぶるのもよしてくれない?」


 「確かに俺は棗と知り合いまだ日も浅いです。ですが、身内でないからこそ、見えることもあるんですよ」


 「例えばなによ!言ってみなさい」


 棗の姉さんは結構怒っているな。それもそうか。見ず知らずの人に口出されてるんだからな。

 こうなった以上、色々と意見は言いたいのだが、


 「言ったから?どうだというのです。聞いたことがありますよ。『なぜ?』と聞かれ答えたら、言い返せず、感情に任せてどなる傾向のある人を」


 意見を返せば「小学生みたいなこと言ってるんじゃないよ」など、人は負けそうになるとよくそういったことを口にする。

 逆に何も言わないと「なんで答えないの!!」と言われる。

 この場合、どちらも救いがたいのだが、こうなった以上仕方ないことだ。受け入れるしかないのかもしれない。


 「くっ・・・知ったような口を・・・」


 「そう言う反応のことを言っているんです。・・・棗を怒ることに反対はしません。普段の生活態度が物行っているますから」


 だが、肝心なのはそこじゃない。彼女はいった"棗に通う資格がないと"


 「──通う資格がない・・・先程はそうおっしゃっていました。ですが、幸い明日は小テスト、その結果を見てからでも遅くはないと思いますが?」


 「結果はわかっていることです。棗の生活を見ていてね」


 「見ている割には見えてないですね。言いましたよね、身内でないからこそ、見えることもあると」


 俺はそう言って棗の忘れものであるノートを姉の前に差し出した。


 「一日・・・それも数時間だけですが、彼は足掻きました。この学園に残るために精一杯。だからテストの結果を見てからでも遅くはないと思います」


 ノートにはビッシリと科学の問題や解説が書かれていた。棗がしっかりと(うち)で勉強をしていた証だ。

 ご丁寧に命の解説も棗にわかりやすいように書いてある。命も棗が退学になるのは嫌だということを示しているのが分かる。


 「・・・・なるほど、確かに貴方の言うことも分かりますね。いいでしょう。明日のテストの結果を待ちます。どの道赤点なら退学ですし」


 ノートをパタンと閉じて、後ろを向き、


 「棗・・・家に帰りますよ」


 そう言って歩き始めた。


 「姉さん・・・・。生 ありがとうな」


 お礼だけを言い残し、棗も姉のあとを追い、帰宅していった。


 全ては明日のテストの結果次第。赤点を取れば学園から排除され、赤点を回避すれば学園に留まることができる・・・。

 就職・進学率もたいして良くないこの学園・・・・その目的は一体・・・・。


【キャラ説明】

沢渡(さわたり) (なつめ)

性別:男

能力:──

説明:生の友達。馬鹿だが力は常人の域を超えている。

容姿:──

学校:恋桜学園 1年

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