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逸材の生命  作者: 郁祈
第三章 夏休み編
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全ての元凶 倒すべき存在

 ──たったったと長い廊下を走る。


 「御神槌(みかづち)大丈夫かな・・・」


 走りなが(なつめ)は御神槌の心配をする。


 「仮にも逸材者だ。大丈夫だろう」


 走ってるというのにもメガネがズレずにキリッと言う会長。


 長い廊下を走っているとき俺たちは一つの扉を発見した。


 「おや・・・まだ廊下は続くようだが、ここの扉は・・・」


 会長が足を止め、次第に全員がその扉の前に立つ。


 「──ここは・・・・」


 俺は頭の中に昔の記憶が過る。星川のこと、そしてこの部屋で過ごしたことを・・・・。


 「会長・・・ここは・・・」


 過去(前世)の記憶を持つ愛桜(あいさか)先輩も俺と同じ気持ちだっただろう。

 とてもじゃないが、いい顔はできなかった。


 「鍵かかってるぜ」


 棗がドアをガチャガチャ触りながら開くかを確かめてる。


 その時だった。奥から白衣を来た男が俺たちの前に現れた。


 「──困りますね。そこは逸材者を生み出す部屋、一般人に知られてしまったのは誤算ですよ」


 「お前・・・」


 「おや、境川生・・・よもや生きていましたか。てっきり死んだかと思っていましたが、さすがは旧式に傑作だ」


 クックと笑いながら男は言う。


 「お前がここにいるということはこの中にまだ研究対象の被害人物がいるってことだな」


 俺はドアの前に手を(かざ)す。もちろん視線は白衣の男の方に向けたままだ。


 「何をする気だ?境川」

 

 会長が聞いてくる。


 「ここに閉じ込められてる人たちを助けましょう」


 「ほぉ、そんなこと我々がさせると思いますか?」

 

 パチンと指を鳴らす。その音で白衣の男の後ろから、何かが現れた。


 「これはこの部屋で死んだ者のゾンビです。死者を蘇生させ我々の手駒にしたんですよ」


 「どこまでも下衆な野郎だ」


 俺はそれと同時に扉を吹き飛ばす。


 「さあ、やりなさいゾンビよ!!」


 合図とともに一体のゾンビが襲ってくる。


 だが──


 ドグォォォン!!!!


 ゾンビの顔はめり込み、吹き飛んだ。


 「ふぅ・・・気持ち悪」


 パンチ一発で吹き飛ばしたのは棗だった。そういやこいつ力だけはやばいんだった。


 「なっ・・・」


 白衣の男は驚きを隠せなかった。


 「(しょう)、ここは俺が何とかしておくからお前たちはその扉の先に行ってこい」


 棗は俺たちの方を振り向かずそういった。


 「・・・・ああ。頼んだぞ棗」


 俺はそう言って扉の先に入っていった。


 「任せたぞ、沢渡・・・」


 「ご武運を──」


 そう言い残し二人も俺のあとに続く、


 

 「さあ続きやろうよ白衣の男さん」


 棗はニコリと笑いそう言ったのだった。











 扉に入りその先は何も無かった。あたり一面が壁に覆われた空間、これが無の部屋だ。

 俺や御神槌、愛桜先輩が過去に体験した部屋。


 「これが・・・無の・・・部屋」


 会長はメガネをクイッとやりそう言った。


 「懐かしい・・・けどなんか複雑ね」


 愛桜先輩は何とも言えない表情で部屋の周りを見た。


 「──ッ」


 俺は過去の記憶を頼りに部屋のある一部分に走る。

 


 「おい境川!?」


 会長の声を無視して俺は走った。

 もう二度と来ることのない場所だった。だけど俺は来た。今度は部屋の実験者としてではなく、Mr.Kを潰す側として。


 そして俺は目的の位置にたどり着く。

 そこには昔から変わらない一つの"即席で作られたであろうお墓"が存在していた。


 ──名前のところに書かれた文字、「星川(ほしかわ) 綾野(あやの)



 「境川・・・この墓は?」


 「これは俺にとってこの部屋で過ごしたとき一番大切だった友達のお墓です。俺のせいで死なせてしまった人物」


 まだこのお墓は残っていた。何もない空間に唯一許された物、それがこれだった。


 周りをみるとそこにはガクガクと震えている子供たちが居た。中学生くらいだけれども外の世界を体験していないとなると態度は大人しいものだった。


 愛桜先輩が色々とやっていてくれてるおかげで俺はこうして墓の前に立っていることができる。


 「星川・・・お前は今どうしているんだろうな」


 俺を守り死んでしまった星川、さっきのようにゾンビにされちまったのかな。それとも死体を燃やされこの世界から完璧にいなくなったのかな。

 そう思って俺は後ろを振り向いた。


 目にとまったのは長い紙を結び、エプロンを来た中学生以上の身長をした女性だった。


 「──えっ、境川・・・くん・・・・?」


 向こうも俺の存在に気がつきそう言ってきた。

 

 エプロンを着た女性はここにいる子供たちの面倒を見ていたようだ。だが、そんなことはどうでもいい。


 「お前・・・・星川・・・・なのか・・・・」


 死んだはずの星川が俺の前に成長して存在していた。


 「そっか・・・逸材者になったのね」


 星川は嬉しそうに微笑む。間違いないこの笑い方は星川そのものだ。そっくりさんでもなく、星川本人。


 「どうして生きている・・・・」


 確かに星川は死んだ。それは間違いない事実だ。


 「──私は貴方がこの場所から卒業し、まもなく"死体蘇生プロジェクト"の実験になったの。何をしたかは分からないけど、私はその研究の成功者。唯一のね」


 失敗者はと聞こうと思ったが、俺は入口前で棗が戦っているゾンビを思い出す。そうか・・・失敗者は。


 「感動の再会のところ悪いが、こちらも急いでいる。星川といったな。お前はこの子供たちを安全なところに避難させることはできるか?」


 会長がクイッとメガネをあげてそう言う。


 「ええ。生くんが来てくれたのならこの部屋とも決着がつけられるね・・・でも変わったわね。目の色とか違うし」


 そのことを言われると俺は少し悲しくなる。病院で俺の帰りを眠りながら待つ命を思い出し。

 だが、そのことを星川にいっても関係のないことだ。


 「俺は変わったんだ。お前が死んだあの日から・・・」


 俺はそうとだけ言って子供たちを安全なところへと避難させた。


 力を使って壁をぶち破り俺たちは一回外に出る。


 「──再開してあまり喋れなかったけど星川たちはとりあえず病院に行ってくれ」


 子供たちを安全なところに避難させなくてはならない。愛桜先輩と星川を中心に子供たちは病院へと行くことになった。


 この場に残されたのは俺と会長のみ。



 「境川、星川ってやつ本当に生き返ったと思うか?」


 会長が不思議なことを聞いてくる。

 だが、俺は知っていた。


 「──生き返りなんかしませんよ。星川の言っていた死者組成の実験、あれはただの延長にすぎません。星川は自覚してないだけで存在は幽霊と同じ、意識を持ったゾンビみたいなものですよ」


 「気づいていたか。愛桜には一応伝えてあるが、恐らくだが彼女はこの部屋から離れれば消える事になると思うが?」


 「いいんです──昔の死者が現世にとどまっているのは罪でしかない。願わくば彼女には成仏して欲しい」


 本当は俺は涙がでるほど喜んだだろうが、星川が生きていたらあの日の誓いは意味のないことになる。それにMr.Kが彼女を蘇生させた場合、あのような生活はさせてなかっただろう。

 未来の俺のように用心棒として扱われていたはず。だからあれで良かったのかもな。


 「ではそろそろ戻るとするか。Mr.Kはすぐそこだ」


 「ああ・・・。行くか」

 

 俺と会長はMr.Kのいる元に向かって走った。

 俺は星川のことを少し残念に思ったが、迷いをすて俺は走る。この戦いが終わったらきちんとお墓を作ってやると決めて・・・・。








 ──入口前、


 そこでは御神槌(みかづち)と未来の境川が闘っていた。


 「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」


 御神槌はありとあらゆる攻撃を防いできたが、そろそろ体力の限界が近かった。


 「どうした御神槌、そろそろ終わりのようだな」


 全く息が切れることなくそう言ってくる境川。


 「(ちくしょうめ・・・・やつは化物だぜ)」


 ビュン──


 未来の境川の姿が消える。瞬間に御神槌は悟った。


 「(あぁ・・・終わった)」


 ドゴォォッォオ・・・


 反応することが出来ず、俺は殴られた。


 そして思いっきり吹き飛ばされ俺は壁に衝突し前から倒れた。


 

 「御神槌!!」


 楠が走って俺のもとに駆け寄ってくる。

 ダメだったわ・・・俺じゃ勝てなかった。


 未来の境川は想像しているより強い。知恵で補い闘ったとしてもやつはその上の考えを見出してくる。

 極めつけはあの高速の攻撃だ。もはや時間停止に近いあの攻撃は防ぐことができない。

 今までは空気を操りガードしてきたが、体力が切れた今、俺は防御することができなかった。


 意識がどんどん遠くなっていく。このまま目を閉じたら俺は一生目を開くことがないだろう。そう思えるくらい辛かった。


 だが、楠には手を出させない・・・・その心が俺の腕を動かす。


 地面に手を当て、地面の隙間を通り俺は空気を流す、


 「ッ・・・・!!」


 そしてその空気は細くなり、貫通力を増し、境川の身体を貫いた。

 複数の一からの攻撃、しかも奇襲を行ったため見事に当てることができた。


 「へ・・・へ・・・道連れ・・・・ってやつだ」


 空気はその場で固まり、境川は身動きがとれなくなる。

 俺はダメ押しと言わんばかりにありとあらゆる隙間から空気を細め細長くなった空気弾を放つ。


 「がっは・・・・」


 境川は交わすことができずにそのまま全弾当たった。そしてガクッと首が倒れるのがわかった。

 気絶かはたまた死んだか・・・だが、とりあえずはこれでいい。


 そして俺は意識が消えた。


 「御神槌!!しっかりして御神槌!!!!」


 楠の声が少しだけ届いたが、反応することができず、俺は何もできなかった。


 だが結果的に未来の境川とは引き分けた。何とか持ちこたえたのだ。あとは他の連中に託すしかない。

 俺の役目はここで終わりなのだから。


 


 「御神槌・・・・まさか・・・この俺を・・・追い詰めるとはな・・・・・グッは......」


 未来の境川は生きていたのかと楠は驚いたが、その言葉を言って再びガクッと倒れた。

 今度はもう起きてこないだろう。


 楠は御神槌の心臓に手を当てる。鼓動はまだ動いていた。

 それを確認できて楠はホッと胸をなでおろした。


 

 「お疲れ御神槌・・・今は少し休みましょう」


 楠はしゃがみ御神槌の頭を撫でた。


 「──Mr.Kとの戦いが終わったら私は貴方に言いたいことがあるんだから絶対に生きててよ」


 涙目になりながら楠はそういい御神槌を抱きしめた。


 







 


 ──ピリリリリ、ピッ


 「もしもし愛桜か?どうした───ああそうか」


 ピッ、


 「どうかしたんですか?」

 

 「病院についたそうだ。それと同時に星川の消滅を確認したと」


 「そうですか・・・」


 「なに、星川自身は自覚していなかったが、消える間際に悟ったようだったぞ」

 

 会長は少しだけ優しく言ってくれる。


 「御神槌の方もそろそろ決着着く頃でしょう。そうなると残りは俺たちだけですね」


 目の前の大きな扉を前にし俺はそう言う。


 「これが最後の相手だな」


 「ああ・・・」


 そう言って俺は扉を開ける。



 ギイィィィ....





 開けた先には待ち構えていた。倒すべき相手、全ての生みの親、俺の倒すべき存在──Mr.Kが。

【キャラ説明】

■未来の境川

性別:男

能力:???

説明:逸材として目覚めるがMr.Kにより、卒業を許されることなく、生きた境川の姿。

容姿:学生服、顔の半分が色が変化している。

学校:──

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