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逸材の生命  作者: 郁祈
第三章 夏休み編
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もう迷わない

 駅前にて俺は御神槌(みかづち)を襲った逸材者を撃退した。

 これからあの逸材者とは会うことも戦うこともないだろう。


 トコトコと(くすのき)が俺と御神槌の方に向かって歩いてくる。


 そして楠は俺の予想していなかった言葉を放った。


 「──ねえ境川くん。貴方って何者なの?」


 

 何者、か。



 「俺は御神槌と同じで逸材者だよ」


 俺は事実を楠に伝えた。


 「なんだ楠?境川がどうかしたってのか?」


 「私は闘うことをしないからこそ貴方たちのことはよく見ているつもりよ。だから言わせてもらう。境川くん。貴方の闘い方はどこかおかしい」


 どこかおかしい・・・楠の言っていることはあながち間違っていない。

 御神槌と同じ逸材者にしろ俺には《固定した能力》が存在しないのだ。


 生まれ持っての逸材者である有田(ありた)は《頭脳と千里眼》、そしてさっきの男は《頭脳に加え魂を抜き取る》、御神槌は《頭脳、怪力と破滅》

 だが、俺はどうだ?俺にはそんな固定した力がない。有田たちのように圧倒的頭脳は持ち合わせている。さらに遠くを見渡すことが可能で御神槌には及ばないがそこそこの力を持つ。


 「境川の闘い方がおかしいか・・・気にしたことはなかったなぁ」


 御神槌はあまり俺をみることがないからそこまで気になることはなかったみたいだ。命も特に言ってこなかったから今までこういったことは無かった。


 「教えて境川くん。なぜ貴方はそんなにも強いの?」


 今現状で言える俺の能力は《頭脳、千里眼、音探知、身体強化、既視感(タイムリープ)》と言った感じだ。

 これらの力は必ずではないが誰か他の逸材者とかぶる力が主だ。

  

 俺がMr.Kに最高傑作と呼ばれる理由、それは多彩な力の持ち主だからだ。

 当時の俺にはここまでの才能はなかったが、誓いを胸に俺はこれらの逸材に目覚めている。


 だから俺は楠に、


 「俺が強いのは過去にも今にも誓ったからな。守りたいものを守るって」


 過去に俺は大切な人を亡くし、そこで二度と同じことにならないと誓った。そして今は最愛の人である命を守ると誓っている。


 だからこの誓いがある限り俺は屈しない。どんなことにも立ち向かうと決めているのだ。その先に後悔しようとも・・・・!


 「誓い・・・・か」


 楠は納得していなかったようだが、俺がこれ以上なにも言わないと理解したから


 「まあ、貴方がそう言うならとりあえずはそういうことにしておいてあげる」


 一応は納得してくれたようだ。


 「まあ、逸材者にもたまにマルチなスキルをもつやつもいるからな。境川がそれに近いだけだろ」


 御神槌が楠にフォローを入れてくれる。


 「そう・・・・ね。まあでもとりあえずは貴方に助けられてたことだし感謝しておくわ」


 そう言って楠は歩いて行ってしまった。御神槌もそれについて行った。



 

 俺は頭をかきながら

 

 「・・・・また色々と巻き込まれたな」


 愛桜先輩の一件といい、御神槌と戦っていた逸材者のこと。まだ時刻は昼過ぎだってのに色々濃すぎだぜ。


 「やれやれ・・・」


 俺はこれ以上厄介事に巻き込まれたくないと思い家に帰ることにした。










 


 ガチャっと家のドアを開ける。玄関には一つの靴があった。


 「命・・・帰ってるのか」


 俺はそう思ってリビングに顔をだす。だけどそこには命の姿はどこになかった。


 「・・・・?」


 トイレかなと思ったが、ドアに鍵はかかっていない。


 一瞬不安になったが、二回から足音が聞こえたので俺はホッとした。どうやら命は二階にいるようだな。

 俺はソファに寝そべった。

 段々とウトウトし始め俺は眠りに就いた.....





 

 二階──


 そこに東雲命は居た。生の部屋に立ちすくむ命、窓に手をやり外を見つめる。

 一昨日から私の身体は違和感を覚えていた。

  

 私の頭に流れてきた映像、それは明らかに生だった。そして昨日あったあの手紙、前半も後半も生に対して書かれた文章。


 「・・・・生」


 幼い頃は何もなかった私たち。でも中学の時代を(さかい)に私たちの運命は大きく揺らいでる。

 

 『──悩んでいるの?』


 どこからか私に話しかけてくる。


 「ッ!!」


 周りを見ても誰も人がいない。でも確かに声が聞こえた。


 「誰!?・・・・どこにいるの・・・!!」


 『フフ・・・そこの窓をよくみなさい』


 そう言われ私は窓を見る。そこには私が写っている。


 ──だが、私の《片方の瞳は色が変化し赤色》になっているのだった。


 「ッ・・・・!!」


 驚きのあまりに右目を手で塞ぐ。


 『──貴方は見たはず。未来の映像をそして未来からの手紙を』


 女の声は構わず私に話しかけてくる。

 

 「未来の・・・映像・・・・」


 一昨日に見たあの映像。あれは私の妄想なんかじゃなかった。紛れもなく未来の映像・・・。


 『飲み込みが早くて助かるわ』


 「でもなんで私なんかに」


 事実未来のことを伝えたいのなら生や御神槌さんそういった逸材者に教えればいい。力もない私になんで・・・。


 『あら、心外ね。私だって別に好きで貴方に未来の映像を見せたわけじゃない』


 「どういうこと・・・」


 傍から見れば私はただ単に独り言を言っているだけの女。

 でも幸いに生はここにはいない。だから私は思う存分喋ることにした。


 『"未来の映像を見る"──それが貴方に与えられた力、だから見ることができたのよ』


 「未来を・・・・みる・・・・」


 『そう、夢で見るわけじゃないけど予知夢って言ったら分かりやすいかしらね』


 未来の出来事を予想する。それが私の力・・・・でも力は逸材者でないと。


 『はあ・・・貴方自覚なかったのね。それはお気の毒に』


 見えはしなかったが女が溜息をついているのがわかった。


 『貴方──《逸材者》なのよ。しかも生まれついてのね』


 女から放たれた言葉は私にはどう受け止めるべきか一瞬悩んでしまった。

 私が・・・・逸材者・・・・。


 (しょう) や御神槌(みかづち)さんと同じでなく、私は生まれついての逸材者。


 『未来をみることは子供の頃には身体が馴染まなく使うことができなかった。でも貴方は勉強は出来ていた。それは前兆なのよ』


 「・・・・そんな・・・でも」


 納得できない。私が逸材者ならどうしてこんなにも自覚するのが遅かったのだろうか。この未来予知が早ければ私は生に迷惑をかけることなく生きていくことができた。

 でも結果的には目覚めたのは今ということでこれまでに生には迷惑をかけっぱなしだ。


 「──貴方は一体何者なの」


 私の右目に存在する赤い瞳を持った存在。それが未来をみる目だというのならこんな力は欲しくはない。

 できるのならこの力は生やもっと凄い人にこそ与えられるべきなんだ。


 『私は──東雲命、あなたそのものよ』


 「・・・・ッ」


 『正確には私自身に宿るもう一つの人格──』


 私は窓に映る自分の顔をみる。


 左目は《青色》、これがいつもの私。そして右目・・・《赤色》、これがもうひとりの私の目だ。


 『まだ私が完全に表に出ていないだけで影響は瞳にしか出ていない。でもね』


 「ッ・・・・」


 もうひとりの私が表に出るのが分かる。私の意識は少しだけ薄くなっていくからだ。


 そして私の意識は左目だけとなり、それで自分を見つめた。

 そこに映っていたのは赤い髪をし、右目は赤色・・・なにより髪を止めているリボンが取れストレートになっていた。


 『これが私本来の姿。ああ心配しないで貴方と入れ替われば元に戻るから』


 そう言ってもうひとりの私は私の中に戻る。


 目を開けるといつもの私に戻っていた。


 『別に普段はここまで姿を現さない。私の侵食は右目だけよ──でも貴方に危険を感じるのなら私は貴方を守るために外に出る』


 なんだかんだ言ってもうひとりの私は優しかった。こういう時大体悪そうなやつなのだが、もうひとりの私は優しく、何だか安心できる存在だった。


 「ねえ・・・同じ名前でもあれだし貴方、名前変えない?」


 どちらも東雲命、というのは少し言いづらい。自分同士で呼び合う時にも困るし。


 『あら?ならいい名前でもつけてみなさい』


 「ん・・・・そうね。苗字はそのままでいいとして、もうひとりのって意味で『(えい)』ってのはどうかしら?」


 東雲影(しののめえい)、それが私のもうひとりの名前。


 『まあ、いいんじゃないかしら?別にどう呼ばれようと私は貴方なのだから』


 「じゃあ・・・決まりね」


 私は微笑んだ。


 『・・・お気楽なものね。あんな未来を見たというのに貴方はどうしてそんなに明るく居られるの?』


 「未来が見える。その利点はいち早くその先のことを知れるということ。でもそれを知ってしまえば二度とその未来は訪れることはない」


 未来が見れるならこれから起きることは回避することができる。


 「私は決めたの」



 ──最初はこんな目はいらないと思った。



 ──でも、もう迷いなんてない。未来を知ったのならそれに抗えばいい。



 ──もう二度と、(しょう)は手放さないッ....


 「もちろん協力してくれるわよね?」


 『──私は貴方のもうひとつの存在。貴方の言うことには大方従うつもりよ・・・精々抗っていなさい。そして守りなさい』


 私はもう守られてばかりなんて嫌だ。これからは生と一緒に隣に歩いて生きていくんだ。


 逸材者としての自覚を得た私は一つの誓いを胸にこれからを生きていくことを決めたのだった。


 

 ──コンコン、


 部屋のドアが叩かれる。生が来たんだ。






 「命?いるのか」


 俺はドアを開けた。


 そこには窓から外を眺めている命の姿があった。


 「命・・・?」


 窓越しに見える命の顔、それは何かを決意した顔だった。


 「どうかしたのか?」


 ふと俺はいつものように心配してしまう。


 クルッと命は振り向き俺にこう言った。


 「なんでもないよ。大丈夫」


 ニッコリと微笑んだ命は何かが変わったように見えた。


 そう言って命は俺の横を通り過ぎる。

 なんだろうか。昨日あったときより少しだけ変わったな。


 別に悪くなったという意味ではない。どちらかというと良くなった意味での変化だ。


 「──これは・・・・」


 俺は命の立っていた位置の足元をみる。そこには《赤い髪の毛》が一本落ちていたのだった。


 命の髪の色は茶色よりの黒だ。だが、ここに赤色の髪が落ちているのは不自然だ。今あった命は髪を染めているわけではない。


 「まさか・・・な」


 俺は自分の手のひらをみる。この前命に気が付いてもらい俺は手のひらの一部分の色が変化しているのに気がついた。

 もし、命にも同じ症状が起きているとするのなら、


 「やはり何かの病気なのか・・・?」


 だが、命の服についていたとも考えられるため俺はこれ以上探ることができなかったのだ。



 

 リビングに降りると命の書置きので手紙があった。



──夕飯にまた来ます。


 時間を確認すると今は4時、あと数時間後にもう一度夕飯を食いに来るということか。

 その時に聞いてみるかな・・・・。



 俺は命が来る間、暇だったのでもう一眠りすることにした。









 生の隣にある私の家、そこの自室に私は帰ってきてた。


 「ふぅ・・・」


 そっと鏡に近寄る。今は両目とも青色だった。


 少しホッとする。あの時、生がいきなり来ると思っていなくて目の色が双方違っていたらどうしようかと思ったけど無事にバレなかったみたいた。


 「もし私が逸材者だって知ったら・・・どんな反応するのかな」


 驚くのかそれともこの力を使うなって言ってくるのか。どちらにしてもまだ言うべきでないことなのは確かだった。


 『それは私も賛成ね』

 

 ふと頭に声が聞こえる。


 『生に私の能力を喋ったとすると少し面倒になりそうだから、これは誰にも言わずにしばらくはやり過ごしなさい』


 影は私にそういった。鏡を見ると右目は赤色になっている。喋りかけるだけでも目は赤くなるらしい。


 「うん・・・皆には黙っておくよ」


 少しだけ罪悪感があったが、こればかりは仕方がないことだ。未来が見えるということを話してしまえば乱用してくるに違いない。

 でもやたらめったら未来を知ってしまえば、それは危険なこととなる。未来をしるのは基本的にありえないことなのだから。


 「私は──私のためだけにこの力を──使う」


 生には少し迷惑かけちゃうかもしれないけど、それでも私は生を守るんだから。


 『精々、頑張りなさいね』


 影は私にそう言ってくるが、基本的に力を使うときは影が表に出ると思うからどちらかというと影が頑張る感じなのだ。

 でも影も私、意識が共有しているのだから右目だけ赤くなるだけで未来を見ることができるはずだ。

 

 この力を使って生と共に戦っていくんだ。

 


 こうして私はこの日から──逸材者となった

【キャラ説明】

東雲(しののめ) (えい)

性別:女

能力:???

説明:命の逸材に目覚めた姿。赤い髪と赤い瞳になり少し口調などが変化する。

学校:恋桜学園 1年

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