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逸材の生命  作者: 郁祈
第二章 破滅の逸材編
17/130

楠は「破滅」に出会う

 ──私はいつも一人だった。

 小学生も・・・中学生も一人ぼっち。別に孤独が嫌いなわけじゃない。

 誰からも何も言われない。それはとてもいいことだ。

 でも、誰も私と話す人はいない・・・・。それがどんなに悲しいことなのか。

 

 だけど今は違う。暗い部屋の一角に目をやる。

 そこには寝息を立てている御神槌(みかづち)の姿があった。


 「人生に楽しみを見つけれないのに──なんで、貴方は私といてくれるの・・・」


 本をパタッと閉じて、私は思い出す。




 ──彼と出会った日のことを.....








 


 そう、あれは私が中学二年生の頃だった。

 季節は春。もう少しで春休みでもあり、私は中学三年生になる頃だ。

 どこの高校に行くのかをそろそろ決め出さなければならない。

 でも私は別になりたいことや、やりたいことなんてなかった。


 普通に高校を出て、普通に就職をする。安定した職に就ければなんでもよかったのだ。


 だがしかし、ほんの少しだけでいいから思ってしまう。


 

 ──友達が欲しいと


 

 生まれてから私は友達というものを作っていない。それは私の正確がある故に難しいことだったからだ。

 私はどうしてもいつも一言多く言ってしまったり、相手の嫌なところを掘り下げてしまう癖がある。

 癖というものは中々治せるものではなく、一度定着してしまったらもう逃れることはできないのだ。


 「はぁ・・・・」


 私はため息をつく。

 今は学校にいるのだが、こうしてため息をついたところで「どうしたの?」という声はかからない。

 既にこの学校で孤独というのが定着してしまっているからだ。教師もそれを知っており、あまり無闇に私には話しかけてこなかった。


 春休みは近いこともあり、授業は午前中に終わる。

 クラスの女子たちはどこかに出かける話など、男子たちは近くのゲームセンターに行こうという話を周りでしている。

 

 「(いいなぁ・・・)」


 そう思っていても私はクラスに混ざるほどの力はない。

 たとえ話しかけれたとしても怖がられるか、気持ち悪がられるだけだろう。


 だから私は混ざる気もなく、カバンを手に取り教室を出た。


 

 私は一人で通学路を歩く。家と学校の距離は少しだけ遠い。歩いて20分くらいだ。

 でもその道を私は一人であるく。隣に一緒になってあるく人もいない。


 「・・・・・」


 寂しい・・・・。


 「あっ、」


 私が通る道にはちょっとだけ森を抜けることになる。いつから気がついていたのだろうか分からないが、そこにはいつも見る大きな家が存在している。


 「・・・・」


 奇妙だから近づくものはいないが、こんな立派な家に誰も住んでいないということはない。

 

 でもいかつい人が出てきら怖いし、私はいつものように通り過ぎて森を抜けた。


 家につき私は部屋に入る。


 「今日も何もなかった・・・」


 ベッドに寝転がり、ボーッと天井を見上げる。

 そういていつも眠りにつき朝になる。それが私の一日。


 「こんなつまらない人生、生きていて意味があるのかな」


 日に日にそう思う。生きていて楽しいことなんてあるのか。学生とはよく言ったもの学生らしい楽しみ方を何一つ私は知らなかった。

 誰かが教えてくれる・・・ことはない。


 だから私のせめてもの願いは──私を飽きさせないで楽しませてくれる素敵な人。

 そういう出会いを求めている。


 「でも、現実は非常よね」


 もちろんそんな出会いもあるはずがない。非現実な妄想は頭の中だけでしか展開できないのだ。


 「少し散歩でもしようかしら」


 ベッドから起き上がり、制服のまま私は外に出た。

 気分転換にと、少しとおくの隣町まで電車を使ってやってきた。


 周りに見知った生徒はいない。同年代をみても制服が違う。他校の生徒だ。


 私は特に目的もなく、街を歩く。気がついたら住宅地にやってきていた。

 辺りを見るとそれは家が沢山。近くには大きなショッピングモールがあるくらい。

 

 そこに行ってみようかなと思い再び足を運んだとき、私は一人の人とすれ違った。


 「・・・・っ」


 女性の方だった。他校の中学生であろう子はなんだか身体がフラフラしていて、今にも死にそうな顔をしていた。

 まるで「誰かにいじめられた」ような姿を現して・・・・。


 でもどうせ知らない人・・・・そう思って私は無視して歩き始めるのだった。




 

 ──特にこれといって収穫もなく、私は家に帰ってきていた。

 時間は夕方で、珍しくも私はこの時間に起きていた。

 でもどうせやることはない。だから私はベッドに再び横になるのだった。


 「すぅすぅ....」



 ふと疲れたのか私は眠ってしまった。







 

 「──!」


 目が覚めると空はすっかり暗くなっていた。


 「寝ていたのね・・・」


 寝ていたとしてもこの時間に起きるのはなんだか珍しかった。


 「珍しいついでに外に出てみようかしら・・・」


 夜の外はどうなっているのか、私は興味本位で外に出るのだった。


 夜の外は暗く冷える。

 春とは言え冬が終わったばかりでもあるからちょっぴり寒かった。

 でもいつもとは違うように見えるこの景色、その好奇心が私の寒さを消しとばし、足を動かさせるのだった。


 気がついたら森の近くまで来ていた。

 別に来るつもりはなかったのになぜかここに来なければいけない。そんな気がしたのだ。


 ザッザッザ──暗い森の中を歩く。いつもの通学路なのにこんなにも怖いとは思いもしなかった。

 カラスが鳴く声も、木々が風に当てられる音も全てが怖かった。


 でも目の先には光があった。その光は・・・


 いつも見る大きな家。そこから少しだけ光が漏れていた。


 そしてなにより目に入ったのは近くの木だった。


 「なにこれ・・・・」


 木は驚くことに大きな穴がぽっかりと空いていたのだ。

 機械でどうこうできる穴じゃない。

 

 よく地面をみると足跡があった。まだあるということは時間がそんなに立っていない証拠。

 

 とても危険な匂いがするというのに私はその足跡を辿るのだった・・・。



 辿ってついたのは近くの公園だ。


 公園に着くまでに木と同じでいくつか穴が空いているところが存在していた。

 電柱、地面・・・様々なところに穴があいていた。


 そして公園には人の影があった。


 「──あ・・・?」


 男・・・・だった。


 男は私の存在にスグに気がついたようだ。


 なんていうか、殺気・・・・そんな感じのが私の身体に伝わってくる。

 ──もしかして私殺される・・・?


 男は一歩ずつ私のもとに歩み寄ってくる。


 ダメ・・・来ないで・・・。


 逃げようと足を動かすのだが、恐怖のあまり足が動かなかった。


 殺される・・・・。


 男は私の前まで来て、


 「ここに来たってことは色々見てきたってことだな?」


 男は睨むように私を見る。


 「・・・・・」


 恐怖で声も出ない。


 「見られたからにはしょうがない・・・他のなら見られても良かったんだがな。こればかりはおおごとになりかねないからな」」


 男はそういい腕を大きく上げた。


 間違いない。私はここで殺される・・・。


 怖かった。でも覚悟はできている。どうせ私は生きていても楽しいことなんて何一つない。だからここで死ぬのは怖くなんかない!!


 「抵抗しないのか?」


 男は最後に聞いてくる。


 「──殺せば・・・私はどうせ生きていても楽しくなんかない!!なら貴方に殺されても私は恨みはしない!!」


 最後の力を振り絞って私は男に向かって叫んだ。


 いつぶりだろうか。こんなにも叫ぶのは。


 「・・・・」


 男は唖然として、腕を上げたまま止まっていた。


 そして、


 「クハハハハハ!!」


 腕を顔にあて、大きく笑い出した。


 「こりゃ、珍しい人間もいたもんだな。生きていても楽しくないと。──外に出て今の世界はどうなっているのかと思えば楽しくないと。変わってるなお前」


 何か凄く馬鹿にされた気分だった。


 「どうしたの殺してよ」


 「おいおい、変わった女だな。こりゃ少しは楽しめそうかもしれないな」


 男は何かを思いついたかのように見えた。


 「おいお前、中学校・・・どこい通っている?」


 「この森を抜けて10分くらい歩いたところの場所」


 「なるほど、確か今の時期は中学二年の終わりあたりか。・・・お前何年生だ」

 

 「二年。あと一ヶ月もすれば三年生よ」


 「これはこれは都合のいい。よし」


 男は何かを決心し、


 「──明日から俺もお前と同じ中学に通うわ」


 そう言った。


 「え・・・・えええええええええええ!?」


 あまりに唐突なことだったもので私は驚きを隠せなかった。


 「お前名前は?」


 「えっ・・ああ・・・えっと・・・(くすのき)・・・・楠楓」


 「そっか、俺の名前は御神槌(みかづち) (しのぶ)って言うんだ。明日からよろしくな楠」


 男はそう言って私を殺すことをせずに、どこかに行ってしまった。


 「・・・・なに・・・あいつ・・・」


 私は奇妙な男、御神槌忍に出会ってしまった。




 そして次の日の学校。


 「えー今日はこんな時期ですが転校生を紹介します」


 先生が教室に入ってくるなり、そう言った。


 「じゃあ君入りなさい」


 先生に言われて転校生は入ってきた。

 

 クラス一同がざわざわとし始める。


 「男・・・嘘結構イケメンじゃない!」

 

 「ちぇ、男かよ」


 意見は様々だが、私はと言うと、


 「・・・・・」


 驚きすぎて瞬きをパチパチさせながら、口を大きく開けていた。


 「えー転校生の御神槌忍くんです。御神槌はついこないだまで遠くにいたらしく、この街にきたばかりですが勉強は結構できるので皆さん、気を抜いていたらあっさりと抜かれてしまいますので気をつけてください」


 「御神槌忍です。よろしく」


 「それじゃ、御神槌くんの席は・・・」


 「先生、ひとつよろしいですか?」


 御神槌が先生の方を向く。


 「なんだね御神槌くん」


 「──座りたいところがあるんですが」


 御神槌はそう言うとコツコツと席の方に向かって歩き始める。


 私の席は窓側の一番後ろ。そして御神槌が選んだ場所は──



 ──私の隣、誰もいない席だった。


 「この席、誰もいないようですし、いいかな?」


 「えっ、ええ・・・いいですけどその席は・・・」


 先生も生徒たちも一斉に私の方をみる。


 やっぱりそうなるか。私の隣が空いている理由はただ一つ。私がクラスで孤立しているからだった。

 気をきかせているのか近寄りたくなにのか分からないけどいつも隣は空いている。


 御神槌はそんなことも知らない。昨日あったからといって私の隣にくる必要も全くない。


 「ま、まあ・・・楠さんもとくに何も言ってないですし・・・」


 「おっしゃ」


 御神槌はそう言って椅子を引き座った。


 「それじゃチャイムがなったら一時間目が始まります。皆さん準備していてくださいね」


 先生はそう言って教室から出た。


 それと同時に御神槌の周りにはクラスメイトたちで囲まれていた。


  

 「ねえねえ。御神槌くんってどこからきたの?」


 「御神槌くんーメアド交換しよう」


 「御神槌~今日暇か?暇なら遊ぼうぜ!」


 男女問わずあたりは人だらけ。


 

 「・・・・・」


 私はあまりその光景が良くなかった。今まで私の近くには人がいなかった。だから静かな環境というのが少し落ち着いていてホッとしていた。

 でも今は違う。御神槌の周りに人がたくさんいて静かではない。


 御神槌は質問に色々答えて、いきなり席をたった。


 そして私の前にたった。


 クラス一同がざわざわする。そりゃ私の前に来たんだしそうか。


 「それで?なんのよ・・・」


 私は御神槌に何用か聞こうと思ったとき、クイッと上げを指であげられた。


 「──ッ!!?!?!?」


 クラス一同はまた別の意味でざわざわした。


 「──楠、俺はこうしてやってきたぜ」


 「・・・・・」


 「お前は実に退屈そうだな。楽しさが欲しいのか?快楽を求めるか?んん?」


 「ッ!離して!」


 御神槌の指を強引にどける。


 「あなた・・・・なんのつもり」


 「おぉ、怖いねえ・・・なるほど孤立しているようだな」


 視線を周りにやるとクラスは何も言ってこない。御神槌はそれだけで私の状況下を判断したというの・・・。


 「だが、それも今日までだ」


 「・・・・?」


 「聞けばまもなく春休み、学生には遊びの時間だ」


 「勝手に遊んでればいいじゃない....」


 「──お前は死ぬことに対しなんの抵抗もしなかった。それは人として生きることを諦めているということだ」


 「だったらなに?」


 御神槌は目を真剣にさせ、


 「生きることを諦めるんじゃねえ!!!」


 叫んだ。


 「確かに俺はお前を殺そうと思った。だが、それとは別にお前を殺すのは惜しいと感じた」


 「・・・・」


 「殺すよりも俺はお前に楽しいことを知ってもらいたい」


 そういい御神槌は膝を地面につかせ、


 「お前には友達がいないといったな」


 ──何をいって・・・?



 「だったら、俺がなってやる」


 ──嘘でしょ・・・・


 私のせめてもの願いは──私を飽きさせないで楽しませてくれる素敵な人。

 そういう出会いを求めていた。


 それは非現実的なことで絶対に叶わない私の妄想・・・。


 でも、それは違った。


 「俺がお前を楽しませてやる。この世界で生きるということを楽しいって思わせてやる」


 そんな素敵な人は存在してしまった。出会ってしまった。


 「お前には俺が傍にいてやる!!」


 御神槌はそう言って私に抱きついてきた。


 「ッ・・・・」


 今私はどんな顔をしているのかわからない。でもいきなり抱きつかれたものだから顔が真っ赤なのは確かだ。


 

 「おいおい御神槌のやつなにいってんだ」


 「楠さんに告白!?」


 「うっわ、大胆なやつなんだな。一目惚れってやつかよ」


 「キャーなんてすごい光景」


 周りの反応もすごかった。


 

 私は恥ずかしくなり、御神槌の手をどけて教室から飛び出した。



 

 ──飛び出して逃げてきた先は屋上。


 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 御神槌に抱きつかれた。それは予想もしていなかったことで、驚きを隠せずに飛び出してきてしまった。

 手を胸にあてる。心臓はバクバクと凄まじい勢いだ。



 「──走るの早いんだな」


 「ッ!?」


 振り返るとそこには御神槌がいた。



 「どうして!?」


 「ん?ああ・・・これでも足には自身があってね」


 「そ、そんなことはどうでもいいわ。さっきのこと──本当?」


 「ああ、俺がお前の生きる人生を面白いともわさせてやるぜ」


 「──じゃなくて・・・傍にいるってこと・・・・」


 私は顔を赤くしながら、御神槌に聞いた。


 「ん・・・あ、・・・いや・・・・それは・・・」


 「貴方は言った。私の傍にいるって」


 「いや、それは勢いというか・・・その・・・ちが・・!」


 御神槌は抵抗しようとしていたが、


 「ダメよ・・・一度行ったことは取り消せない。御神槌、貴方は今日から私の傍にずっと・・・──ずっといなさい。じゃないと自殺するわ」


 「なんてこった!それはまずい・・・。自殺されては俺がお前を楽しませることはできなく・・・こいつ・・・」


 御神槌は少し考えていたが、諦めたかのように


 「ったよ。傍にいてやる。何があっても俺はお前の傍にいてやる。だから俺を裏切るなよ楠ッ」


 「もちろん。私は貴方にはついていくつもりよ。あなたと一緒にいることで私は楽しい人生をおくれるんだから」


 この時の私の気持ちはどうなっていたのかはわからない。でもこの出会いは私にとって大きな変化をもたらしたのは確かだ。


 御神槌忍、私が彼と出会ったのはこの日のこと。


 ──この男との出会いが私の全てを変えた。

 そして御神槌と一緒にこれから楽しいことをいっぱいやっていくんだ。


 「えへ♪」


 私は嬉しかったのか、御神槌と一緒に人生を歩むことを決め、これまでにないくらいの笑顔で笑ったのだった。

【キャラ説明】

(くすのき) (かえで)

性別:女

能力:──

説明:御神槌(みかづち)とよく共にしている女の子。感情を表に出すことが少ない。御神槌より立場が上?

容姿:青に近い黒髪/ロング

学校:恋桜学園 1年(転入)

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